問1株主有限責任と株式譲渡自由の原則
株式会社の株主に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とする。
- イ.株主は、その有する株式を譲渡することができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
株式会社の核心は『株主有限責任』と『株式譲渡自由』の2原則です。
株式会社という仕組みを支える2本柱が、株主有限責任の原則と株式譲渡自由の原則である。株主有限責任とは、株主が負う責任は出資した株式の引受価額を限度とし、会社の債務について個人的に責任を負わないこと(会社法104条)。これにより出資者はリスクを限定でき、多くの人から資本を集めやすくなる。株式譲渡自由とは、株主が原則として自由に株式を他人に譲り渡せること(127条)。出資した資金を回収する手段(投下資本の回収)を株主に保障する意味がある。本問はアもイも条文どおりで正しい。なお譲渡自由には例外があり、定款で株式の譲渡に会社の承認を要する旨を定める『譲渡制限株式』とすることもできるが、原則は自由である点を押さえる。
問2株主総会の権限
取締役会設置会社における株主総会の権限に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.取締役会設置会社においては、株主総会は、会社法に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。
- イ.会社法上、株主総会の決議を必要とする事項について、取締役会が決定できる旨を定款で定めれば、その定款の定めは有効である。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
取締役会がある会社では、株主総会の決議事項は限定されます。
株主総会は株式会社の意思決定機関だが、その権限は会社の機関設計で変わる。取締役会を置かない会社では、株主総会は会社に関する一切の事項を決議できる万能機関である(会社法295条1項)。これに対し取締役会設置会社では、機動的な経営を取締役会に委ねるため、株主総会が決議できるのは会社法に規定する事項(取締役の選任・解任、定款変更、合併など根本的事項)と定款で定めた事項に限られる(同条2項)。もっとも、本来株主総会が決めるべき事項を取締役会など他の機関が決定できるとする定款の定めは効力を有しない(同条3項)。株主の根本的な権限まで奪うことは許されないからである。本問のアは2項どおりで正しく、イは3項に反し誤り。『取締役会があると株主総会の権限は法定+定款事項に絞られる/ただし根本事項は移せない』を押さえる。
問3役員の選任と取締役の資格
株式会社の役員に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.取締役その他の役員は、取締役会の決議によって選任する。
- イ.法人は、取締役となることができない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
役員を選ぶのは『株主総会』。取締役会ではありません。
取締役・会計参与・監査役をまとめて『役員』といい、これらは株主総会の決議によって選任される(会社法329条1項)。会社の所有者である株主が、経営を委ねる役員を選ぶという基本構造である。代表取締役の選定は取締役会(または取締役の互選等)が行うが、その前提となる取締役自体は株主総会が選ぶ点に注意。また取締役の資格について、法人は取締役となることができない(331条1項1号)。取締役は会社の業務執行に関する判断を自ら行う立場であり、自然人であることが必要とされるからである。本問のアは『取締役会の決議で選任』とするが、正しくは株主総会なので誤り。イは法人が取締役になれない点で正しい。『役員の選任は株主総会/取締役は自然人に限る』を押さえる。
問4取締役会の権限
取締役会設置会社の取締役会に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.取締役会は、重要な財産の処分及び譲受けの決定を、各取締役に委任することができる。
- イ.取締役会は、すべての取締役で組織し、代表取締役の選定及び解職を行う。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
重要な財産の処分など『重要な業務執行』は、取締役会自身が決めなければなりません。
取締役会設置会社では、取締役会がすべての取締役で組織され(会社法362条1項)、会社の業務執行の決定、取締役の職務執行の監督、代表取締役の選定及び解職を行う(同条2項)。日常的な業務執行の決定は代表取締役らに委ねられるが、会社に与える影響が大きい重要な業務執行の決定は取締役会が自ら行わなければならず、各取締役に委任できない(同条4項)。具体的には、重要な財産の処分及び譲受け、多額の借財、支配人その他の重要な使用人の選任及び解任、支店等の重要な組織の設置・変更・廃止などである(4項各号)。本問のアは重要な財産の処分の決定を各取締役に委任できるとするが、これは委任できない事項なので誤り。イは取締役会の組織と権限どおりで正しい。『重要な業務執行=取締役会の専決(委任不可)』が頻出ポイント。
問5代表取締役の権限
代表取締役の権限に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.代表取締役の代表権に加えた制限は、善意の第三者に対しても対抗することができる。
- イ.代表取締役は、株式会社の業務に関する裁判外の行為についてのみ権限を有し、裁判上の行為をする権限はない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
代表取締役の権限は『裁判上・裁判外の一切』に及び、内部制限は外部に主張できません。
代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限(包括的代表権)を有する(会社法349条4項)。契約締結などの取引行為(裁判外)だけでなく、訴訟行為(裁判上)も含む広い権限である。会社が内部規程や取締役会決議でこの代表権に制限(例:一定額以上の取引は取締役会の事前承認を要する)を加えても、その制限は善意の第三者に対抗することができない(同条5項)。取引相手は会社内部の事情を知り得ないのが通常であり、取引の安全を守る必要があるからである。本問のアは『制限を善意の第三者に対抗できる』とするが5項に反し誤り、イは『裁判上の行為の権限はない』とするが4項に反し誤り。よって両方誤りで『アー誤、イー誤』。『代表権は包括的/内部制限は善意の第三者に対抗できない』を押さえる。
問6株式会社の設立方法
株式会社の設立に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.株式会社は、発起設立又は募集設立のいずれかの方法により設立することができる。
- イ.各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を1株以上引き受けなければならない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
株式会社の設立方法は『発起設立』と『募集設立』の2つです。
株式会社の設立には2つの方法がある(会社法25条1項)。1つは発起設立で、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方法。もう1つは募集設立で、発起人が一部を引き受けたうえ、残りを引き受ける株主を募集する方法である。いずれの方法でも、各発起人は設立に際して設立時発行株式を1株以上引き受けなければならない(同条2項)。発起人は会社設立の企画者であり、自らも出資者(株主)となることが求められるからである。本問はアもイも条文どおりで正しい。『設立=発起設立/募集設立の2方法・発起人は1株以上引受』を押さえる。発起設立は手続が簡素で、中小の会社設立では発起設立が多く用いられる。
問7株主の権利
株主の権利に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.株主は、その有する株式につき、剰余金の配当を受ける権利及び株主総会における議決権を有する。
- イ.株主に剰余金の配当を受ける権利及び残余財産の分配を受ける権利の全部を与えない旨を定款で定めた場合、その定めは有効である。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
株主の中核的な経済的権利(配当・残余財産)を全部奪う定款は無効です。
株主は、出資の見返りとして会社法上の権利を持つ(会社法105条1項)。代表が、剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利(いずれも経済的利益を得る自益権)と、株主総会における議決権(経営に参加する共益権)である。これらは株式会社の出資者としての地位の中核をなす。そのため、剰余金配当と残余財産分配の権利の全部を株主に与えない旨を定款で定めても、その定めは効力を有しない(同条2項)。出資者である意味を失わせる定めは許されないからである(種類株式で一方を制限することは可能だが、両方の全部剥奪はできない)。本問のアは正しく、イは『全部奪う定款も有効』とするため誤り。『株主の中核的な経済的権利は定款でも全部は奪えない』を押さえる。
問8取締役の忠実義務と競業・利益相反取引
取締役の義務に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引(競業取引)をしようとするときは、その取引につき重要な事実を開示して承認を受けなければならない。
- イ.取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
取締役は会社の利益を優先する立場。競業・利益相反取引には承認が要ります。
取締役は会社の経営を委ねられた立場として、法令・定款・株主総会決議を遵守し、会社のため忠実にその職務を行う忠実義務を負う(会社法355条)。この義務の具体化として、取締役が会社の利益を犠牲に自己や第三者の利益を図る危険のある取引が規制される。すなわち、(1)会社の事業の部類に属する取引をする競業取引、(2)取締役が自己又は第三者のために会社と取引をする直接取引、(3)会社が取締役の債務を保証するなどの間接取引について、取締役は重要な事実を開示し、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の承認を受けなければならない(356条1項。利益相反取引の規制)。本問はアもイも条文どおりで正しい。『忠実義務+競業・利益相反取引は事前の承認が必要』を押さえる。
問9取締役の解任
取締役の解任に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.取締役を解任するには正当な理由が必要であり、正当な理由がなければ、株主総会の決議によっても取締役を解任することはできない。
- イ.正当な理由がないのに解任された取締役は、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
取締役の解任に『正当な理由』は不要。ただし不当解任なら損害賠償が生じます。
取締役などの役員は、株主総会の決議によっていつでも解任することができる(会社法339条1項)。会社の所有者である株主が、信頼できない経営者を理由を問わず外せるようにする趣旨で、解任に正当な理由は必要ない。もっとも、任期の途中で正当な理由がないのに解任された役員は、会社に対し、解任によって生じた損害(残りの任期分の報酬相当額など)の賠償を請求できる(同条2項)。解任の自由を認めつつ、不意に地位を奪われる役員の利益を金銭で調整する仕組みである。本問のアは『正当理由がなければ解任できない』とするが、いつでも解任できるので誤り。イは339条2項どおりで正しい。『解任はいつでも可/正当理由のない解任は損害賠償』を押さえる。
問10監査役の権限と取締役の任期
監査役及び取締役に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.監査役は、会社の会計の監査を行うのみで、取締役の職務の執行を監査する権限はない。
- イ.取締役の任期は、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までが原則である。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
- イ.誤り
- 332条1項は原則2年 → 10年は誤り(非公開会社で定款により最長10年に伸長可)(根拠:会社法第332条第1項)
監査役は取締役の『職務の執行』を監査します。任期の原則は2年です。
監査役は、取締役(会計参与設置会社では取締役及び会計参与)の職務の執行を監査する機関である(会社法381条1項)。その監査は会計に関する会計監査だけでなく、取締役が法令・定款を守って職務を行っているかを見る業務監査にも及ぶ。監査役は、いつでも取締役等に事業の報告を求め、会社の業務・財産の状況を調査する権限を持つ。一方、取締役の任期は、原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までである(332条1項)。ただし公開会社でない株式会社では、定款で最長10年まで伸長できる(同条2項)。本問のアは監査役に職務執行の監査権限がないとするが、あるので誤り。イは任期の原則を10年とするが、原則は2年なので誤り。『監査役=業務監査も行う/取締役の任期は原則2年』を押さえる。