行政手続系資格の受験順
海事代理士と行政書士はどちらを先に受けるか(業務の違い・試験範囲の重なり・試験時期・合格率)
海事代理士は船舶や船員に関する行政手続を、行政書士は官公署に提出する書類や権利義務・事実証明に関する書類の作成を、それぞれ業とする資格です。どちらも受験資格に制限はなく、試験の範囲には憲法・民法・商法が共通して入ります。条文と公式情報から、受験順と兼業の考え方を整理します(確認日:2026年10月9日)。
業務範囲の違い(法律の条文)
海事代理士(海事代理士法第1条)
他人の委託により、定められた行政機関に対し、船舶や船員に関する法令に基づく申請、届出、登記その他の手続をし、これらの手続に関する書類を作成することを業とします。海事代理士でない者がこれを業として行うことは、同法第17条で禁じられています。
行政書士(行政書士法第1条の3)
他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む)を作成することを業とします。ただし、他の法律でその業務が制限されているものは行えません(同条第2項)。
行政書士は幅広い書類作成を扱い、海事代理士は船舶・船員の分野に限って手続の代理まで扱います。船舶関係の手続を仕事の中心にするなら海事代理士、許認可や契約書など分野を広くとるなら行政書士、という整理になります。兼業する場合も、船舶関係の手続は海事代理士の登録がなければ業として行えません。
試験時期と受験資格の違い
海事代理士(令和8年度)
筆記試験は令和8年9月25日、口述試験は11月24日です。受験資格に学歴、年齢、性別等の制限はありません。筆記試験の合格者は、翌年の筆記試験の免除を申請して口述試験を受けられます。受験料は6,800円(収入印紙)で、出願期間は8月1日から8月31日まででした。
行政書士(令和8年度)
年1回、11月の第2日曜日(令和8年度は11月8日)の13時から16時まで。年齢、学歴、国籍等に関係なく誰でも受験でき、受験手数料は10,400円です。
海事代理士の筆記は9月、行政書士は11月で、海事代理士の筆記のほうが約6週間早く終わります。令和8年度は、どちらも受験申込が終了しています。
試験範囲の重なり
海事代理士
筆記は、一般法律常識として憲法、民法、商法(第3編「海商」のみ)、海事法令として国土交通省設置法、船舶法、船舶安全法、船員法、海上運送法、港則法などが出題されます。口述は、船舶法、船舶安全法、船員法、船舶職員及び小型船舶操縦者法です。
行政書士
法令等科目として、憲法、行政法、民法、商法、基礎法学などが出題されます(行政書士試験研究センターの試験概要)。
重なるのは憲法と民法です。商法は、海事代理士では海商だけが対象で、行政書士の商法とは範囲が異なります。海事代理士の海事法令は行政書士の試験科目にありません。
合格率の違い
海事代理士(令和7年)
筆記は受験者435人に対し合格者230人で、合格率52.9%。口述は受験者233人に対し合格者219人で、合格率94.0%でした。
行政書士(令和7年度)
受験者50,163人で、合格率14.54%でした。
合格率は年度によって変わります。海事代理士は受験者が数百人規模の小さな試験で、行政書士の受験者数はその100倍を超えます。
どちらを先に受けるかの目安
海事代理士を先に受ける人
船舶の登録や船員に関する手続を仕事にしたい人。筆記が9月、口述が11月で、行政書士の準備を始める前に憲法と民法を一度学べます。合格率は令和7年の実績で行政書士より高めです。
行政書士を先に受ける人
許認可や契約書など、幅広い書類作成を仕事にしたい人。範囲が広く行政法が中心になるため、憲法と民法はその過程で身につけ、そのあとに船舶関係の手続を加えたいときに海事代理士へ進む順番です。
通関士との比較は通関士と海事代理士はどちらを先に受けるか、行政書士と司法書士の比較は行政書士と司法書士はどちらを先に受けるかにまとめています。
よくある質問
- 行政書士の資格があれば、海事代理士の仕事もできますか?
できません。海事代理士法第17条は、海事代理士でない者が他人の委託により業として同法第1条の手続をすることを禁じています。行政書士法第1条の3第2項も、他の法律で業務が制限されているものは行政書士が行えないと定めています。船舶や船員に関する手続を業とするには、海事代理士試験に合格して登録する必要があります。 - 海事代理士試験に受験資格はありますか?
国土交通省の実施要領によると、学歴、年齢、性別等による制限はありません。ただし、試験に合格しても海事代理士法第3条の欠格事由に当たる人は登録できません。行政書士試験にも、年齢、学歴、国籍等の制限はありません。 - 海事代理士と行政書士は、同じ年に両方受けられますか?
令和8年度の日程だけを見れば受けられます。海事代理士の筆記は9月25日、口述は11月24日、行政書士は11月8日で、行政書士の試験日が口述試験の約2週間前に入ります。ただし、どちらも令和8年度の受験申込はすでに終了しています。
出典
- e-Gov法令検索「海事代理士法」第1条・第17条・「行政書士法」第1条の3(確認日:2026年10月9日)
- 国土交通省「海事代理士になるには」(令和8年海事代理士試験実施要領)(確認日:2026年10月9日)
- 国土交通省「令和7年海事代理士試験合格者及び実施状況」(確認日:2026年10月9日)
- 行政書士試験研究センター「試験概要・受験案内」・「試験結果の推移」(確認日:2026年10月9日)