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労働契約法・第14

企業と従業員の関係の問題(10問)

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この章で扱う論点10論点

従業員との関係を深く問う労働法の章です。解雇権濫用法理と解雇予告、有期労働契約の無期転換ルール(通算5年)、就業規則による不利益変更、不当労働行為、労働協約の規範的効力、セクシュアルハラスメント防止措置、安全配慮義務、労働者派遣の申込みみなし、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止を収録しています。3級の労働法より一段踏み込んだ論点で、要件を条文で確認できます。

解雇の規律有期労働契約の無期転換ルール就業規則による労働条件の不利益変更就業規則の作成・届出義務不当労働行為労働協約の規範的効力職場におけるセクシュアルハラスメント防止措置使用者の安全配慮義務労働者派遣における労働契約申込みみなし妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止

問題と解説を読む10

e-Gov逐語照合済み2026年6月時点の法令に準拠
1解雇の規律(解雇権濫用法理と解雇予告)

解雇に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は、権利を濫用したものとして無効となる。
  • 使用者が労働者を解雇しようとする場合、原則として少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)

正しい
労契法16条の解雇権濫用法理

労働契約法第16条解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とするe-Gov原文

正しい
労基法20条の解雇予告

労働基準法第20条第1項少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならないe-Gov原文

ひっかけ予告手当を払えば理由なく解雇できる、と思うとアの実体規制を見落とす。手続を踏んでも理由が不合理なら無効。

解説解雇には二重の歯止めがある。実体面では、客観的合理性と社会的相当性を欠く解雇は権利濫用として無効(労働契約法16条)。手続面では、少なくとも30日前の予告か30日分以上の平均賃金が必要(労働基準法20条)。アは解雇権濫用法理、イは解雇予告で、ともに正しい。

補足経営上の理由による整理解雇では、判例上、人員削減の必要性・解雇回避努力・人選の合理性・手続の相当性という4つの要素で有効性が厳しく判断される。

2有期労働契約の無期転換ルール

有期労働契約の無期転換に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 同一の使用者との間の有期労働契約の通算期間が5年を超える労働者が無期労働契約の締結を申し込んだときは、使用者はその申込みを承諾したものとみなされる。
  • 無期転換の申込みができるようになるのは、有期労働契約の通算期間が3年を超えたときである。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)

正しい
労契法18条1項の無期転換

労働契約法第18条第1項使用者は当該申込みを承諾したものとみなすe-Gov原文

誤り
労契法18条1項は5年超が基準

労働契約法第18条第1項通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が五年を超える労働者e-Gov原文

ひっかけ数字を3年と覚えると、無期転換のイで取り違える。基準は通算5年超。

解説有期労働契約が同一使用者のもとで通算5年を超えた労働者は、無期労働契約への転換を申し込むことができ、使用者は承諾したものとみなされる(労働契約法18条1項)。基準は通算「5年超」で、転換後の労働条件は契約期間を除き原則として従前と同一になる。アは正しく、イは基準を3年とした点で誤り。

補足有期契約と次の有期契約の間に一定以上の空白期間(原則6か月)があると通算がリセットされる(18条2項のクーリング)。空白の作り方次第で通算年数が途切れる。

3就業規則による労働条件の不利益変更

就業規則の変更による労働条件の変更に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 就業規則の変更による労働条件の不利益変更は、労働者全員の個別の同意がない限り、一切認められない。
  • 変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ就業規則の変更が合理的なものであるときは、労働条件は変更後の就業規則によることになる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)

誤り
労契法10条は合理的変更を認める

労働契約法第10条労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとするe-Gov原文

正しい
労契法10条の合理的変更の要件

労働契約法第10条変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更がe-Gov原文

ひっかけ不利益変更は同意がなければ不可、と決めると合理性で変更できるイを見抜けない。

解説就業規則の変更による労働条件の不利益変更は、変更後の就業規則を周知させ、かつ変更が不利益の程度・必要性・内容の相当性・労働組合等との交渉状況に照らして合理的であれば認められる(労働契約法10条)。全員の個別同意までは要しない。アは同意必須とした点で誤り、イは要件どおりで正しい。

補足もっとも、賃金や退職金のように重要な労働条件を切り下げる変更には、判例上、高度の必要性に基づいた合理性が要求され、合理性のハードルが上がる。

4就業規則の作成・届出義務

就業規則に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 就業規則の作成義務は、常時5人以上の労働者を使用する使用者に生じる。
  • 就業規則は作成すれば足り、行政官庁への届出までは必要とされていない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)

誤り
労基法89条は10人以上が基準

労働基準法第89条常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成しe-Gov原文

誤り
労基法89条は作成+届出を義務とする

労働基準法第89条就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならないe-Gov原文

ひっかけ人数基準を5人と覚えたり、作れば届出は不要と考えると、両方とも外す。基準は10人、作成+届出が義務。

解説常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、行政官庁(労働基準監督署長)に届け出なければならない(労働基準法89条)。基準は10人以上で、作成だけでなく届出までが義務。アは5人以上とした点で誤り、イは届出不要とした点で誤り。

補足就業規則の作成・変更にあたっては、過半数労働組合(ないときは過半数代表者)の意見を聴かなければならない(90条1項)。同意までは不要だが、意見書の添付が届出の要件になる。

5不当労働行為

不当労働行為に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 労働者が労働組合の正当な行為をしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他不利益な取扱いをすることは、不当労働行為にあたる。
  • 使用者が、雇用する労働者の代表者との団体交渉を正当な理由なく拒むことは、不当労働行為にあたる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)

正しい
労組法7条1号の不利益取扱い

労働組合法第7条第1号労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすることe-Gov原文

正しい
労組法7条2号の団交拒否

労働組合法第7条第2号団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むことe-Gov原文

ひっかけ団交を断るだけなら自由、と考えるとイを誤りと取り違える。正当な理由のない団交拒否は不当労働行為。

解説労働組合法7条は不当労働行為を禁じる。組合活動を理由とする不利益取扱い(1号)、正当な理由のない団体交渉拒否(2号)、組合の運営への支配介入(3号)が典型。アは1号、イは2号にあたり、ともに正しい。

補足不当労働行為があったときは、労働者・労働組合は労働委員会に救済を申し立てることができ、労働委員会は原状回復を命じる救済命令を出す(27条以下)。裁判所とは別の救済ルートが用意されている。

6労働協約の規範的効力

労働協約に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は無効となり、その部分は基準の定めるところによる。
  • 労働協約に定める労働条件の基準は努力目標にすぎず、これに反する労働契約も有効である。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)

正しい
労組法16条の規範的効力

労働組合法第16条労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効とするe-Gov原文

誤り
労組法16条で基準違反部分は無効

労働組合法第16条基準に違反する労働契約の部分は、無効とするe-Gov原文

ひっかけ協約は労使の約束だから当事者間の努力目標、と考えるとイを正しいと誤る。基準には労働契約を直接縛る効力がある。

解説労働協約に定める労働条件等の基準に違反する労働契約の部分は無効となり、その部分は協約の基準による(労働組合法16条)。これを協約の規範的効力という。アは規範的効力をそのまま述べて正しく、イは努力目標にすぎないとした点で誤り。

補足一つの工場事業場で同種の労働者の4分の3以上が一つの労働協約の適用を受けるときは、残りの同種労働者にもその協約が拡張適用される(17条の一般的拘束力)。

7職場におけるセクシュアルハラスメント防止措置

職場におけるセクシュアルハラスメントに関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 事業主は、職場における性的な言動に関し、労働者からの相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
  • セクシュアルハラスメントの防止措置は事業主の努力義務にすぎず、措置を講じなくても法令上の問題は生じない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)

正しい
均等法11条1項の措置義務

男女雇用機会均等法第11条第1項労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならないe-Gov原文

誤り
均等法11条1項は措置義務を定める

男女雇用機会均等法第11条第1項必要な措置を講じなければならないe-Gov原文

ひっかけハラスメント対策は会社の自主努力、と考えるとイを正しいと取り違える。均等法は措置を義務づけている。

解説事業主は、職場のセクシュアルハラスメントについて、相談に応じる体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない(男女雇用機会均等法11条1項)。これは努力義務ではなく法的義務。アは措置義務どおりで正しく、イは努力義務にすぎないとした点で誤り。

補足措置義務はセクハラに限らず、妊娠・出産等に関するハラスメント(11条の3)や、労働施策総合推進法によるパワーハラスメントにも及び、相談窓口の設置などが共通して求められる。

8使用者の安全配慮義務

使用者の安全配慮義務に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 使用者の安全配慮義務は判例上認められるにとどまり、労働契約法には明文の規定が置かれていない。
  • 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとされている。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)

誤り
労契法5条が明文で定める

労働契約法第5条使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとするe-Gov原文

正しい
労契法5条の安全配慮義務

労働契約法第5条労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとするe-Gov原文

ひっかけ安全配慮義務は判例だけ、という古い理解だとアを正しいと誤る。労契法5条で明文化済み。

解説使用者は、労働契約に伴い、労働者が生命・身体等の安全を確保しつつ労働できるよう必要な配慮をする義務を負う(労働契約法5条)。かつては判例上の義務だったが、現在は明文化されている。アは明文がないとした点で誤り、イは条文どおりで正しい。

補足安全配慮義務に違反して労働者に損害が生じた場合、使用者は債務不履行(民法415条)に基づく損害賠償責任を負う。過労死・過労自殺の事案で問題になることが多い。

9労働者派遣における労働契約申込みみなし

労働者派遣に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 派遣先が違法派遣に該当することを知りながら派遣労働者を受け入れた場合には、その時点で、派遣先が派遣労働者に対し労働契約の申込みをしたものとみなされる。
  • 派遣先がその行為が違法派遣に該当することを知らず、知らなかったことに過失もなかった場合でも、労働契約の申込みみなしが適用される。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)

正しい
派遣法40条の6第1項の労働契約申込みみなし

労働者派遣法第40条の6第1項労働契約の申込みをしたものとみなすe-Gov原文

誤り
派遣法40条の6第1項ただし書の例外

労働者派遣法第40条の6第1項ただし書知らず、かつ、知らなかつたことにつき過失がなかつたときは、この限りでないe-Gov原文

ひっかけ違法状態なら常に直接雇用が成立する、と読むとイを正しいと取り違える。善意無過失の派遣先は除かれる。

解説派遣先が違法派遣(禁止業務への派遣、無許可事業主からの受入れ、期間制限違反等)に該当する行為を、それと知りながら行った場合には、その時点で派遣先が派遣労働者に対し、同一条件での労働契約の申込みをしたものとみなされる(労働者派遣法40条の6第1項)。ただし派遣先が善意かつ無過失のときは適用されない。アは正しく、イは善意無過失でも適用されるとした点で誤り。

補足派遣には期間制限があり、同一の事業所での派遣受入れは原則3年(事業所単位)、同一の派遣労働者を同一組織単位で受け入れるのも原則3年(個人単位)が上限になる。

10妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止

妊娠・出産等を理由とする取扱いに関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 事業主は、女性労働者が妊娠したこと、出産したこと等を理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
  • 妊娠中の女性労働者及び出産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、事業主が妊娠等を理由とする解雇でないことを証明しない限り、無効となる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)

正しい
均等法9条3項の不利益取扱い禁止

男女雇用機会均等法第9条第3項当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないe-Gov原文

正しい
均等法9条4項の解雇無効の推定

男女雇用機会均等法第9条第4項妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とするe-Gov原文

ひっかけ産休中の解雇でも会社が理由を語らなければ有効、と思うとイを誤る。立証責任は事業主側に転換されている。

解説事業主は、女性労働者の妊娠・出産等を理由とする解雇その他の不利益取扱いをしてはならない(男女雇用機会均等法9条3項)。さらに、妊娠中・出産後1年以内の解雇は無効とされ、事業主が妊娠等を理由としないことを証明しない限り覆らない(同条4項)。アもイも条文どおりで正しい。

補足9条4項は、解雇が妊娠等を理由としないことの証明責任を事業主に負わせる点に特徴がある。労働者側が「妊娠が理由だ」と立証しなくても、まず無効が出発点になる。

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