問1解雇権濫用法理
労働契約法に基づく解雇に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は、権利を濫用したものとして無効となる。
- イ.労働契約法上、解雇は使用者が自由に行うことができ、その効力が否定されることはない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 労契法16条どおり解雇権濫用は無効 → 正しい
労働契約法第16条「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」e-Gov原文
- イ.誤り
- 16条で濫用的解雇は無効 → 自由ではない
労働契約法第16条「その権利を濫用したものとして、無効とする。」e-Gov原文
ひっかけ雇った側がいつでも自由に切れる、というイが誤り。合理的理由と相当性を欠く解雇は権利濫用で無効になる。
解説使用者はいつでも自由に労働者を辞めさせられるわけではない。労働契約法16条は、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、権利を濫用したものとして無効とする(解雇権濫用法理)。判例法理を明文化したもので、(1)客観的に合理的な理由があり、(2)社会通念上相当と認められて初めて解雇は有効になる。この基準を述べるアは正しく、解雇は自由でその効力が否定されることはないとするイは16条に反し誤り。アが正、イが誤りだから『アー正、イー誤』。
補足解雇が有効かどうか(労契法16条)と、解雇するなら踏むべき手続(労基法20条の解雇予告)は別問題で、両方をクリアして初めて適法な解雇になる。
問2賃金支払の原則
賃金の支払に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
- イ.賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 24条1項の3原則どおり → 正しい
労働基準法第24条第1項「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」e-Gov原文
- イ.正しい
- 24条2項の毎月払・一定期日払どおり → 正しい
労働基準法第24条第2項「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。」e-Gov原文
ひっかけ賞与のまとめ払いや数か月分の後払いを当たり前と思うと足をすくわれる。原則は毎月1回以上・一定期日。アもイも条文どおり。
解説賃金を確実に労働者本人へ届けるため、労働基準法24条は支払方法を縛る。1項が通貨で(現物給与の禁止)、直接労働者に(本人以外への支払の禁止)、その全額を(一部控除の禁止)支払えと定め、アはこの3つどおりで正しい。さらに2項が、賃金は毎月1回以上、一定の期日を定めて支払えと定め、毎月払・一定期日払を述べるイも正しい。あわせて賃金支払の5原則と呼ばれる。両方正しく、答えは『アー正、イー正』。
補足口座振込のような通貨以外の支払や社会保険料の天引きのような一部控除は、法令や労使協定があれば認められ、賞与など臨時の賃金は毎月払・一定期日払の対象外になる。
問3法定労働時間
法定労働時間に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.使用者は、労働者に、休憩時間を除き、1日について10時間を超えて労働させてはならない。
- イ.使用者は、労働者に、休憩時間を除き、1週間について40時間を超えて労働させてはならない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 32条2項は1日8時間が上限 → 10時間は誤り
労働基準法第32条第2項「一日について八時間を超えて、労働させてはならない。」e-Gov原文
- イ.正しい
- 32条1項どおり週40時間が上限 → 正しい
労働基準法第32条第1項「一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。」e-Gov原文
ひっかけアで問われているのは1日の上限。8時間であって、10時間ではない。
解説労働基準法32条が定める法定労働時間は2つの数字で決まる。休憩時間を除き、1週間について40時間(1項)、1日について8時間(2項)が上限である。これを超えて働かせる時間外労働をさせるには、いわゆる三六(さぶろく)協定を労使で締結して労働基準監督署に届け出たうえ、割増賃金を支払う必要がある。アは1日の上限を『10時間まで』とするが、2項の上限は8時間なので誤り。イは『1週40時間』で1項のとおりだから正しい。本問は1日と1週で別々の数字を当てる形になっており、アで問われたのは1日の数字である。
補足1日8時間・1週40時間は別々の上限で、両方が同時にかかる。週40時間内でも1日8時間を超えれば時間外労働になる。
問4年次有給休暇
年次有給休暇に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.使用者は、雇入れの日から起算して3箇月間継続勤務した労働者に対して、10労働日の有給休暇を与えなければならない。
- イ.使用者は、労働者が請求する時季に有給休暇を与えなければならず、いかなる場合も他の時季に変更することはできない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
- ア.誤り
- 39条1項は6箇月継続勤務が要件 → 3箇月は誤り
労働基準法第39条第1項「その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して」e-Gov原文
- イ.誤り
- 39条5項で事業の正常運営を妨げる場合は時季変更できる
労働基準法第39条第5項「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」e-Gov原文
ひっかけアは『3箇月』、イは『いかなる場合も変更できない』。誤りはこの2語に集約される。
解説年次有給休暇は、雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し、かつ全労働日の8割以上出勤した労働者に、使用者が10労働日を与えなければならない(労働基準法39条1項)。アはこの起算要件を『3箇月』とするので誤り。付与の時季は労働者の請求した時季が原則だが、請求された時季に与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、使用者は他の時季に変更して与えることができる(同条5項ただし書の時季変更権)。イは『いかなる場合も変更できない』と言い切るが、この時季変更権があるため誤り。両方誤りで『アー誤、イー誤』となる。要件の『6箇月』と、変更を否定する『いかなる場合も』の2語が、それぞれの誤りの核である。
補足時季変更権は『他の時季に与える』権利で、有給そのものを拒める権利ではない。継続勤務年数が延びれば付与日数も増え、6年6箇月以上で年20日に達する。
問5就業規則の作成義務
就業規則に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。
- イ.就業規則の作成及び届出の義務は、常時5人以上の労働者を使用する使用者に課されている。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 89条どおり作成・届出義務 → 正しい
労働基準法第89条「常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。」e-Gov原文
- イ.誤り
- 89条は常時10人以上が基準 → 5人は誤り
労働基準法第89条「常時十人以上の労働者を使用する使用者は」e-Gov原文
ひっかけアとイは同じ義務を裏表で問う。違うのは人数だけで、正しいのは10人。
解説就業規則の作成・届出義務がかかる事業場の規模は、常時10人以上の労働者を使用する使用者である(労働基準法89条)。この使用者は就業規則を作成し、行政官庁(労働基準監督署)に届け出なければならない。記載事項には始業・終業の時刻や休憩・休日・休暇、賃金の決定や支払方法、退職(解雇の事由を含む)などがある。アは『常時10人以上』で89条のとおりだから正しい。イは同じ義務の基準を『5人以上』とするので誤り。アとイは数字だけが食い違っており、分かれ目は人数の『10人』か『5人』かにある。
補足10人未満の事業場には作成義務がなく、任意に作っても届出義務は生じない。この『常時10人』は事業場ごとに数える。
問6解雇の予告
解雇の予告に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.使用者は、労働者を解雇しようとする場合、予告も予告手当も要せず、いつでも即時に解雇することができる。
- イ.使用者が30日前に解雇の予告をしない場合は、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 20条1項で少なくとも30日前の予告が必要 → 即時解雇は不可
労働基準法第20条第1項「少くとも三十日前にその予告をしなければならない。」e-Gov原文
- イ.正しい
- 20条1項どおり解雇予告手当が必要 → 正しい
労働基準法第20条第1項「三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」e-Gov原文
ひっかけアは『予告も手当もいらない』と言い切る点で20条に正面から反する。
解説解雇の予告は労働基準法20条が手続を定める。使用者が労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前に予告をしなければならず、30日前に予告をしないときは、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならない(20条1項)。予告日数と手当日数は通算でき、たとえば10日前に予告すれば不足する20日分以上の平均賃金を支払えばよい。アは『予告も手当も要せず即時解雇できる』とするが、この手続を無視しているので誤り。イは予告をしない場合の手当額として20条1項のとおりだから正しい。なお20条は解雇の『手続』を定めるにとどまり、解雇それ自体が有効か(労働契約法16条の解雇権濫用の問題)は別の次元で判断される。
補足天災事変等で事業継続が不可能になった場合や、労働者の責に帰すべき事由による解雇では、労働基準監督署長の認定を受ければ予告も手当も不要になる。
問7男女同一賃金と労働条件の明示
労働条件に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。
- イ.使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 4条の男女同一賃金の原則どおり → 正しい
労働基準法第4条「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。」e-Gov原文
- イ.正しい
- 15条1項の明示義務どおり → 正しい
労働基準法第15条第1項「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」e-Gov原文
ひっかけ賃金の性差別は4条、契約時の労働条件明示は15条1項。後者は口頭・採用後でよいわけではない。
解説使用者は、労働者が女性であることを理由に、賃金について男性と差別的取扱いをしてはならない(労働基準法4条。男女同一賃金の原則)。賃金以外の場面での性差別は男女雇用機会均等法が受け持つ。あわせて、使用者は労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金・労働時間その他の労働条件を明示しなければならず(15条1項)、口頭で足りるわけでも採用後に決めればよいわけでもない。アは4条、イは15条1項のとおりで、どちらも正しい。なお15条で明示された労働条件が事実と相違していた場合、労働者は即時に労働契約を解除できる(同条2項)。
補足明示された労働条件が事実と違っていれば、労働者は即時に労働契約を解除できる(労働基準法15条2項)。
問8休憩
休憩時間に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.使用者は、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を与えなければならない。
- イ.休憩時間は、必ずしも労働時間の途中に与える必要はなく、勤務の終了後にまとめて与えてもよい。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 34条1項どおり → 正しい
労働基準法第34条第1項「労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。」e-Gov原文
- イ.誤り
- 34条1項で休憩は労働時間の途中に与える → 終了後は不可
労働基準法第34条第1項「休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。」e-Gov原文
ひっかけ休憩は『労働時間の途中』に与えるのが要件。終業時にまとめて付与しても要件を満たさない。
解説使用者は、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を、労働時間の途中に与えなければならない(労働基準法34条1項)。途中に置くことが求められるのは、休憩が労働による疲労を回復させるためのものだからで、勤務の終了後にまとめて与えても休憩を与えたことにはならない。アは休憩時間の長さで34条1項どおりに正しい。イは『終了後にまとめてよい』とするが、途中付与が要件なので誤り。なお休憩は原則として一斉に与え(同条2項。労使協定があれば例外)、自由に利用させなければならない(同条3項)という縛りもかかっている。
補足休憩は原則一斉付与(労使協定で例外を作れる)で、かつ自由に利用させる必要がある(34条2項・3項)。
問9休日
休日に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.使用者は、労働者に対して、毎月少なくとも1回の休日を与えなければならない。
- イ.4週間を通じて4日以上の休日を与える使用者については、毎週1回の休日を与える原則の規定は適用されない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 35条1項は毎週少なくとも1回 → 毎月1回は誤り
労働基準法第35条第1項「毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。」e-Gov原文
- イ.正しい
- 35条2項の変形休日制どおり → 正しい
労働基準法第35条第2項「四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。」e-Gov原文
ひっかけ休日の原則は毎週少なくとも1回。『毎月1回』に置き換えると35条1項に反する。
解説休日(法定休日)について、労働基準法35条1項は、使用者が労働者に毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないとする(毎週休日制)。ここは『毎週』であって『毎月』ではない。もっとも例外として、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者には、毎週1回の原則は適用されない(同条2項。変形休日制)。週ごとに休日が偏ってもよいが、4週間で4日以上は確保しなければならない。アは『毎月少なくとも1回』とするが正しくは毎週1回なので誤り、イは2項の変形休日制どおりで正しい。ちなみに国民の祝日に労働者を休ませることは、労働基準法上の義務ではない。
補足週1回(又は4週4日)が労基法上の法定休日で、ここに働かせると3割5分の休日割増がかかる。週休2日の2日目のように上回る休日は所定休日(法定外)で、割増は法定労働時間を超えた分の時間外2割5分の扱いになる。
問10割増賃金と減給の制裁
割増賃金及び減給の制裁に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.使用者が労働時間を延長して時間外労働をさせた場合でも、通常の賃金を支払えば足り、割増賃金を支払う必要はない。
- イ.就業規則で労働者に減給の制裁を定める場合でも、1回の減給額や総額について法律上の制限はない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
- ア.誤り
- 37条1項で割増賃金の支払が必要 → 記述は誤り
労働基準法第37条第1項「割増賃金を支払わなければならない。」e-Gov原文
- イ.誤り
- 91条で減給は1回半額・総額10分の1の制限あり → 記述は誤り
労働基準法第91条「一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」e-Gov原文
ひっかけ時間外労働には割増賃金が要り、減給の制裁にも91条の上限がある。どちらも会社の自由ではない。
解説使用者が時間外労働をさせ、又は休日に労働させた場合には、通常の賃金に2割5分以上5割以下の範囲で政令が定める率以上を上乗せした割増賃金を支払わなければならない(労働基準法37条1項)。通常の賃金だけで足りるわけではない。減給の制裁の側にも上限があり、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、かつ総額が一賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはならない(91条)。生活の原資である賃金を過度に奪わせないための枠である。アは『割増賃金は不要』とする点で37条に反し誤り、イは『減給に制限はない』とする点で91条に反し誤り。よって両方誤りで『アー誤、イー誤』。
補足深夜労働(午後10時から午前5時)についても、2割5分以上の割増賃金が必要になる(労働基準法37条4項)。
問11業務上災害による解雇制限
労働基準法上の解雇制限に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.使用者は、労働者が業務上負傷し療養のために休業する期間及びその後30日間は、原則として、その労働者を解雇することができない。
- イ.天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合であっても、使用者は、業務上の負傷で療養休業中の労働者を解雇することは一切できない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 労基法19条1項本文の解雇制限 → 原則解雇できない → 正しい
労働基準法第19条第1項「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間」e-Gov原文
- イ.誤り
- 19条1項ただし書で例外が認められる → 「一切できない」は誤り
労働基準法第19条第1項「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない」e-Gov原文
ひっかけ「業務上のケガなら絶対に解雇されない」と言い切るイが誤り。天災事変等で事業の継続が不可能になった場合という例外がある。
解説労働基準法19条1項は、労働者が業務上負傷し又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間(および産前産後の女性が65条により休業する期間とその後30日間)は、使用者は解雇してはならないと定める。ケガや病気で働けない時期に職を失わせない趣旨である。もっとも同項ただし書は、使用者が打切補償(81条)を支払う場合、又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合には解雇制限が及ばないとする(後者は行政官庁の認定が必要)。原則を述べるアは正しく、例外を無視して「一切解雇できない」とするイは誤り。よって『アー正、イー誤』。
補足業務上の負傷・疾病による療養休業中の解雇制限(労基法19条)と、解雇予告(労基法20条)は別の規律。解雇予告の例外(即時解雇できる場合)と、解雇制限の例外は混同しやすいので分けて整理する。
問12時間外・休日労働と三六協定
時間外労働及びいわゆる三六協定に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.使用者は、事業場の労働者の過半数を代表する者等との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合には、その協定で定めるところにより、法定労働時間を超えて労働させることができる。
- イ.三六協定によって時間外労働をさせる場合でも、時間外労働の限度時間は、原則として、1か月について45時間及び1年について360時間とされている。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 労基法36条1項の三六協定+届出 → 法定労働時間超えOK → 正しい
労働基準法第36条第1項「労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては」e-Gov原文
- イ.正しい
- 労基法36条4項の限度時間どおり → 正しい
労働基準法第36条第4項「前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間」e-Gov原文
ひっかけ三六協定を結べば無制限に残業させられるわけではない。限度時間(原則 月45時間・年360時間)という上限がある。
解説労働基準法は1日8時間・1週40時間の法定労働時間を定める(32条)が、36条1項により、使用者が事業場の過半数組合(ないときは過半数代表者)との書面による協定(三六協定)を締結し行政官庁に届け出れば、その協定の範囲で時間外労働・休日労働をさせることができる。ただし無制限ではなく、36条4項は時間外労働の限度時間を原則として1か月45時間・1年360時間と定める。三六協定の効果を述べるアも、限度時間を述べるイも条文どおりで正しい。よって『アー正、イー正』。
補足三六協定は時間外・休日労働を「させても罰せられない」ようにする免罰的効力を持つにとどまり、割増賃金の支払義務(労基法37条)は別に生じる。協定の締結と割増賃金は分けて理解する。
問13就業規則の作成手続
就業規則の作成手続に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.使用者は、就業規則を作成又は変更するにあたり、労働者の過半数を代表する者等の同意を得なければ、就業規則を作成することができない。
- イ.使用者は、就業規則を行政官庁に届け出るにあたり、労働者の過半数を代表する者等の意見を記した書面を添付しなければならない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 労基法90条1項は意見を聴けばよい → 同意は不要 → 誤り
労働基準法第90条第1項「労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない」e-Gov原文
- イ.正しい
- 労基法90条2項どおり → 意見書の添付が必要 → 正しい
労働基準法第90条第2項「前項の意見を記した書面を添付しなければならない」e-Gov原文
ひっかけ「労働者の同意がなければ就業規則を作れない」というアが誤り。法が求めるのは同意ではなく意見を聴くこと。
解説労働基準法90条1項は、使用者が就業規則を作成し又は変更する場合に、当該事業場の過半数組合(ないときは過半数代表者)の意見を聴かなければならないと定める。これは『意見聴取』であって同意や合意までは求められていないため、反対意見があっても所定の手続を踏めば就業規則は有効に作成・変更できる。同条2項は、行政官庁への届出に際して、その意見を記した書面を添付しなければならないとする。同意を要件とするアは誤りで、意見書の添付を要するとするイは正しい。よって『アー誤、イー正』。
補足就業規則の作成・届出義務そのもの(常時10人以上で必要・労基法89条)と、その作成手続(意見聴取・意見書添付・労基法90条)は別の規律。作成義務の有無と作成手続を分けて整理する。
問14労働契約の成立
労働契約の成立に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.労働契約は、使用者が一方的に労働条件を決定して労働者に通知することによって成立し、労働者の合意は成立の要件とされていない。
- イ.労働契約が成立するためには、契約書を作成して行政官庁に届け出ることが法律上の効力発生要件とされている。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
- ア.誤り
- 労働契約は、使用者が条件を一方的に決めて通知すれば成立するものではない。労働者が使用者に使用されて労働し、使用者が賃金を支払うことについて、労働者と使用者が合意することが成立要件になる。
労働契約法第6条「労働者及び使用者が合意することによって成立する」e-Gov原文
- イ.誤り
- 労働契約法6条は合意による成立を定めており、契約書作成や行政官庁への届出を効力発生要件にしていない。労働条件明示など別の規制と、契約の成立要件を混同しない。
労働契約法第6条「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し」e-Gov原文
ひっかけ「使用者が条件を通知すれば契約成立」「書面と届出が必要」はどちらも誤り。労働契約は労使の合意のみで成立する。
解説労働契約法6条は、労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立すると定める。すなわち労働契約は労使双方の合意のみで成立する諾成契約であり、契約書などの書面の作成・交付や行政官庁への届出は成立・効力の要件ではない。使用者の一方的通知で成立し労働者の合意が不要とするアは誤りであり、書面作成と届出を効力発生要件とするイも誤り。よって『アー誤、イー誤』。
補足労働契約は合意のみで成立するが(労契法6条)、使用者には別に労働条件の明示義務(労基法15条1項)がある。『成立要件』ではないが、明示しなければ使用者が義務違反となる点は区別する。
問15使用者の安全配慮義務
使用者の安全配慮義務に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとされている。
- イ.使用者が安全配慮義務を負うのは、労働契約に当該義務を定める特約がある場合に限られ、特約がなければこの義務は生じない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 労契法5条の安全配慮義務どおり → 正しい
労働契約法第5条「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」e-Gov原文
- イ.誤り
- 労契法5条で労働契約に伴い当然に負う → 特約限定は誤り
労働契約法第5条「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ」e-Gov原文
ひっかけ「特約がなければ安全配慮義務は生じない」というイが誤り。安全配慮義務は労働契約に伴い当然に発生する。
解説労働契約法5条は、使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとすると定める。これは判例で認められてきた安全配慮義務を明文化したもので、労働契約が成立すれば、個別の特約がなくても使用者は労働契約に伴い当然にこの義務を負う。義務の内容を述べるアは正しく、特約がある場合に限られるとするイは誤り。よって『アー正、イー誤』。
補足安全配慮義務(労契法5条)は私法上の義務で、違反すれば債務不履行責任が問題になる。これとは別に、危険防止のための具体的措置を公法上義務づける労働安全衛生法があり、両者は重なりつつ役割が異なる。
問16労働条件の明示
労働条件の明示に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して労働条件を明示しなければならない。
- イ.使用者は、労働契約締結時に労働条件を一切明示しなくてよい。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 条文どおり
労働基準法第15条第1項「労働条件を明示しなければならない」e-Gov原文
- イ.誤り
- 要件・効果のすり替え
労働基準法第15条第1項「労働条件を明示しなければならない」e-Gov原文
ひっかけ労働条件は口約束でよく明示しなくてよい、と考えるとイを正しいと誤る。使用者は契約締結時に労働条件を明示しなければならない。
解説使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない(労働基準法15条1項)。労働者が働き始める前に条件を分かった上で契約できるようにする趣旨で、特に重要な事項は書面の交付などによる明示が求められる。アはこのとおりで正しい。イは労働条件を一切明示しなくてよいとするが、15条1項に反し誤り。あとで『聞いていない』という争いを防ぐための基本的な義務である。
補足賃金・労働時間・就業場所・始業終業時刻・休日など重要な事項は、書面の交付(労働者が希望すれば電子メール等でも可)によって明示しなければならない。明示された条件が事実と異なる場合、労働者は労働契約を即時に解除できる(15条2項)。
問17賃金全額払の原則
賃金全額払の原則に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.賃金は、原則としてその全額を支払わなければならない。
- イ.使用者は、労働者の同意や法令根拠がなくても賃金を自由に一部控除できる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 条文どおり
労働基準法第24条第1項「その全額を支払わなければならない」e-Gov原文
- イ.誤り
- 要件・効果のすり替え
労働基準法第24条第1項「その全額を支払わなければならない」e-Gov原文
ひっかけ使用者は賃金を自由に天引きできる、と考えるとイを正しいと誤る。賃金は全額払が原則で、控除には根拠が要る。
解説賃金は、原則としてその全額を労働者に直接支払わなければならない(労働基準法24条1項)。これを賃金全額払の原則という。使用者が一方的に賃金から天引き(控除)することを制限し、労働者が働いた分を確実に受け取れるようにする趣旨である。アはこのとおりで正しい。イは労働者の同意や法令の根拠がなくても自由に一部控除できるとするが、全額払の原則に反し誤り。所得税の源泉徴収など法令に定めがある場合や、労使協定がある場合には例外的に控除が認められる。
補足賃金の支払には、全額払のほか、通貨で支払う(通貨払)、労働者に直接支払う(直接払)、毎月1回以上一定の期日に支払う(毎月1回以上・一定期日払)という原則があり、あわせて賃金支払の5原則と呼ばれる(24条)。
問18休憩時間
休憩時間に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.労働時間が6時間を超える場合、少なくとも45分の休憩時間を与えなければならない。
- イ.労働時間が6時間を超えても、休憩時間を与える必要は一切ない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 条文どおり
労働基準法第34条第1項「労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分」e-Gov原文
- イ.誤り
- 要件・効果のすり替え
労働基準法第34条第1項「労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分」e-Gov原文
ひっかけ休憩は与えなくてよい、と考えるとイを正しいと誤る。労働時間が6時間を超えれば休憩を与える義務がある。
解説使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を、労働時間の途中に与えなければならない(労働基準法34条1項)。アはこの6時間超で45分以上という基準を正しく述べており正しい。イは6時間を超えても休憩を与える必要は一切ないとするが、34条1項に反し誤り。労働時間の長さに応じて最低限の休憩を確保させる規定で、数字(6時間・45分/8時間・1時間)を正確に押さえることが重要である。
補足休憩時間は、原則として一斉に与え(一斉付与)、かつ労働者が自由に利用できるようにしなければならない(34条2項・3項)。なお、労働時間がちょうど6時間以内であれば、休憩を与えなくても違反にはならない。
問19労働契約の基本原則
労働契約の基本原則に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場での合意に基づいて締結・変更すべきものとされる。
- イ.労働契約は、使用者が一方的に自由な内容で成立・変更できるものとされる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 条文どおり
労働契約法第3条第1項「対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきもの」e-Gov原文
- イ.誤り
- 要件・効果のすり替え
労働契約法第3条第1項「対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきもの」e-Gov原文
ひっかけ労働契約は使用者が一方的に決められる、と考えるとイを正しいと誤る。締結・変更は対等な合意が原則。
解説労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとされる(労働契約法3条1項)。現実には交渉力に差があるからこそ、法律は『対等の立場での合意』を基本原則として掲げている。アはこのとおりで正しい。イは使用者が一方的に自由な内容で成立・変更できるとするが、3条1項に反し誤り。特に労働条件の不利益な変更を使用者が一方的に押し付けることは、この原則に照らして問題となる。
補足労働契約法3条は、このほか、就業の実態に応じた均衡の考慮、仕事と生活の調和への配慮、信義誠実の原則、権利濫用の禁止も、労働契約の基本原則として定めている。
問20懲戒権の濫用
懲戒権の濫用に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.懲戒が客観的合理性を欠き社会通念上相当でない場合、権利濫用として無効となる。
- イ.就業規則に懲戒事由があれば、どのような懲戒も常に有効となる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 条文どおり
労働契約法第15条「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」e-Gov原文
- イ.誤り
- 要件・効果のすり替え
労働契約法第15条「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」e-Gov原文
ひっかけ就業規則に懲戒事由があれば何でも懲戒できる、と考えるとイを正しいと誤る。客観的合理性と社会通念上の相当性がなければ権利濫用で無効。
解説使用者が労働者を懲戒する場合において、その懲戒が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、その懲戒は権利を濫用したものとして無効となる(労働契約法15条)。就業規則に懲戒の定めがあることは前提にすぎず、それだけで懲戒が有効になるわけではない。アはこのとおりで正しい。イは就業規則に懲戒事由があればどのような懲戒も常に有効とするが、15条に反し誤り。非行の程度と処分の重さが釣り合っているか(相当性)まで問われる点がポイントである。
補足懲戒が有効であるためには、あらかじめ就業規則などで懲戒の種類・事由が定められ、それが労働者に周知されていることも前提になる。また、同じ行為に重ねて懲戒しない(一事不再理)などの制約もある。
問21解雇の予告
労働基準法上の解雇の予告に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.使用者が労働者を解雇しようとする場合、理由を問わず必ず30日前に予告しなければならず、予告手当の支払による即時解雇は認められない。
- イ.使用者は、少なくとも30日前に解雇の予告をするか、又は30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 20条1項:予告と手当は選択的
労働基準法第20条第1項「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」e-Gov原文
- イ.正しい
- 20条1項:原則
労働基準法第20条第1項「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」e-Gov原文
ひっかけ『30日前予告』か『30日分の手当』か、どちらかでよい。
解説労働基準法20条1項は、解雇には少なくとも30日前の予告を求め、予告しない場合は30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の支払いを義務づける。両者は選択的で、手当を払えば即時解雇もできる。だから『手当による即時解雇は認められない』とするアは誤り。一方、『30日前予告か30日分以上の平均賃金の支払いが必要』とするイは原則どおりで正しい。結論はアー誤、イー正。
補足天災事変等でやむを得ず事業継続が不可能な場合や、労働者の責めに帰すべき事由による解雇は、予告も手当も不要(20条1項ただし書、要・行政官庁認定)。
問22解雇権濫用法理
解雇に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効となる。
- イ.解雇が有効と認められるには、客観的に合理的な理由と、社会通念上相当であることの双方が必要である。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 労契法16条:解雇権濫用法理
労働契約法第16条「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」e-Gov原文
- イ.正しい
- 16条:2要件
労働契約法第16条「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」e-Gov原文
ひっかけ解雇は『理由があるだけ』では足りない。相当性も要る。
解説労働契約法16条は、客観的に合理的な理由を欠くか、または社会通念上相当と認められない解雇を、権利の濫用として無効とする(解雇権濫用法理)。だからアは正しい。裏返せば、解雇が有効と認められるには、合理的な理由と社会通念上の相当性の双方を満たす必要がある。だからイも正しい。予告手続(労基法20条)を踏んでも、この正当性要件を満たさなければ解雇は無効になる。結論はアー正、イー正。
補足労基法20条の予告は『手続』、労契法16条は『解雇できるか(正当性)』の問題で、別々に問われる。
問23賃金支払の原則
労働基準法上の賃金の支払に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.賃金は、労働者本人の同意があれば、その配偶者など親族に支払うことができる。
- イ.賃金は、毎月でなくても、2か月に1回など一定の期日に支払えば足りる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
解答・解説を見る
正解:4(アー誤、イー誤)
- ア.誤り
- 24条1項:直接払の原則
労働基準法第24条第1項「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」e-Gov原文
- イ.誤り
- 24条2項:毎月払・一定期日払の原則
労働基準法第24条第2項「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。」e-Gov原文
ひっかけ賃金は『本人に・毎月』が原則。親族払いや隔月払いは不可。
解説労働基準法24条は賃金支払の5原則(通貨払・直接払・全額払・毎月1回以上払・一定期日払)を定める。賃金は労働者本人に直接支払うのが原則で、本人の同意があっても親族に支払うことはできない(直接払の原則)。だからアは誤り。また、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならず、2か月に1回では足りない(毎月払・一定期日払の原則)。だからイも誤り。結論はアー誤、イー誤。
補足賃金支払の5原則=通貨払・直接払・全額払・毎月1回以上払・一定期日払。法令・労使協定等による例外がある(控除・口座振込など)。