問1知財2級 特許法③ 出願公開
特許出願の出願公開に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.特許庁長官は、特許出願の日から1年6月を経過したときは、原則としてその特許出願について出願公開をしなければならない。
- イ.出願公開は、出願人の氏名や明細書・特許請求の範囲に記載した事項等を特許公報に掲載することにより行う。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 出願公開
特許法第64条第1項「特許庁長官は、特許出願の日から一年六月を経過したときは、特許掲載公報の発行をしたものを除き、その特許出願について出願公開をしなければならない」e-Gov原文
- イ.正しい
- 公開の方法
特許法第64条第2項「出願公開は、次に掲げる事項を特許公報に掲載することにより行う」e-Gov原文
ひっかけ出願から1年6月で、中身は特許公報に載って公衆の目に触れる。
解説特許庁長官は、特許出願の日から1年6月を経過したときは、特許掲載公報の発行をしたものを除き、その特許出願について出願公開をしなければならない(特許法64条1項)。出願人の請求による早期公開も認められる。アはこの時期の原則どおりで正しい。出願公開は、出願人の氏名・出願番号・発明者・明細書・特許請求の範囲・図面の内容等を特許公報に掲載して行うため(同条2項)、イも正しい。出願公開後の業としての実施に対しては補償金請求権が生じうる(65条)。
補足補償金請求権は、出願公開後に警告(又は悪意)があった実施が対象で、行使できるのは特許権の設定登録後に限られる(65条)。
問2知財2級 特許法③ 他人の特許発明等との関係(利用・抵触)
特許発明の実施と他人の権利との関係に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.特許権者であっても、その特許発明が特許出願の日前の出願に係る他人の特許発明・登録意匠等を利用するものであるとき等は、業としてその特許発明の実施をすることができない。
- イ.特許権を取得しても、その発明を自由に実施できるとは限らず、利用・抵触関係があれば実施が制限される。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 利用・抵触
特許法第72条「業としてその特許発明の実施をすることができない」e-Gov原文
- イ.正しい
- 権利取得≠自由実施
特許法第72条「業としてその特許発明の実施をすることができない」e-Gov原文
ひっかけ特許を取っても、出願前の他人の特許発明を利用するなら実施できません。
解説特許権者・専用実施権者・通常実施権者は、その特許発明が出願日前の出願に係る他人の特許発明・登録実用新案・登録意匠(類似意匠を含む)を利用するものであるとき、又はその特許権が出願日前の出願に係る他人の意匠権・商標権と抵触するときは、業としてその特許発明の実施をすることができない(特許法72条)。アはこの規定そのもの、イはその趣旨(特許権は排他権であって自由実施の保証ではない)であり、ともに正。改良発明が元発明の技術的範囲に丸ごと含まれるような利用関係では、特許を得てもなお元発明の特許権者の許諾がなければ実施できない。
補足利用関係なら、後願者は元発明の特許権者と協議し、不成立のとき特許庁長官の裁定で通常実施権を受けられる(特許法92条)。意匠法33条の裁定と対をなす。
問3知財2級 特許法③ 再審回復特許権の効力制限
再審により回復した特許権の効力の制限に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.再審により特許権が回復した場合で物の発明についてされているとき、特許権の効力は、審決確定後再審請求登録前に善意に日本国内で生産した当該物には及ばない。
- イ.この効力制限は、その特許が物の発明についてされているときに適用される。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 条文が善意の生産物を効力外とする
特許法第175条「日本国内において生産し、若しくは取得した当該物には、及ばない」e-Gov原文
- イ.正しい
- 条文が物の発明を要件とする
特許法第175条「その特許が物の発明についてされているとき」e-Gov原文
ひっかけ物の発明で、善意に作られた現物。ここに回復後の効力は届かない。
解説いったん取り消され、または無効とされた特許が再審で生き返ったとき、もし物の発明についての特許なら、取消決定・審決の確定後で再審請求の登録より前に、善意に日本国内で生産・取得された当該物には、回復した特許権の効力が及ばない(175条)。アはこの及ばない結論どおりで正しい。イも、この効力制限が物の発明についてされているときに働くという適用要件を正しく述べており正しい。特許がないと信じて動いた者の手元の物を、後の復活で打ち切らないための制限である。
補足及ばない行為には生産・取得のほか善意の輸入も含まれる(175条)。
問4知財2級 特許法③ 特許要件(産業上利用可能性・進歩性)
特許を受けるための要件に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.産業上利用することができる発明をした者は、一定の発明を除き、原則としてその発明について特許を受けることができる。すなわち、産業上利用することができることは、特許を受けるための要件の一つである。
- イ.特許出願前に、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が、公然知られた発明等の第1項各号に掲げる発明に基いて容易にその発明をすることができたときは、その発明については特許を受けることができない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 第29条第1項柱書のとおりで正しい。
特許法第29条第1項「産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる」e-Gov原文
- イ.正しい
- 第29条第2項のとおりで正しい。
特許法第29条第2項「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたとき」e-Gov原文
ひっかけアもイも第29条の条文どおりで、いずれも正しい記述です。
解説発明が特許を受けるには、大きく産業上利用可能性・新規性・進歩性という3つの要件を満たす必要がある。第29条第1項柱書は、産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き特許を受けることができると定め、まず産業上利用可能性を要件とする(アはこの柱書のとおりで正しい)。次に、同項各号(第1号=公然知られた発明、第2号=公然実施をされた発明、第3号=頒布された刊行物に記載された発明等)に該当する発明は、既に世に知られているため新規性を欠き、特許を受けられない。さらに第29条第2項は、たとえ各号に該当せず新規性があっても、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が、前項各号に掲げる発明に基いて容易にその発明をすることができたときは、進歩性を欠くとして特許を受けることができないと定める(イはこの第2項のとおりで正しい)。つまり産業上利用可能性・新規性で入口を絞り、進歩性でさらに「公知の発明から容易に到達できるもの」を排除する構造になっている。産業上利用可能性は「特許を受けられる」方向、進歩性は「容易に発明できたなら受けられない」方向で、記述の向きは逆になるが、いずれも第29条が定める正しい特許要件であるから、本問はアもイも正しく、正解は『アー正、イー正』となる。
補足進歩性の判断の基礎となる「前項各号に掲げる発明」とは、公然知られた発明・公然実施をされた発明・頒布された刊行物に記載された発明等(=新規性を否定する公知の発明)を指す。
問5知財2級 特許法③ 特許権の存続期間
特許権の存続期間に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.特許権の存続期間は、特許出願の日から20年をもって終了する。
- イ.特許権の存続期間は、特許権の設定の登録の日から20年をもって終了する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 20年(出願日起算)
特許法第67条第1項「特許権の存続期間は、特許出願の日から二十年をもつて終了する」e-Gov原文
- イ.誤り
- 起算点
特許法第67条第1項「特許権の存続期間は、特許出願の日から二十年をもつて終了する」e-Gov原文
ひっかけ数え始めは『出願の日』。設定登録の日ではない。審査にかかった期間も20年に食い込む。
解説特許権の存続期間は、特許出願の日から20年をもって終了する(特許法67条1項)。権利そのものは設定登録で発生するが、期間は出願日から数えるので、審査に費やした期間も20年の中に含まれる。アは1項どおりで正、イは起算点を設定登録の日としている点で誤り。なお、医薬品の承認待ち等で実施できなかった期間については、5年を限度に延長登録の出願で期間を延長できる(同条4項)。意匠権が出願日から25年、商標権が設定登録から10年(更新あり)と起算点も年数も違うので、ここは20年・出願日と覚える対象になる。
補足延長は無制限ではなく、医薬品・農薬の承認待ち等による延長は5年が上限である(特許法67条4項)。
問6知財2級 特許法③ 生産方法の推定
物を生産する方法の発明の特許に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.物を生産する方法の発明について特許がされている場合、その物が特許出願前に日本国内で公然知られた物でないときは、その物と同一の物は、その方法により生産したものと推定される。
- イ.物を生産する方法の特許について、被疑侵害者が製造した物が同一であっても、その物の製造方法は常に特許権者が立証しなければならない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 生産方法の推定
特許法第104条「その物と同一の物は、その方法により生産したものと推定する」e-Gov原文
- イ.誤り
- 立証責任の転換
特許法第104条「物を生産する方法の発明について特許がされている場合において、その物が特許出願前に日本国内において公然知られた物でないときは、その物と同一の物は、その方法により生産したものと推定する」e-Gov原文
ひっかけ推定が使えるのは、その物が出願前に公知でなかったときだけ。
解説製造方法は外から観察できないので、侵害者がどの方法で作ったかを特許権者が立証するのは難しい。そこで特許法104条は、物を生産する方法の発明について特許がされている場合に、その物が特許出願前に日本国内で公然知られた物でないときは、その物と同一の物はその方法により生産したものと推定する、と定めた。アはこの条文どおりで正しい。イは『製造方法は常に特許権者が立証しなければならない』とするが、104条の推定が働く結果、別の方法で作ったことを被疑侵害者の側が反証しなければならず、立証責任が事実上転換される。だからイは誤り。推定が外れるのは、対象の物が出願前に公知だった場合である。
補足推定が及ぶのは『物を生産する方法』の発明に限られ、単純方法の発明には104条の適用はない。
問7知財2級 特許法③ 発明の新規性喪失の例外
発明の新規性喪失の例外に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.特許を受ける権利を有する者の行為に起因して新規性を喪失するに至った発明は、その日から1年以内にその者がした特許出願に係る発明については、新規性を喪失しなかったものとみなされる場合がある。
- イ.新規性喪失の例外の適用を受けるための期間は、新規性を喪失した日から6月以内である。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 新規性喪失の例外
特許法第30条第2項「その該当するに至つた日から一年以内にその者がした特許出願」e-Gov原文
- イ.誤り
- 1年の期間
特許法第30条第2項「その該当するに至つた日から一年以内にその者がした特許出願」e-Gov原文
ひっかけ発表してしまった発明でも、1年以内に出願すれば救える余地がある。
解説出願前に発明が公開されると新規性を失うが、特許を受ける権利を有する者の意に反して公知となった場合や、その者の行為に起因して公知となった場合(公報掲載によるものを除く)は、その該当するに至った日から1年以内にその者がした特許出願に係る発明について、新規性等を喪失しなかったものとみなされる(特許法30条1項・2項)。アはこの『1年以内』の枠内で救済されうると述べており正しい。イは期間を『6月以内』とするが、平成30年改正で6月から1年に延びているため誤り。なお行為に起因する場合の適用には、出願と同時の書面提出と、出願日から30日以内の証明書提出が必要となる(同条3項)。
補足意に反する公知(盗用・漏えい等)の場合は出願時の書面提出が不要で、行為に起因する公知の場合のみ出願と同時の書面+30日以内の証明書提出が要る(30条3項)。
問8知財2級 特許法③ 特許権の放棄
特許権の放棄に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.特許権者は、専用実施権者又は質権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その特許権を放棄することができる。
- イ.特許権者は、専用実施権者や質権者がいても、その承諾を得ることなく自由に特許権を放棄することができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
解答・解説を見る
正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 放棄の制限
特許法第97条第1項「特許権者は、専用実施権者又は質権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その特許権を放棄することができる」e-Gov原文
- イ.誤り
- 利害関係者の保護
特許法第97条第1項「特許権者は、専用実施権者又は質権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その特許権を放棄することができる」e-Gov原文
ひっかけ自分の特許権でも、専用実施権者・質権者がいれば承諾なしには放棄できない。
解説特許権者は、専用実施権者又は質権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その特許権を放棄することができる(特許法97条1項)。だからアは正しく、承諾不要とするイは誤り。同条は段階的に並ぶ。専用実施権者も、質権者・専用実施権についての通常実施権者があるときはその承諾を得た場合に限り専用実施権を放棄でき(2項)、通常実施権者も、質権者があるときはその承諾を得た場合に限り通常実施権を放棄できる(3項)。放棄で消える権利の上に他者の権利が乗っていれば、その者の承諾がいる。
補足承諾が要るのは専用実施権者と質権者で、通常実施権者は対象に入らない(97条1項)。通常実施権は放棄されても消滅対抗力を持たず存続しうるため、特許権の放棄に通常実施権者の承諾までは求めない。
問9知財2級 特許法③ 特許を受ける権利の共有
特許を受ける権利が共有に係る場合に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.特許を受ける権利が共有に係るとき、各共有者は、他の共有者の同意を得ることなく、その持分を譲渡することができる。
- イ.特許を受ける権利が共有に係るとき、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡することができない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
解答・解説を見る
正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 持分の処分制限
特許法第33条第3項「特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡することができない」e-Gov原文
- イ.正しい
- 共有者の保護
特許法第33条第3項「特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡することができない」e-Gov原文
ひっかけ共有の『特許を受ける権利』も、持分の譲渡には他の共有者の同意が要ります。
解説特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡することができない(特許法33条3項)。持分の譲渡が誰を共同出願人とするかに直結し、他の共有者の利害を左右するためである。同意不要とするアは3項に反して誤り、同意が必要とするイは正。さらに各共有者は他の共有者の同意なく仮専用実施権の設定・仮通常実施権の許諾もできない(同条4項)。
補足共有なら出願も共有者全員でしなければならず(特許法38条)、一人でも欠ければ拒絶理由(49条2号)になる。持分譲渡の同意(33条3項)と共同出願の縛りは表裏の関係。
問10知財2級 特許法③ 再審回復特許権と善意の時期
再審により回復した特許権の効力の制限に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.善意による行為であれば、再審の請求の登録後に日本国内で生産した物にも特許権の効力は及ばない。
- イ.効力制限は、当該取消決定又は審決が確定した後の行為について問題となる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
解答・解説を見る
正解:3(アー誤、イー正)
- イ.正しい
- 条文が審決確定後を時的基準とする
特許法第175条「当該取消決定又は審決が確定した後再審の請求の登録前に善意に輸入し」e-Gov原文
ひっかけ守られるのは再審請求の登録より前の善意。登録後はもう保護されない。
解説保護されるのは、いつの善意かで決まる。アは再審請求の登録後に国内で生産した物まで善意なら効力が及ばないとするが、175条が守るのは登録より前の善意行為であって、登録後の行為は守られないから誤り。イは効力制限が取消決定または審決の確定後の行為について問題になるとしており、条文がこの確定後を時的な起点とするとおりで正しい。確定後に始まり、再審請求の登録で切れる、その間の善意だけが保護される。
補足登録後に実施を続けたい場合は、別途176条の法定通常実施権(後用権)の枠組みが受け皿になる。
問11知財2級 特許法③ 特許権の効力が及ばない範囲(試験・研究)
特許権の効力が及ばない範囲に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.特許権の効力は、試験又は研究のためにする特許発明の実施にも及ぶ。したがって、他人の特許発明を試験又は研究の目的で実施する行為であっても、当然に特許権の侵害となる。
- イ.特許権の効力は、単に日本国内を通過するに過ぎない船舶若しくは航空機又はこれらに使用する機械、器具、装置その他の物には及ばない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
解答・解説を見る
正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 第69条第1項に反し誤り。試験・研究のための実施には効力が及ばない。
特許法第69条「試験又は研究のためにする特許発明の実施には、及ばない」e-Gov原文
- イ.正しい
- 第69条第2項第1号のとおりで正しい。
特許法第69条「単に日本国内を通過するに過ぎない船舶若しくは航空機」e-Gov原文
ひっかけ「試験・研究のための実施には効力が及ばない」を「及ぶ」と逆にする引っかけ。目的が営利か否かで結論は変わらない。
解説特許権の効力は原則として業としての特許発明の実施全般に及ぶが、第69条は政策的にその効力が及ばない範囲を定める。第1項は、試験又は研究のためにする特許発明の実施には効力が及ばないとする。技術の進歩を目的とする試験・研究(特許性の調査、機能・効果の確認、改良発明のための実験等)まで特許権で禁止すると、かえって産業の発達という特許法の目的に反するためである。よって、他人の特許発明を試験・研究の目的で実施しても侵害とならず、アは条文に反し誤り。第2項は物についての例外を列挙し、第1号は単に日本国内を通過するに過ぎない船舶若しくは航空機又はこれらに使用する機械・器具・装置その他の物、第2号は特許出願の時から日本国内にある物には効力が及ばないとする。国際交通の便宜や、出願前から国内に存在した物の利用を保護する趣旨である。イはこの第2項第1号のとおりで正しい。したがって『アー誤、イー正』(選択肢3)が正解となる。
補足69条2項の例外は、単に日本国内を通過するに過ぎない船舶・航空機やこれらに使用する物(1号)、特許出願の時から日本国内にある物(2号)に及ぶ。
問12知財2級 特許法③ 特許無効審判
特許無効審判に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.特許無効審判は、二以上の請求項に係る特許については、特許全体を一体としてのみ請求でき、請求項ごとに請求することはできない。
- イ.特許が新規性・進歩性等の規定に違反してされたとき等は、特許無効審判を請求して、その特許を無効にすることができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
解答・解説を見る
正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 請求項ごと
特許法第123条第1項「二以上の請求項に係るものについては、請求項ごとに請求することができる」e-Gov原文
- イ.正しい
- 無効理由
特許法第123条第1項「その特許を無効にすることについて特許無効審判を請求することができる」e-Gov原文
ひっかけ複数請求項の特許は請求項ごとに無効審判を争える。全体一括でしか請求できないとするアが誤り。
解説特許が、新規性・進歩性・拡大先願・先願等の規定違反、補正要件違反、記載要件違反、冒認出願などの無効理由(特許法123条1項各号)に該当するときは、特許無効審判によりその特許を無効にできる。これを述べるイは正しい。アは『特許全体を一体としてのみ請求でき請求項ごとには請求できない』とするが、二以上の請求項に係る特許は請求項ごとに請求できる(同項後段)ので誤り。無効審判を請求できるのは原則として利害関係人で、冒認・共同出願違反を理由とするときは特許を受ける権利を有する者に限られる。
補足無効審判の請求人は原則として利害関係人に限られる。これに対し、付与後6月以内の特許異議申立ては『何人も』できる点で請求人適格が異なる。
問13知財2級 特許法③ 専用実施権・通常実施権の放棄
実施権の放棄に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.専用実施権者は、質権者や一定の通常実施権者があるときであっても、その承諾を得ることなく専用実施権を放棄することができる。
- イ.通常実施権者は、質権者があるときであっても、その承諾を得ることなく通常実施権を放棄することができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
解答・解説を見る
正解:4(アー誤、イー誤)
- ア.誤り
- 専用実施権の放棄
特許法第97条第2項「専用実施権者は、質権者又は第七十七条第四項の規定による通常実施権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その専用実施権を放棄することができる」e-Gov原文
- イ.誤り
- 通常実施権の放棄
特許法第97条第3項「通常実施権者は、質権者があるときは、その承諾を得た場合に限り、その通常実施権を放棄することができる」e-Gov原文
ひっかけ放棄の承諾が要るのは特許権だけだ、と思うと両肢とも落とす。実施権の放棄も同じ97条で縛られる。
解説専用実施権の放棄には、質権者又は専用実施権についての通常実施権者があるとき、その承諾を要する(特許法97条2項)。承諾不要とするアは誤り。通常実施権の放棄も、質権者があるときはその承諾を要する(同条3項)。こちらも承諾不要とするイは誤り。よって両方とも誤り。放棄の制限は特許権だけの話ではなく、実施権そのものにも質権など他者の権利が成立しうるため、同じ97条が実施権の放棄まで縛る。
補足専用実施権の放棄で承諾を要する通常実施権者は、77条4項の通常実施権者、つまり専用実施権者が許諾した通常実施権者を指す(97条2項)。特許権者が直接設定した通常実施権者ではない。
問14知財2級 特許法③ 登録の効果(総合)
特許に関する登録の効果に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.特許権の移転は、相続による場合を含め、すべて登録しなければその効力を生じない。
- イ.特許権を目的とする質権の設定は、登録の有無にかかわらず効力を生じる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
解答・解説を見る
正解:4(アー誤、イー誤)
- ア.誤り
- 一般承継の例外
特許法第98条第1項「次に掲げる事項は、登録しなければ、その効力を生じない」e-Gov原文
- イ.誤り
- 質権の設定
特許法第98条第1項「次に掲げる事項は、登録しなければ、その効力を生じない」e-Gov原文
ひっかけ相続による移転だけが登録不要。質権の設定はあくまで登録して初めて効く。
解説特許権の移転・専用実施権の設定・質権の設定等は登録が効力発生要件だが(特許法98条1項)、相続その他の一般承継による移転・消滅だけは例外で、登録を要しない(遅滞なく届け出る。同条2項)。アは特許権の移転を「相続による場合を含めすべて登録が必要」とするが、相続は一般承継の典型で登録不要のため誤り。イは質権の設定を「登録の有無にかかわらず効力を生じる」とするが、質権の設定は一般承継以外の処分であり、98条1項3号により登録しなければ効力を生じないため誤り。よって両方とも誤りで、組み合わせは『アー誤、イー誤』。一般承継は登録不要、特定承継・各種設定は登録必要という線引きで両肢が処理できる。
補足98条2項の届出は権利発生のためではなく、すでに発生した一般承継の事実を特許庁に知らせる手続。
問15知財2級 特許法③ 不特許事由(総合)
特許を受けることができない発明に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.公衆の衛生を害するおそれがある発明であっても、産業上利用することができるものであれば特許を受けることができる。
- イ.発明が公序良俗を害するおそれがあるか否かは、特許を受けることができるかどうかの判断とは無関係である。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
解答・解説を見る
正解:4(アー誤、イー誤)
- ア.誤り
- 不特許事由
特許法第32条「公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある発明については、第二十九条の規定にかかわらず、特許を受けることができない」e-Gov原文
- イ.誤り
- 判断要素
特許法第32条「公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある発明については、第二十九条の規定にかかわらず、特許を受けることができない」e-Gov原文
ひっかけ「産業上利用できる」「公序良俗は別問題」という逃げ道は、32条の前では通らない。
解説産業上の利用可能性・新規性・進歩性(特許法29条)をすべて満たす発明でも、公の秩序・善良の風俗・公衆の衛生を害するおそれがあれば特許を受けられない(同32条)。アは「公衆衛生を害するおそれがあっても産業上利用できれば特許可能」とするが、32条が「第29条の規定にかかわらず」拒絶する以上、産業上利用可能性で救われることはなく誤り。イは「公序良俗を害するおそれは特許可否と無関係」とするが、これはまさに32条の独立した不特許事由であり、判断に直結するため誤り。よって両方とも誤りで『アー誤、イー誤』。29条の各要件をクリアしていることと、32条をクリアしていることは別個に審査される。
補足29条の要件と32条の不特許事由は別の関門。29条を全部満たしても、32条に当たれば拒絶理由(49条)になる。