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民法・第1

企業取引・契約にかかわる法務の問題(88問)

562条 契約不適合責任・541条 解除・94条 虚偽表示などを、条文の原文と選択肢ごとの理由で確認できます。

この章を解く(88問)→

契約・債権は、請求できる手段の順に整理する

契約と債権の総合をあつかう、2級で最大の章(88問)です。契約不適合責任(追完・代金減額・期間制限)、催告解除と無催告解除、危険負担、債務不履行、賃貸借・消費貸借、意思表示(虚偽表示・錯誤・詐欺強迫)、代理(無権代理・表見代理)まで広く深く問われます。2級の得点の土台になる分野で、各論点の要件と効果を根拠条文に当たって固めるほど、本試験の事例問題に対応できます。

第1章は契約不適合、解除、危険負担、代理、意思表示がまとまる最大級の章です。契約が有効かだけでなく、履行請求、追完、代金減額、解除、損害賠償へどう進むかを確認します。

  • 契約不適合は追完請求、代金減額、解除、損害賠償を分ける。
  • 催告解除と無催告解除は要件が違う。
  • 表見代理は相手方の保護要件を見る。

条文検索で確認されている論点

この章には、契約不適合責任の追完請求(民法562条)・催告解除(541条)・虚偽表示(94条)・錯誤や詐欺強迫に関する問題を収録しています。条文名だけでなく、どの要件が結論を分けるかを各選択肢の根拠と一緒に確認できます。

この章で確認する論点

1章では、催告によらない解除・危険負担・委任の解除・催告による解除・贈与を中心に88問を収録しています。正解番号だけでなく、選択肢ごとの根拠と誤りの理由まで確認します。

民法を他資格と横断して確認する場合は、民法を学べる資格と無料問題も使えます。

  • 不適合があれば常に追完を求められるとは限らない。不適合が買主側の事情で生じたなら、追完請求は閉ざされる。
  • 不適合があればすぐ減額できると考えるとアで誤る。減額の前に、原則として追完の催告で直す機会を与える。
  • 通知期間を『5年』と覚えているとアで取りこぼす。種類・品質の不適合は、知った時から1年以内の通知が要る。

この章で扱う条文

収録問題の解説が根拠として引用している条文の一覧です。リンク先はe-Gov法令検索の原文(解説内では該当箇所を逐語引用しています)。

民法94条95条96条99条100条109条110条112条113条116条117条413条415条482条492条533条536条537条541条542条545条549条555条557条562条563条566条587条593条601条604条612条613条621条632条636条643条644条651条657条667条

商法4条11条14条20条21条23条27条501条502条503条504条509条512条513条521条

会社法10条13条

問題と解説を読む88問・答え付き

答え・解説つきで88問を読めます。自分で解いて試すには、上の「この章を解く」からどうぞ。

e-Gov逐語照合済み2025年12月時点の法令に準拠
1契約不適合責任(追完請求)

売買の目的物の契約不適合に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないとき、買主は売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡しまたは不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。
  • その不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は履行の追完を請求することができない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:1(アー正、イー正)

正しい
契約不適合責任では、まず契約で予定された状態に近づける救済として追完請求が置かれている。種類・品質・数量が契約内容に合わないとき、買主は修補、代替物の引渡し、不足分の引渡しという形で、売主に本来の履行を完成させるよう求められる。

民法第562条第1項引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができるe-Gov原文

正しい
追完請求は売主側に契約不適合を是正させる救済なので、不適合の原因が買主側の責めに帰すべき事由にある場合まで売主に負担させるのは公平でない。562条2項は、買主帰責の不適合では追完請求を閉ざしている。

民法第562条第2項前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができないe-Gov原文

ひっかけ不適合があれば常に追完を求められるとは限らない。不適合が買主側の事情で生じたなら、追完請求は閉ざされる。

解説引き渡された目的物が種類・品質・数量について契約の内容に適合しないとき、買主は売主に対し、目的物の修補・代替物の引渡し・不足分の引渡しという形で履行の追完を請求できる(民法562条1項)。これが契約不適合責任の基本的な救済で、アはこの条文どおりで正しい。もっとも、その不適合が買主の責めに帰すべき事由によって生じたものであるときは、買主は追完を請求できない(同条2項)。自分の落ち度で生じた不適合まで売主に直させるのは公平でないからで、イも正しい。追完請求が認められるには、不適合の存在に加えて買主に帰責事由がないことまで必要になる。

補足追完請求のほか、損害賠償(415条)や解除(541条・542条)も併せて行使でき、これらは追完・減額の規定に妨げられない(564条)。

2代金減額請求

売買の目的物が契約に適合しない場合の代金減額請求に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 目的物が契約に適合しない場合、買主は、履行の追完の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができるのが原則である。
  • 不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものである場合でも、買主は代金の減額を請求することができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:4(アー誤、イー誤)

誤り
原則 → 追完催告 → 不追完で減額

民法第563条第1項買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができるe-Gov原文

誤り
買主の帰責 → 減額不可

民法第563条第3項第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができないe-Gov原文

ひっかけ不適合があればすぐ減額できると考えるとアで誤る。減額の前に、原則として追完の催告で直す機会を与える。

解説契約不適合があっても、まず追完(直す・取り替える)の機会を売主に与えるのが筋である。そこで代金減額請求は、原則として買主が相当の期間を定めて履行の追完を催告し、その期間内に追完がないときに初めてできる(民法563条1項)。アは催告を経ずに『直ちに』減額できるのが原則だとする点で誤り。次に、不適合が買主の責めに帰すべき事由によるときは、そもそも代金減額を請求できないので(同条3項)、イも誤り。なお追完が不能なとき、売主が追完を明確に拒絶したとき、定期行為で時期を徒過したとき等は、例外として催告なしに直ちに減額できる(同条2項)。

補足追完が不能なときや売主が追完を明確に拒絶したときは、563条2項により催告を省いて直ちに代金減額を請求できる。

3契約不適合責任の期間制限

種類・品質に関する契約不適合の期間制限に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 売主が種類または品質に関して契約に適合しない目的物を引き渡した場合、買主は、不適合を知った時から5年以内に通知しなければ、不適合を理由とする追完請求等ができなくなる。
  • 売主が引渡しの時にその不適合を知り、または重大な過失によって知らなかったときは、この期間制限は適用されない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
期間制限 → 1年以内の通知

民法第566条買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときはe-Gov原文

正しい
売主の悪意・重過失 → 制限解除

民法第566条売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでないe-Gov原文

ひっかけ通知期間を『5年』と覚えているとアで取りこぼす。種類・品質の不適合は、知った時から1年以内の通知が要る。

解説種類または品質に関する契約不適合では、買主が不適合を知った時から1年以内にその旨を売主へ通知しないと、追完請求・代金減額・損害賠償・解除のいずれの権利も行使できなくなる(民法566条本文)。アは期間を『5年』とする点で誤りで、正しくは1年である。期間が経つほど不適合の有無の判断が難しくなるため売主を早期に安定させる趣旨だが、売主が引渡しの時に不適合を知り、または重大な過失で知らなかったときは、保護に値しないため期間制限は適用されない(同条ただし書)。よってイは正しい。この1年の通知制限が及ぶのは種類・品質の不適合に限られ、数量や移転した権利の不適合には及ばない。

補足数量不足や移転した権利の不適合には、この566条の1年の通知制限は及ばず、消滅時効の一般原則で処理される。

4催告による解除

契約の解除に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 当事者の一方が債務を履行しない場合、相手方が相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときは、相手方は契約を解除することができる。
  • 催告期間を経過した時の債務の不履行が、契約および取引上の社会通念に照らして軽微であるときも、相手方は契約を解除することができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)

正しい
催告解除の原則

民法第541条相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができるe-Gov原文

誤り
軽微な不履行 → 解除不可

民法第541条その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでないe-Gov原文

ひっかけ催告期間が過ぎれば必ず解除できると考えるとイで誤る。経過時の不履行が軽微なら、解除は止められる。

解説債務が履行されないとき、相手方はいきなり解除するのではなく、まず相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がなければ契約を解除できる(民法541条本文)。これが催告解除の原則で、アはこのとおり正しい。もっとも、催告期間を経過した時点での不履行が、契約および取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、解除は認められない(同条ただし書)。解除は契約関係を一方的に消滅させる重い効果であり、ささいな不履行で発動させるのは均衡を欠くからで、イはこの軽微の場合まで解除できるとする点で誤り。催告して履行がなくても、軽微性という歯止めがかかる場面がある。

補足軽微かどうかは不履行の態様・割合だけでなく、契約および取引上の社会通念を総合して判断され、付随的義務違反にとどまる場合などが典型。

5催告によらない解除(無催告解除)

催告によらない契約の解除に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 債務の全部の履行が不能であるときは、債権者は、履行の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
  • 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したときは、債権者は、催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)

正しい
履行不能 → 無催告解除

民法第542条第1項債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができるe-Gov原文

民法第542条第1項第1号債務の全部の履行が不能であるときe-Gov原文

正しい
明確な履行拒絶 → 無催告解除

民法第542条第1項第2号債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したときe-Gov原文

ひっかけ催告が空振りに終わる場面では、催告を飛ばして直ちに解除に進める。全部不能も明確な全部拒絶も、その典型。

解説解除は原則として相当期間を定めた催告を要するが(民法541条)、催告しても無意味な場面では催告なしに直ちに解除できる(同542条1項)。アの債務の全部の履行が不能であるとき(1号)、イの債務者が全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき(2号)は、いずれも履行を待っても実現が見込めないため無催告解除が認められ、ともに正しい。同項にはこのほか、一部不能・一部拒絶で残部だけでは契約目的を達せられないとき(3号)、定期行為で時期を徒過したとき(4号)、履行の見込みがないことが明らかなとき(5号)も並ぶ。541条と542条の境目は『催告が意味を持つ場面か』にある。

補足542条1項には定期行為の時期徒過(4号)も含まれ、結婚式当日のドレス引渡しのように時機を逃せば意味を失う契約が想定される。

6危険負担

危険負担に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、なお反対給付の履行を拒むことができない。
  • 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)

誤り
双方無責 → 反対給付の履行拒絶可

民法第536条第1項当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができるe-Gov原文

誤り
債権者の帰責 → 反対給付を負担

民法第536条第2項債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができないe-Gov原文

ひっかけ誰の責めで履行不能になったかで、支払を拒めるか拒めないかが入れ替わる。アとイは方向を逆にした引っかけ。

解説双務契約で一方の債務が履行不能になったとき、もう一方の反対給付(多くは代金)をどう扱うかが危険負担の問題である。当事者双方の責めに帰することができない事由で履行不能になったときは、債権者は反対給付の履行を拒むことができる(民法536条1項)。受け取れないのに払わされるのは不当だからで、アはこれを『拒めない』とする点で誤り。逆に、債権者自身の責めに帰すべき事由で履行不能になったときは、債権者は反対給付の履行を拒むことができない(同条2項前段)。イはこれを『拒める』とする点で誤り。結論は帰責の所在で正反対に振れる。

補足債権者の責めで履行不能となり反対給付を拒めない場合でも、債務者が履行を免れて得た利益は債権者に償還しなければならない(536条2項後段)。

7債務不履行による損害賠償

債務不履行による損害賠償に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 債務者は、債務の不履行が契約その他の債務の発生原因および取引上の社会通念に照らして自己の責めに帰することができない事由によるものであっても、損害賠償責任を免れることはできない。
  • 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき、または債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)

誤り
免責事由あり → 責任なし

民法第415条第1項その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでないe-Gov原文

正しい
債務不履行 → 損害賠償

民法第415条第1項債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができるe-Gov原文

ひっかけ不履行があれば常に賠償責任を負うと考えるとアで誤る。帰責事由がないと判断されれば、責任から解放される。

解説債務者が債務の本旨に従った履行をしないとき、または履行が不能であるときは、債権者はそれによって生じた損害の賠償を請求できる(民法415条1項本文)。これが債務不履行に基づく損害賠償の原則で、イはこのとおり正しい。ただし、その不履行が契約その他の債務の発生原因および取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、債務者は賠償責任を負わない(同項ただし書)。アはこの免責の余地を否定し『常に責任を免れない』とする点で誤り。不履行があれば自動的に賠償ではなく、帰責事由の有無という関門が間に入る。

補足帰責事由の有無は契約の趣旨と取引通念から判断される規範的なもので、債務者の故意・過失の有無だけで決まるわけではない。

8賃借権の譲渡・転貸の制限

賃借権の譲渡および転貸に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、または賃借物を転貸することができない。
  • 賃借人が賃貸人の承諾を得ずに第三者に賃借物を使用または収益させた場合でも、賃貸人は契約を解除することができない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)

正しい
信頼関係 → 承諾が前提

民法第612条第1項賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができないe-Gov原文

誤り
無断使用収益 → 解除権発生

民法第612条第2項賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができるe-Gov原文

ひっかけ無断でも解除されないと考えるとイで誤る。賃貸借の土台は信頼関係なので、無断の譲渡・転貸は解除の引き金になる。

解説賃貸借は、誰に物を使わせるかという当事者間の信頼関係を基礎とする継続的契約である。そのため賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ賃借権を譲り渡したり賃借物を転貸したりすることができない(民法612条1項)。アはこの条文どおりで正しい。そして賃借人がこれに違反して無断で第三者に賃借物を使用・収益させたときは、賃貸人は契約を解除することができる(同条2項)。イはこの解除を否定する点で誤り。もっとも判例上は、無断譲渡・転貸であっても賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、解除権の行使が制限される。

補足判例の背信行為論により、同居の親族への転貸など信頼関係を破壊しない特段の事情があれば、無断でも解除は認められないことがある。

9消費貸借と賃貸借の成立

契約の成立に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 消費貸借は、当事者の一方が種類・品質・数量の同じ物をもって返還することを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
  • 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対して賃料を支払うこと等を約することによって、その効力を生ずる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:1(アー正、イー正)

正しい
要物性

民法第587条消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずるe-Gov原文

正しい
諾成性

民法第601条賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずるe-Gov原文

ひっかけアは消費貸借が物を受け取って成立する要物契約か、イは賃貸借が合意だけで成立する諾成契約か。587条・601条のいずれもそのとおりで、両方正しい。

解説契約の成立に物の交付が要るかは類型で分かれる。消費貸借は、当事者の一方が種類・品質・数量の同じ物をもって返還することを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって効力を生ずる(民法587条)。目的物の交付があって初めて成立する要物契約である。アはこの587条の文言どおりで正しい。これに対し賃貸借は、使用収益させる約束と賃料支払等の約束という合意だけで効力を生ずる諾成契約である(同601条)。イはこの601条を述べたもので正しい。

補足ただし消費貸借でも、書面でするものは目的物を受け取る前から合意だけで成立する諾成的消費貸借となる(587条の2)。要物性は書面によらない場合の話である。

10虚偽表示

意思表示に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効である。
  • 虚偽表示による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:1(アー正、イー正)

正しい
相手方と通じて外形だけの意思表示を作った場合、表意者と相手方の内部関係では保護すべき信頼がないため、法律効果を発生させない。まず当事者間では無効になる、という出発点を押さえる。

民法第94条第1項相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とするe-Gov原文

正しい
通謀虚偽表示は当事者間では無効でも、その外形を信じて取引に入った善意の第三者まで失わせると取引安全を害する。94条2項は、無効という当事者間の効果を善意の第三者に主張できないという形で第三者を保護する。

民法第94条第2項前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができないe-Gov原文

ひっかけ当事者の間では無効でも、その無効を第三者にぶつけられない場面がある。

解説相手方と通じてした虚偽の意思表示(通謀虚偽表示)は、当事者間では無効である(民法94条1項)。仮装の売買で実際には売る気も買う気もないのに名義だけ移したような場合がこれにあたる。もっとも、その外観を信頼して取引に入った善意の第三者には、無効を対抗することができない(同条2項)。たとえば仮装譲渡で名義を得た者から、事情を知らない第三者が当該不動産を買い受けたとき、真の所有者はその第三者に無効を主張できず、所有権を失う。94条が保護するのは外観への信頼そのものであって、第三者の側に過失があっても保護は否定されない。

補足94条2項の第三者は『善意』であれば足り、無過失までは要求されない。詐欺取消しを定める96条3項が『善意でかつ過失がない第三者』としているのと文言が異なる。

11錯誤

錯誤による意思表示に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 意思表示は、法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤に基づくものであるときは、取り消すことができる。
  • 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、相手方が悪意であった等の例外を除き、原則として取消しをすることができない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:1(アー正、イー正)

正しい
95条1項は、錯誤なら何でも取り消せるとはしていない。表示内容の錯誤または動機表示型の錯誤で、かつ取引上重要な錯誤であることが必要。記述はその重要性要件を押さえている。

民法第95条第1項意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができるe-Gov原文

正しい
表意者に重大な過失がある場合は、相手方の信頼保護が優先されるため取消しが制限される。ただし、相手方が悪意・重過失などの場合は例外的に取消しが残る。

民法第95条第3項錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができないe-Gov原文

ひっかけ錯誤があれば必ず取り消せる、とすると要件を取りこぼす。

解説錯誤による意思表示が取り消せるのは、その錯誤が法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要なものであるときに限られる(民法95条1項)。ささいな思い違いでは取り消せない。加えて、その錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、相手方が表意者の錯誤を知り若しくは重過失で知らなかったとき、または相手方が同一の錯誤に陥っていたときを除き、原則として取消しができない(同条3項)。つまり取消しが認められるには『重要性』があり、かつ表意者に『重過失がない』ことが要件となる。

補足錯誤の効果は、2020年施行の改正前は『無効』だったが、現行法では『取消し』に改められた。取消権者・追認・期間制限の規律に乗る点が無効とは異なる。

12詐欺・強迫

詐欺又は強迫による意思表示に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 強迫による意思表示は、初めから無効である。
  • 詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
取消し

民法第96条第1項詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができるe-Gov原文

正しい
第三者保護

民法第96条第3項前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができないe-Gov原文

ひっかけ『強迫=無効』と思い込むと、アの正誤を取り違える。

解説詐欺又は強迫による意思表示は、当然に無効となるのではなく、取り消すことができる(民法96条1項)。だからアの『強迫は初めから無効』は誤り。次に、詐欺による取消しは、取引の安全のため、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない(同条3項)。これに対して強迫の場合は被害者の保護がより強く働き、第三者保護の制限規定が置かれていない。したがって、強迫を理由とする取消しは、善意の第三者に対しても対抗できる。詐欺取消しと強迫取消しで、第三者に対する効力が分かれる。

補足96条3項が制限するのは詐欺取消しだけで、強迫取消しはこの制限を受けない。詐欺は『だまされた本人にも落ち度がありうる』ため第三者を守り、強迫は被害者保護を優先する、という差から来る。

13表見代理

表見代理に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。
  • 代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときは、本人が責任を負うことがある。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:1(アー正、イー正)

正しい
外観への信頼

民法第109条第1項第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負うe-Gov原文

正しい
権限外の表見代理

民法第110条前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用するe-Gov原文

ひっかけ表見代理は、本人にまったく落ち度がなくても成立する制度ではない。

解説無権代理であっても、本人の側に帰責性のある外観があり、相手方がそれを正当に信頼したときは、本人に責任を負わせて取引の安全を図るのが表見代理である。アは、第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者が、その代理権の範囲内でその他人がした行為について責任を負う類型(民法109条1項、代理権授与表示型)。イは、代理人が権限外の行為をした場合に、第三者に代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときに成立しうる類型(同110条、権限外の行為型)。いずれも、本人側の外観への関与と相手方の正当な信頼の両方が要件となる。

補足条文上の表見代理にはもう一つ、いったん存在した代理権が消滅した後にその範囲内でされた行為についての類型(112条、代理権消滅後の表見代理)がある。109条・110条と合わせて三つが基本形になる。

14無権代理

無権代理に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 代理権を有しない者が本人の代理人としてした契約は、本人が追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
  • 無権代理行為は、本人が追認しなくても、当然に本人に対して効力を生ずる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
追認

民法第113条第1項代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じないe-Gov原文

誤り
追認が必要

民法第113条第1項代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じないe-Gov原文

ひっかけ勝手に代理人を名乗って結んだ契約が、そのまま本人を拘束するわけではない。

解説代理権を有しない者が本人の代理人として契約をしても、本人が追認をしなければ、その契約は本人に対して効力を生じない(民法113条1項)。だからイの『追認がなくても当然に効力を生ずる』は誤り。本人は追認することも追認を拒絶することもでき、追認すれば原則として契約の時にさかのぼって有効となる。相手方の側には、本人に追認するかどうかの確答を求める催告権や、本人の追認前に契約を取り消す取消権が認められ、無権代理人自身も一定の場合に履行又は損害賠償の責任を負う(同117条)。無権代理は当然有効でも当然無効でもなく、本人の追認にかかる宙づりの状態にある。

補足相手方の取消権は、無権代理であることを知らなかった相手方が、本人の追認がない間に行使できる。本人が追認すると遡って有効になってしまうため、それより前に縁を切る手段として用意されている。

15売買と手付

売買契約に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 買主が売主に手付を交付した場合、相手方が契約の履行に着手した後であっても、買主はいつでも手付を放棄して契約を解除することができる。
  • 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方が代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
手付解除の限界

民法第557条第1項その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでないe-Gov原文

正しい
諾成契約

民法第555条売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずるe-Gov原文

ひっかけ手付解除には締切がある。相手が履行に着手したら、もう手付では抜けられない。

解説売買は、当事者の一方が財産権を移転することを約し、相手方がその代金を支払うことを約することで効力を生ずる諾成契約である(民法555条)。イはこの条文どおりで正しい。手付が交付された場合、相手方が契約の履行に着手するまでは、買主は手付を放棄し、売主は倍額を現実に提供して契約を解除できる(解約手付。同557条1項本文)。もっとも、相手方が履行に着手した後はこの解除はできない(同項ただし書)。アは『着手後もいつでも解除できる』とする点が、このただし書に反するので誤り。

補足ただし書が基準にするのは「相手方の」着手。自分が先に着手していても、相手がまだ着手していなければ手付解除はできる(判例)。

16請負と注文者の帰責による不適合

請負契約に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
  • 注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた契約不適合についても、注文者は常に請負人に対して担保責任を追及することができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
仕事の完成

民法第632条請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずるe-Gov原文

誤り
請負人の責任制限

民法第636条注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができないe-Gov原文

ひっかけ不適合の原因が注文者の材料や指図にあるなら、その分の責任を請負人には回せない。

解説請負は、当事者の一方が仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約することで効力を生ずる(民法632条)。アはこの条文どおりで正しい。仕事の目的物に契約不適合があれば、注文者は売買の規定を準用して追完請求・報酬減額・損害賠償・解除ができる。ただし、その不適合が注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じたものであるときは、原則として注文者はこれらを請求できない(同636条本文)。イは『常に追及できる』とする点で、この636条本文に反するので誤り。

補足ただし、請負人が材料や指図が不適当と知りながら告げなかったときは、636条ただし書で責任を免れない。また契約不適合の責任は、注文者が不適合を知った時から1年以内に通知しないと失われる(637条)。

17委任と受任者の注意義務

委任契約に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
  • 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:1(アー正、イー正)

正しい
委任は、売買のように財産権を移転する契約ではなく、法律行為を相手方に任せる契約。委託と承諾がそろえば効力が生じる。

民法第643条委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずるe-Gov原文

正しい
受任者は単に頼まれた作業をこなせばよいのではなく、委任の目的に沿って善管注意義務を負う。無償委任でもこの注意義務は問題になる。

民法第644条受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負うe-Gov原文

ひっかけ受任者には善管注意義務がかかる。無報酬かどうかは関係ない。

解説委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することで効力を生ずる(民法643条。事実行為の委託は準委任)。アはこの条文どおりで正しい。受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う(善管注意義務。同644条)。この注意義務は報酬の有無を問わず課される。イは644条どおりで正しい。

補足会社と取締役の関係には委任の規定が適用される(会社法330条)ため、取締役も会社に対し善管注意義務を負い、さらに法令・定款・株主総会決議の遵守という忠実義務も負う(同355条)。

18委任の解除

委任の解除に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 委任を解除した者は、相手方に不利な時期に委任を解除した場合であっても、やむを得ない事由の有無にかかわらず、相手方の損害を賠償する義務を一切負わない。
  • 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
損害賠償

民法第651条第2項相手方の損害を賠償しなければならないe-Gov原文

民法第651条第2項第1号相手方に不利な時期に委任を解除したときe-Gov原文

正しい
任意解除

民法第651条第1項委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができるe-Gov原文

ひっかけいつでも解除できることと、不利な時期の解除でも賠償が要らないことは別。後者は成り立たない。

解説委任は各当事者がいつでも解除できる(民法651条1項)。当事者間の信頼関係を基礎とする契約だからである。イはこの条文どおりで正しい。もっとも、相手方に不利な時期に解除したとき、または委任者が受任者の利益(報酬を得ることのみによるものを除く)をも目的とする委任を解除したときは、やむを得ない事由があった場合を除き、相手方の損害を賠償しなければならない(同条2項)。アは『やむを得ない事由の有無にかかわらず賠償義務を一切負わない』とする点で2項に反するので誤り。

補足委任の解除は将来に向かってのみ効力を生じ、さかのぼらない(民法652条が620条を準用)。すでに処理された事務の効果はそのまま残る。

19同時履行の抗弁権

双務契約に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。
  • 同時履行の抗弁は、相手方の債務が弁済期にあるか否かを問わず、常に主張することができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
同時履行の抗弁

民法第533条自己の債務の履行を拒むことができるe-Gov原文

誤り
抗弁の限界

民法第533条相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでないe-Gov原文

ひっかけ「そっちが先に履行しろ」と言える抗弁。ただし相手の債務がまだ弁済期前なら使えない。

解説双務契約の当事者は、相手方がその債務の履行(履行に代わる損害賠償を含む)を提供するまで、自己の債務の履行を拒める(同時履行の抗弁権。民法533条本文)。売買なら、代金を払わない買主に対し売主は引渡しを拒める、という公平を図る抗弁である。アはこの本文どおりで正しい。イは弁済期にあるか否かを問わず常に主張できるとするが、533条ただし書は「相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない」とする。自分が先に履行すべき場合には同時履行を持ち出せないため、イは誤り。よってアー正、イー誤となる。

補足弁済期にあるか否かが分かれ目で、自分が先履行義務を負う場面ではこの抗弁は働かない。

20贈与

贈与契約に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 贈与は、当事者の一方が財産を無償で与える意思を表示するだけで、相手方の受諾がなくても、その効力を生ずる。
  • 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
諾成契約

民法第549条相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずるe-Gov原文

正しい
無償契約

民法第549条贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずるe-Gov原文

ひっかけ無償でも契約。もらう側の受諾があって初めて成立する。あげる意思だけでは足りない。

解説贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、「相手方が受諾をすることによって」効力を生ずる(民法549条)。アは受諾がなくても効力を生ずるとするが、贈与も契約である以上、あげる側の一方的な意思表示だけでは成立せず、もらう側の受諾が必要だから誤り。イは549条の文言そのままで、無償・諾成契約としての成立要件を正しく述べているため正しい。したがってアー誤、イー正となる。

補足書面によらない贈与は各当事者が解除できるが、履行の終わった部分については解除できない(民法550条)。

21契約解除の効果(原状回復)

契約の解除の効果に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。
  • 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:1(アー正、イー正)

正しい
原状回復

民法第545条第1項各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負うe-Gov原文

正しい
損害賠償との両立

民法第545条第4項解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げないe-Gov原文

ひっかけ契約を解除して受領物を返しても、不履行で生じた損害の賠償は別腹で請求できる。

解説解除権を行使すると、各当事者は相手方を原状に復させる義務を負う(民法545条1項本文)。アはこの原状回復義務どおりで正しい。そして解除権の行使は損害賠償の請求を妨げない(同条4項)から、契約を巻き戻す原状回復と、不履行で被った損害の賠償は同時に求められる。イもこのとおりで、組み合わせはアー正・イー正となる。

補足返すのが金銭なら受領時からの利息を付し、物なら受領時以後の果実も返す(545条2項・3項)。原状回復は受領時点まで遡って清算する。

22弁済の提供と受領遅滞

弁済の提供等に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる。
  • 債権者が受領を拒んだことによって履行の費用が増加した場合、その増加額は債務者の負担となる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)

正しい
提供の効果

民法第492条債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れるe-Gov原文

誤り
受領遅滞

民法第413条第2項その増加額は、債権者の負担とするe-Gov原文

ひっかけ受領拒否で膨らんだ費用は、提供した債務者ではなく受け取らなかった債権者が背負う。

解説債務者が弁済の提供をすれば、その時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる(民法492条)。遅延損害金などの不履行責任が止まるということで、アは正しい。また、債権者が受領を拒んだり受領できなかったりして履行費用が増えたときは、その増加額は債権者の負担となる(同413条2項)。イは『債務者の負担』としており誤りで、組み合わせはアー正・イー誤。

補足提供しても債権者が受け取らないなら、債務者は供託で債務そのものを消せる(494条)。提供は供託の前提にもなる。

23第三者のためにする契約

第三者のためにする契約に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
  • 第三者のためにする契約において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:1(アー正、イー正)

正しい
受益の権利

民法第537条第1項その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有するe-Gov原文

正しい
受益の意思表示

民法第537条第3項第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生するe-Gov原文

ひっかけ第三者が契約に入らずに直接請求権を得る(ア=537条1項)。その権利がいつ生じるかが537条3項で、受益の意思表示の時。イもそのとおりで、両方正しい。

解説契約で当事者の一方(諾約者)が第三者にある給付をすることを約したときは、その第三者は債務者に対して直接その給付を請求する権利を得る(第三者のためにする契約。民法537条1項)。アはこの条文どおりで正しい。第三者は契約の時に現に存在していなくても、特定していなくてもよい(同条2項)。そして第三者の権利は、その第三者が債務者に対して契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する(同条3項)。イはこの受益の意思表示の点を正しく述べている。生命保険や代金を第三者へ支払う合意などがこれにあたる。

補足受益の意思表示で第三者の権利が確定した後は、当事者はこれを変更・消滅させられない(民法538条1項)。

24代物弁済

代物弁済に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 代物弁済は、当事者が本来の給付に代えて他の給付をする旨を約しさえすれば、現実に他の給付をしなくても、その時点で債務が消滅する。
  • 代物弁済による給付がされても、それは本来の弁済とは異なるため、弁済としての効力を有しない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)

誤り
給付の実行

民法第482条その給付は、弁済と同一の効力を有するe-Gov原文

誤り
弁済と同一効

民法第482条その給付は、弁済と同一の効力を有するe-Gov原文

ひっかけアは『約束しさえすれば』債務が消滅するとするが誤り。イは逆に弁済の効力を全否定して誤り。482条は現実の給付があって初めて弁済と同一の効力が生じる。

解説代物弁済とは、弁済できる者が債権者との間で、本来の給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨を契約し、その者が実際に当該他の給付をしたときに、その給付が弁済と同一の効力を持つものをいう(民法482条)。だから、約束しただけで現実の給付をしていなくても債務が消滅するとするアは誤り。一方、現実にされた代物弁済の給付は弁済と同一の効力を持つので、効力を否定するイも誤り。合意(諾成)だけでは足りず、現実に他の給付をして初めて弁済の効力が生じる点が分かれ目になる。

補足もっとも不動産を代物弁済に充てる場合、所有権移転は意思表示で生じうるが、債務消滅には登記など対抗要件の具備までが必要とされる(最判昭57.6.4)。

25使用貸借

使用貸借に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 使用貸借は、当事者の一方が相手方に物を有償で使用収益させることを内容とする契約である。
  • 使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用収益をして、契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
無償契約

民法第593条相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をしてe-Gov原文

正しい
成立

民法第593条使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずるe-Gov原文

ひっかけ使用貸借は無償が本質で、有償と書いた時点で賃貸借とすり替わっている。

解説使用貸借は、当事者の一方(貸主)がある物を引き渡すことを約し、相手方(借主)がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約終了時に返還をすることを約することによって、効力を生ずる(民法593条)。アは『有償で使用収益させる』とする点で誤り。イは593条の文言そのもので正しい。賃料の支払を伴う賃貸借(601条)と異なり、無償である点が本質で、貸主の引渡義務や担保責任も贈与に準じて軽減される。

補足使用貸借は借主の死亡によって終了する(597条3項)。賃借権が相続される賃貸借と異なり、貸主と借主個人の信頼関係を前提とするため相続されない。

26寄託と使用貸借

寄託・使用貸借に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
  • 使用貸借は、無償で物を使用収益させる契約である。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:1(アー正、イー正)

正しい
寄託

民法第657条寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずるe-Gov原文

正しい
無償契約

民法第593条相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をしてe-Gov原文

ひっかけ寄託は預かって保管する契約、使用貸借は無償で貸す契約で、成立要件も目的も別物。

解説寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって効力を生ずる(民法657条)。倉庫寄託や預金(消費寄託)などがこれにあたる。アはこの規定どおりで正しい。使用貸借は、無償で物を使用収益させ、契約終了時に返還する契約である(同593条)。イも無償である点を正しく述べている。いずれも物の引渡しを伴うが、寄託は保管、使用貸借は無償の利用と、目的が分かれる。

補足預金のように受寄者が預かった物を消費できる消費寄託では、受寄者は同じ物そのものではなく、種類・品質・数量の同じ物を返還すればよい(666条1項)。

27賃貸借の存続期間

賃貸借の存続期間に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 賃貸借の存続期間は、当事者が契約で定めれば、50年を超えることもできる。
  • 賃貸借の存続期間は50年を超えることができず、契約でこれより長い期間を定めても、その期間は50年とされる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
上限50年

民法第604条第1項賃貸借の存続期間は、五十年を超えることができないe-Gov原文

正しい
上限の効果

民法第604条第1項賃貸借の存続期間は、五十年を超えることができないe-Gov原文

ひっかけいくら長い年数を書き込んでも、民法の賃貸借は50年で止まります。

解説賃貸借の存続期間は50年を超えられず、契約でこれより長く定めても、その期間は50年に切り詰められる(民法604条1項)。条文が定める上限はこの『50年』なので、『50年を超えることもできる』とするアは誤り、超過分を50年に縮める効果まで述べたイが正しい。100年と書こうが200年と書こうが、民法上は50年で頭打ちになる。

補足この50年上限は民法上の賃貸借の話。建物所有目的の土地賃貸借や建物賃貸借には借地借家法の別の期間ルールがかぶさり、50年では区切られない。

28転貸の効果

賃借物の転貸に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人・賃借人間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。
  • 賃借人が適法に賃借物を転貸した場合、賃貸人は、賃借人との賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
適法な転貸では、転借人は賃借人から利用権を受けるだけでなく、元の賃貸借関係とも一定の結び付きに入る。そこで613条1項は、元の賃借人の債務の範囲を限度に、転借人が賃貸人へ直接履行義務を負うとする。

民法第613条第1項賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負うe-Gov原文

誤り
適法に転貸を受けた転借人は、賃貸人側から見ても保護に値する利用関係を持つ。賃貸人と賃借人だけの合意解除でその地位を失わせると転借人が不安定になるため、613条3項は合意解除を原則として転借人に対抗できないとする。

民法第613条第3項賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができないe-Gov原文

ひっかけ適法な転貸では、転借人は賃料を直接払う立場であると同時に、勝手な合意解除からは守られます。

解説賃貸人の承諾を得て適法に転貸されると、転借人は、賃貸人・賃借人間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃料支払等の義務を賃貸人へ直接負う(民法613条1項)。アはこの直接義務をそのまま述べていて正しい。他方で賃貸人は、賃借人との賃貸借を合意により解除したことを転借人に対抗できない(同条3項本文)から、『合意解除を対抗できる』とするイは誤り。直接義務という負担と、合意解除を突きつけられない保護とが、転借人に同時に働く。

補足合意解除を対抗できないのはあくまで原則。解除の当時すでに賃借人の賃料滞納などで債務不履行解除ができた場合は、合意解除でも転借人に終了を主張できる(613条3項ただし書)。

29賃借人の原状回復義務

賃借人の原状回復義務に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 賃借人は、賃借物を受け取った後に生じた損傷がある場合において、賃貸借が終了したときは、原則としてその損傷を原状に復する義務を負う。
  • 通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗(通常損耗)や経年変化についても、賃借人は原状回復義務を負う。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
原状回復

民法第621条賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷e-Gov原文

民法第621条その損傷を原状に復する義務を負うe-Gov原文

誤り
通常損耗の除外

民法第621条通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除くe-Gov原文

ひっかけ普通に使って生じた傷みと経年劣化は、原状回復の対象から最初に抜かれています。

解説賃借物を受け取った後に生じた損傷は、賃貸借が終了したとき、原則として賃借人が原状に復さなければならない(民法621条本文)。アはこの原状回復義務どおりで正しい。ただし条文のかっこ書が、通常の使用・収益によって生じた損耗(通常損耗)と経年変化を、この義務の対象から外している。だから『通常損耗や経年変化も賃借人が負う』とするイは誤り。普通に住んで生じた畳の擦れや日焼けの修繕費まで借主に回すことはできない。

補足条文上もう一つの除外がある。損傷が賃借人の責めに帰せない事由で生じたとき(例えば天災)は、その分の原状回復義務も負わない(621条ただし書)。

30賃貸借の更新

賃貸借の存続期間に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 賃貸借の存続期間は、更新することができない。
  • 賃貸借の存続期間は更新することができるが、その期間は、更新の時から50年を超えることができない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
更新可

民法第604条第2項賃貸借の存続期間は、更新することができるe-Gov原文

正しい
更新後も50年

民法第604条第2項その期間は、更新の時から五十年を超えることができないe-Gov原文

ひっかけ更新は何度でもできますが、そのたびに『更新時から50年』の天井が引き直されます。

解説賃貸借の存続期間は更新できる(民法604条2項前段)から、『更新できない』とするアは誤り。ただし更新後の期間も、更新の時から数えて50年を超えられない(同項後段)ため、その上限まで述べたイは正しい。当初契約も更新も、起算点こそ動くが『その時点から最長50年』という天井は変わらない。

補足更新時から50年なので、更新を重ねれば通算50年を超えて借り続けられる。1回の期間が50年で頭打ちになるだけで、契約の通算年数に上限があるわけではない。

31贈与(第1章・biz2-ch1-0031)

贈与に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
  • 贈与は、当事者の一方がある財産を有償で相手方に与える契約である。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
贈与

民法第549条贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずるe-Gov原文

誤り
無償契約

民法第549条贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずるe-Gov原文

ひっかけ贈与の一字一句に有償の要素はありません。対価が入った時点で別の契約になります。

解説贈与は、一方が無償で財産を与える意思を表示し、相手方が受諾することで効力を生じる(民法549条)。物の引渡しを待たず合意だけで成立する諾成契約で、アはこの定義のとおり正しい。条文が定める贈与の核は『無償』である点だから、『有償で相手方に与える契約』とするイは正反対で誤り。対価を伴えばそれはもはや売買等であって贈与ではなく、組み合わせは『アー正、イー誤』。

補足無償ゆえに拘束力は弱く、書面によらない贈与は各当事者が解除できる(民法550条本文)。ただし引渡しなど履行の終わった部分は、もう解除できない(同条ただし書)。

32手付

売買契約における手付に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。
  • 手付による解除は、相手方が契約の履行に着手した後であっても、することができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)

正しい
解約手付

民法第557条第1項買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができるe-Gov原文

誤り
履行の着手

民法第557条第1項その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでないe-Gov原文

ひっかけ手付による解除が許されるのは相手が動き出すまで。履行への着手で、その扉は閉まります。

解説買主が交付した手付は解約手付と扱われ、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約を解除できる(民法557条1項本文)。アはこの条文そのままで正しい。もっとも解除できるのは相手方が履行に着手するまでで、相手方が契約の履行に着手した後はこの解除はできない(同項ただし書)。だから『履行に着手した後であってもすることができる』とするイは誤り。着手という線を越えると手付解除の窓は閉じ、組み合わせは『アー正、イー誤』。

補足売主側は『倍額を現実に提供』する必要があり、口頭で倍返しを申し出るだけでは解除の効果は生じない。なお手付解除は債務不履行を理由としないため、解除に伴う損害賠償の規定は適用されない(557条2項)。

33消費貸借

消費貸借に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 消費貸借は、当事者が合意するだけで成立し、目的物の交付がなくてもその効力を生ずる。
  • 消費貸借は、借主が種類・品質・数量の同じ物を返還することを約して、相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)

誤り
要物契約

民法第587条消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずるe-Gov原文

正しい
成立

民法第587条消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずるe-Gov原文

ひっかけ原則の消費貸借は約束だけでは始まらず、物が現に渡って初めて成立します。

解説消費貸借は、借りた物と同じ種類・品質・数量の物を返すと約して、相手方から金銭その他の物を受け取ることによって効力を生じる(民法587条)。受け取って初めて成立する要物契約だから、『合意するだけで成立し、目的物の交付がなくても効力を生ずる』とするアは誤り。受取りを成立要件として述べたイは条文どおり正しく、組み合わせは『アー誤、イー正』。金銭の貸し借りでいえば、貸す約束だけでなく現にお金が渡って契約が立ち上がるのが原則の姿である。

補足例外が587条の2の諾成的消費貸借で、書面でする消費貸借は受取り前でも合意のみで成立する。この場合、借主は物を受け取るまで契約を解除でき、貸主は解除で損害を受ければ賠償を請求できる。

34賃貸借の成立

賃貸借に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと等を約することによって、その効力を生ずる。
  • 賃貸借は有償契約である点で、無償の使用貸借と区別される。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:1(アー正、イー正)

正しい
賃貸借

民法第601条賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずるe-Gov原文

正しい
有償契約

民法第601条その賃料を支払うことe-Gov原文

ひっかけ物の貸し借りという外見は同じでも、賃料という対価の有無が賃貸借と使用貸借を分けます。

解説賃貸借は、一方が物の使用・収益を相手方にさせ、相手方が賃料を支払い、終了時に物を返すと約することで効力を生じる(民法601条)。アはこの成立要件をなぞっていて正しい。そして賃貸借は賃料の支払を伴う有償契約である点で、無償で物を貸す使用貸借(593条)と分かれるから、イも正しい。物を貸し借りする形は同じでも、対価があるかないかが両者を仕切る境目であり、組み合わせは『アー正、イー正』。

補足建物所有目的の土地賃貸借や建物賃貸借には借地借家法の特則がかぶさり、存続期間や更新の扱いが民法のままにはならない。601条はあくまで賃貸借一般の出発点。

35委任

委任に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 委任は、当事者の一方が事実行為をすることを相手方に委託する契約であり、法律行為をすることの委託は含まれない。
  • 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)

誤り
委任

民法第643条委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずるe-Gov原文

正しい
成立

民法第643条委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずるe-Gov原文

ひっかけ委任が委ねるのは法律行為。事実行為の委託は委任そのものには含まれません。

解説委任は、一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方が承諾することで効力を生じる(民法643条)。委託の対象はあくまで契約締結などの法律行為だから、『事実行為をすることを委託する契約であり、法律行為の委託は含まれない』とするアは対象を取り違えていて誤り。法律行為の委託と承諾で成立すると述べたイは条文どおり正しく、組み合わせは『アー誤、イー正』。委任の本体は法律行為の委託であって、事実行為はその枠外に置かれている。

補足もっとも事実行為の委託が放置されるわけではなく、診療や調査のような法律行為でない事務の委託は準委任として委任の規定が準用される(民法656条)。両者で受任者の善管注意義務(644条)の働き方は変わらない。

36組合契約

組合契約に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 組合契約において、出資は金銭に限られ、労務を出資の目的とすることはできない。
  • 組合契約は、当事者の一方のみが出資をすれば成立する。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)

誤り
労務出資

民法第667条第2項出資は、労務をその目的とすることができるe-Gov原文

誤り
組合の成立

民法第667条第1項組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずるe-Gov原文

ひっかけ出資の中身は労務でもよく、出資する者は当事者全員。この二か所に誤りが仕込まれています。

解説組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むと約することで効力を生じる(民法667条1項)。出資は金銭に限られず労務をその目的とすることもできるから(同条2項)、『出資は金銭に限られ、労務を目的とすることはできない』とするアは誤り。さらに成立には当事者全員の出資が必要で、『一方のみが出資すれば成立する』とするイも誤り。出資できる中身は広く、出資すべき者は全員、という二点で両肢が外れ、組み合わせは『アー誤、イー誤』。

補足各組合員が出資した財産は総組合員の共有に属する(民法668条)。個々人の単独所有でも会社のような法人の財産でもなく、組合員全員に帰属する共同の財産として扱われる。

37絶対的商行為

絶対的商行為に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 利益を得て譲渡する意思をもってする動産・不動産・有価証券の有償取得(投機購買)等は、営業として行うか否かを問わず、商行為(絶対的商行為)とされる。
  • 絶対的商行為は、商人が営業として行う場合に限り、商行為となる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
絶対的商行為

商法第501条次に掲げる行為は、商行為とするe-Gov原文

商法第501条第1号利益を得て譲渡する意思をもってする動産、不動産若しくは有価証券の有償取得e-Gov原文

誤り
営業性不要

商法第501条次に掲げる行為は、商行為とするe-Gov原文

ひっかけ投機目的の売買等は、商人でない者が一回だけ行っても『商行為』になる。

解説絶対的商行為は、その行為の客観的な性質ゆえに、営業として行うか一回限りかを問わず商行為となる類型である(商法501条)。列挙されるのは、(1)利益を得て譲渡する意思でする動産・不動産・有価証券の有償取得とその譲渡(投機購買とその実行行為)、(2)他人から取得する動産・有価証券の供給契約とその履行のための有償取得(投機売却とその実行行為)、(3)取引所における取引、(4)手形その他の商業証券に関する行為、の4つ。アはこの定義どおりで正しい。イは『商人が営業として行う場合に限り』と営業性を要求している点が誤りで、絶対的商行為はまさにその要件を不要とする類型である。営業として行うときに初めて商行為となる営業的商行為(502条)とは、この一点で分かれる。

補足同じ501条でも、1号の投機購買は不動産を対象に含むが、2号の投機売却(供給契約)の対象は動産・有価証券に限られ不動産は入らない。不動産は不代替物で、契約後に同一物を取得できる保証がないためである。

38営業的商行為

営業的商行為に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 賃貸する意思をもってする動産等の有償取得や、運送・保険・両替その他の銀行取引等は、一回限りの行為であっても当然に商行為となる。
  • 賃貸借・運送・保険・銀行取引・寄託の引受け等の行為(営業的商行為)は、営業として行うときに商行為となる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
営業性が必要

商法第502条次に掲げる行為は、営業としてするときは、商行為とするe-Gov原文

正しい
営業的商行為

商法第502条次に掲げる行為は、営業としてするときは、商行為とするe-Gov原文

ひっかけ運送・保険・銀行業も、一回きりなら商行為にならない。営業として反復してこそ商行為になる。

解説営業的商行為は、営業として(反復継続して)行うときに初めて商行為となる類型である(商法502条)。賃貸を目的とする有償取得・賃借、他人のための製造・加工、電気・ガスの供給、運送、作業・労務の請負、出版・印刷・撮影、場屋取引、両替その他の銀行取引、保険、寄託の引受け、仲立ち・取次ぎ、商行為の代理の引受け、信託の引受け等が並ぶ。アは運送・保険・銀行取引等を『一回限りでも当然に商行為』としており、営業性という要件を落としている点で誤り。イはその要件を正しく述べているので正しい。なお、専ら賃金を得る目的で物を製造し又は労務に従事する者の行為は、502条ただし書により除かれる。

補足502条ただし書は、賃金を得る目的だけで物を作る職人や労務に従事する者の行為を除く。手間賃で内職する者の製造は、形のうえで『製造』でも営業的商行為にはならない。

39附属的商行為

附属的商行為に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 商人がその営業のためにする行為は、商行為とされる。
  • 商人の行為は、その営業のためにするものと推定される。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:1(アー正、イー正)

正しい
商人が営業のためにする行為は、本来の基本的商行為でなくても商行為として扱われる。営業活動に付随する行為を商法の規律に乗せるための規定。

商法第503条第1項商人がその営業のためにする行為は、商行為とするe-Gov原文

正しい
商人の行為が営業のためかどうかを毎回相手方に立証させると取引が不安定になる。そこで商法503条2項は、商人の行為を営業のためのものと推定する。

商法第503条第2項商人の行為は、その営業のためにするものと推定するe-Gov原文

ひっかけ商人が営業のために金を借りる、備品を買う。本業そのものでなくても商行為になる。

解説商人がその営業のためにする行為は、それ自体は絶対的商行為にも営業的商行為にも当たらなくても商行為とされる(附属的商行為。商法503条1項)。営業資金の借入れ、営業用設備や備品の購入など、本来の営業を補助する行為が広く含まれる。アはこの1項どおりで正しい。さらに同条2項は、商人の行為はその営業のためにするものと推定すると定めるため、イも正しい。推定が働く結果、ある行為が営業のためでないと主張する側がその立証責任を負うことになる。

補足推定は反証で覆せる。商人が純粋に私生活のためにした買い物だと証明すれば、その行為は商行為にならず、商行為としての特則も及ばない。

40商行為の代理(非顕名主義)

商行為の代理に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでした行為であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。
  • 商行為の代理においても民法の顕名主義が適用され、本人のためにすることを示さなければ、代理の効果は本人に帰属しない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
非顕名主義

商法第504条商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずるe-Gov原文

誤り
民法の特則

商法第504条商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずるe-Gov原文

ひっかけ商行為の代理では、本人の名を出さなくても効果は本人に届く。顕名主義はここでは引っ込む。

解説商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでした場合でも、その行為は本人に対して効力を生ずる(商法504条本文。非顕名主義)。民法では代理の効果が本人に帰属するには顕名、すなわち本人のためにすることを示すことが必要だが(民法99条)、迅速さと反復性が求められる商取引ではこれを不要とした。アはこの本文どおりで正しい。イは『民法の顕名主義が適用され、示さなければ本人に帰属しない』としており、504条本文がまさにその顕名主義の例外である点で誤り。

補足504条ただし書により、代理人が本人のためにすることを相手方が知らなかったときは、相手方は代理人にも履行を請求できる。判例上、善意の相手方は本人と代理人のどちらにも請求でき、両者は連帯債務に似た関係に立つ。

41契約の申込みを受けた者の諾否通知義務

商人の諾否通知義務に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたとき、諾否の通知をしなくても、その申込みを承諾したものとみなされることはない。
  • 商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく諾否の通知を発しなければならず、これを怠れば承諾したものとみなされる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
みなし承諾

商法第509条第2項その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなすe-Gov原文

正しい
諾否通知義務

商法第509条第1項商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならないe-Gov原文

ひっかけ取引先からいつもの種類の申込みが来て黙っていると、返事をしなくても承諾したことになる。

解説商人が平常取引をする者から、その営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく諾否の通知を発しなければならない(商法509条1項)。この通知を怠ると、その申込みを承諾したものとみなされる(同条2項)。アは『諾否の通知をしなくても承諾とみなされることはない』としており、2項の効果を正面から否定している点で誤り。イは1項・2項を正しくつないでいるので正しい。民法では、申込みに対して沈黙していても承諾にはならないのが原則であり、継続的な取引関係にある商人についてだけ沈黙に承諾の効果を結びつけた特則である。

補足適用されるのは『平常取引をする者』からの『営業の部類に属する』申込みに限られる。初めての相手や、その商人の営業と無関係な申込みには、このみなし承諾は働かない。

42商人の報酬請求権

商人の報酬請求権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。
  • 商人は、特約がなくても相当な報酬を請求できる点で、原則として無償である民法上の委任と異なる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:1(アー正、イー正)

正しい
報酬請求権

商法第512条商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができるe-Gov原文

正しい
有償性

商法第512条商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができるe-Gov原文

ひっかけ商人が頼まれて営業の範囲で動いたなら、報酬の約束がなくても相当額を請求できる。

解説商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる(商法512条)。アはこの条文どおりで正しい。民法上の委任は原則として無償で、報酬を請求するには特約が必要だが(民法648条1項)、営業として有償で役務を提供する商人については、報酬の特約がなくても相当な報酬を請求できるとした。イはこの民法との対比を述べたもので正しい。商人の営業が有償であることを当然の前提に置いた規定である。

補足『他人のために』とは委任契約がある場合に限らない。判例は、商人が他人のために事務管理として行為した場合にも512条の報酬請求を認めている。

43商人間の金銭消費貸借と利息

商人間の金銭消費貸借における利息請求に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 商人間において金銭の消費貸借をしたときであっても、貸主は、利息の特約がなければ利息を請求することができない。
  • 商人間において金銭の消費貸借をしたときは、貸主は、特約がなくても法定利息を請求することができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
法定利息

商法第513条第1項商人間において金銭の消費貸借をしたときは、貸主は、法定利息を請求することができるe-Gov原文

正しい
有償性

商法第513条第1項商人間において金銭の消費貸借をしたときは、貸主は、法定利息を請求することができるe-Gov原文

ひっかけ商人どうしの金の貸し借りは、利息を約束していなくても利息が付く。民法の原則とは逆になる。

解説商人間において金銭の消費貸借をしたときは、貸主は法定利息を請求することができる(商法513条1項)。アは『特約がなければ利息を請求できない』としており、特約がなくても請求できるという1項に反する点で誤り。イはその1項どおりで正しい。民法では消費貸借は特約がなければ無利息が原則だが(民法589条1項)、営利を目的とする商人間ではこれを逆転させた。さらに513条2項は、商人が営業の範囲内で他人のために金銭を立て替えたときも、立替日以後の法定利息を請求できるとする。

補足513条2項は立替金にも法定利息を認める。商人が取引先のために費用を立て替えたら、立て替えた日から利息が走り、約定を待たない。

44商人間の留置権

商人間の留置権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、一定の物又は有価証券を留置することができる。
  • 商人間の留置権は、当事者が別段の意思表示をしても、これを排除することができない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
商人間の留置権

商法第521条商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまでe-Gov原文

誤り
特約による排除

商法第521条当事者の別段の意思表示があるときは、この限りでないe-Gov原文

ひっかけ商人間の留置権は、その債権とは無関係な占有物まで担保に取り込める。ただし契約で外せる。

解説商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者所有の物又は有価証券を留置できる(商人間の留置権・商事留置権。商法521条本文)。アはこの本文どおりで正しい。民事留置権(民法295条)と違い、被担保債権と留置物との個別の牽連関係を要しないのが特徴である。イは『別段の意思表示があっても排除できない』としているが、521条ただし書は当事者の別段の意思表示があるときは生じないと定める任意規定なので誤り。

補足目的物の『物』には不動産も含むとするのが判例(最判平29.12.14)。建築請負の報酬債権を担保するため、施工業者が占有する敷地を留置することもありうる。

45附属的商行為と商行為の代理(総合)

商行為に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 商人の行為は、その営業のためにするものと推定されることはなく、営業のための行為であることは常に主張する側が立証しなければならない。
  • 商行為の代理人が本人のためにすることを示さなかった場合、その行為の効力は本人に帰属しない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:4(アー誤、イー誤)

誤り
推定

商法第503条第2項商人の行為は、その営業のためにするものと推定するe-Gov原文

誤り
非顕名主義

商法第504条商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずるe-Gov原文

ひっかけ『営業のためと推定されない』『顕名がないと本人に帰属しない』。どちらも民法の原則のままで、商法の特則を見落としている。

解説商法は商取引の特性に合わせた民法の特則を重ねて置く。商人の行為は営業のためにするものと推定され(商法503条2項。附属的商行為の推定)、商行為の代理は本人のためにすることを示さなくても本人に効力を生ずる(同504条本文。非顕名主義)。アは『推定されることはなく、常に主張する側が立証する』としており、503条2項の推定を否定している点で誤り。イは『顕名がなければ本人に帰属しない』としており、504条本文がその顕名主義の例外である点で誤り。どちらも商取引の迅速性を理由に、民法の原則を裏返した規定である。

補足503条2項の推定が働くからこそ、相手方は『商人の行為だから商行為』と主張でき、これを争う側が私的行為であることを立証する側に回る。立証責任の所在がこの推定の実益になる。

46商人間の留置権(総合)

商人間の留置権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 商人間の留置権は、被担保債権と留置する物との間に個別的な牽連関係があることを要する。
  • 商人間の留置権は、被担保債権が弁済期にあるか否かにかかわらず行使することができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:4(アー誤、イー誤)

誤り
牽連性不要

商法第521条商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときe-Gov原文

誤り
弁済期

商法第521条その双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときe-Gov原文

ひっかけ牽連性は要らない。だが弁済期は要る。商事留置権はこの二つを取り違えやすい。

解説商人間の留置権(商法521条)の要件は、(1)当事者双方が商人であること、(2)双方のために商行為となる行為によって生じた債権であること、(3)その債権が弁済期にあること、(4)商行為によって自己の占有に属した債務者所有の物・有価証券であること、の4つ。アは『被担保債権と留置物との個別的牽連関係を要する』としているが、商人間の留置権はまさにこの牽連性を不要とする点で民事留置権(民法295条)と異なるため誤り。イは『弁済期にあるか否かにかかわらず行使できる』としているが、(3)のとおり弁済期の到来は必要なので誤り。牽連性は捨てるが弁済期は捨てない、この組み合わせが要件の輪郭になる。

補足弁済期前は、まだ被担保債権を行使できる状態にないため留置権も成立しない。牽連性を緩めて担保を広げる一方、弁済期という時の要件は民事留置権と同じく残している。

47商人の定義

商法上の商人に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 商法上の「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう。
  • 店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者は、商行為を業としない限り、商人とみなされることはない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
商人の定義

商法第4条第1項この法律において「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいうe-Gov原文

誤り
擬制商人

商法第4条第2項店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者又は鉱業を営む者は、商行為を行うことを業としない者であっても、これを商人とみなすe-Gov原文

ひっかけ店を構えて物を売る人は、商行為をしていなくても商人とみなされる。これが擬制商人。

解説自己の名をもって商行為をすることを業とする者が、商法上の「商人」である(固有の商人。商法4条1項)。これとは別に、店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者、又は鉱業を営む者は、商行為を行うことを業としない者であっても商人とみなされる(擬制商人。同条2項)。だからイの「商行為を業としない限り商人とみなされることはない」は誤りで、店舗販売業者はまさにその例外にあたる。アは1項の定義そのままで正しい。商人に該当すれば、商号・商業帳簿・商業登記・支配人等の商法の規定が及ぶことになる。

補足農業・林業のように原始産業を営む者でも、店舗を設けて産物を売れば擬制商人になる。設備を基準にした拡張である。

48商号の選定

商号の選定に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 商人(会社等を除く)は、その氏、氏名その他の名称をもってその商号とすることができる。
  • 商人は、その商号の登記をすることができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:1(アー正、イー正)

正しい
商号選定の自由

商法第11条第1項その氏、氏名その他の名称をもってその商号とすることができるe-Gov原文

正しい
商号の登記

商法第11条第2項商人は、その商号の登記をすることができるe-Gov原文

ひっかけ個人商人は商号を自由に決められ、その登記をするかどうかも本人の選択にゆだねられている。

解説商人(会社及び外国会社を除く)は、その氏、氏名その他の名称をもってその商号とすることができる(商号選定の自由。商法11条1項)。営業の実態と一致しない名称でも原則として選べる。アはこの規定どおりで正しい。イの商号の登記については、個人商人は登記をすることができるとされ(同条2項)、義務ではなく任意である点でこちらも正しい。なお、不正の目的で他の商人と誤認されるおそれのある名称・商号を使用することは禁じられている(同12条)。

補足個人商人の商号登記は任意だが、会社では商号が必ず登記される事項である。同じ「商号の登記」でも個人と会社で扱いが分かれる。

49名板貸人の責任

名板貸しに関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 自己の商号を使用して営業を行うことを他人に許諾した商人は、その商人が営業を行うものと誤認して取引をした者に対し、その他人と連帯して、その取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。
  • 名板貸しをした商人は、許諾を受けた他人がした取引について、一切責任を負わない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
名板貸人の責任

商法第14条自己の商号を使用して営業又は事業を行うことを他人に許諾した商人は、当該商人が当該営業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負うe-Gov原文

誤り
外観への責任

商法第14条当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負うe-Gov原文

ひっかけ名前を貸した側は、その名義を信じて取引した相手に対し、名義を借りた側と並んで支払いの責任を負う。

解説自己の商号を使用して営業又は事業を行うことを他人に許諾した商人(名板貸人)は、その商人が営業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、当該他人と連帯して、その取引によって生じた債務を弁済する責任を負う(名板貸人の責任。商法14条)。アはこの条文どおりで正しい。イは「一切責任を負わない」とするが、許諾した以上は連帯責任を免れないため誤り。営業主体を誤認させる外観を作り出した者に、それを信頼した相手方への責任を負わせる、外観法理(禁反言)の表れである。

補足会社にも同じ規律があり、自己の商号の使用を許諾した会社は会社法9条で連帯責任を負う。名義貸しは商人でも会社でも逃げられない。

50支配人の代理権

支配人の代理権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 支配人は、商人に代わってその営業に関する裁判外の行為のみをする権限を有し、裁判上の行為をする権限はない。
  • 支配人は、商人に代わってその営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
包括的代理権

商法第21条第1項支配人は、商人に代わってその営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有するe-Gov原文

正しい
支配人

商法第21条第1項支配人は、商人に代わってその営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有するe-Gov原文

ひっかけ支配人の代理権は、裁判外だけでなく訴訟などの裁判上の行為にも及ぶ。

解説支配人は、商人に代わってその営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する(商法21条1項)。「裁判外の行為のみ」とするアは、裁判上の行為まで含む包括的代理権を狭く描いている点で誤り。同じ条文を正しく述べたイが正である。支配人の代理権は包括的で、その内容を内部で制限しても善意の第三者には対抗できない(同条3項)。

補足支配人の選任・代理権の消滅は登記事項であり(商法22条)、登記によって対外的に公示される点で、ほかの使用人と扱いが違う。

51支配人の競業の禁止

支配人の競業の禁止に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 支配人は、商人の許可を受けなければ、自ら営業を行うことや、自己又は第三者のためにその商人の営業の部類に属する取引をすること等をしてはならない。
  • 支配人が競業避止義務に違反して取引をしたときは、その取引によって支配人又は第三者が得た利益の額が、商人に生じた損害の額と推定される。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:1(アー正、イー正)

正しい
競業避止義務

商法第23条第1項支配人は、商人の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならないe-Gov原文

商法第23条第1項第1号自ら営業を行うことe-Gov原文

正しい
損害額の推定

商法第23条第2項当該行為によって支配人又は第三者が得た利益の額は、商人に生じた損害の額と推定するe-Gov原文

ひっかけ支配人に課されるのは競業の禁止だけでなく、副業・他社役員への就任なども含む精力分散の禁止である。

解説支配人は、商人の許可を受けなければ、(1)自ら営業を行うこと、(2)自己又は第三者のためにその商人の営業の部類に属する取引をすること、(3)他の商人・会社等の使用人となること、(4)会社の取締役・執行役・業務執行社員となること、をしてはならない(競業避止義務・精力分散防止義務。商法23条1項)。アはこの内容に沿って正しい。違反して競業取引をしたときは、その取引によって支配人又は第三者が得た利益の額が、商人に生じた損害の額と推定される(同条2項)から、損害額の推定を述べるイも正しい。

補足23条1項の禁止は競業取引だけでなく自己営業や他社役員就任にも及ぶが、2項の損害額推定が働くのは(2)の競業取引に違反した場合に限られる。

52代理商の通知義務

代理商に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 代理商は、取引の代理又は媒介をしたときは、遅滞なく、商人に対して、その旨の通知を発しなければならない。
  • 代理商とは、商人のためにその営業の部類に属する取引の代理等をする、その商人の使用人をいう。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
通知義務

商法第27条取引の代理又は媒介をしたときは、遅滞なく、商人に対して、その旨の通知を発しなければならないe-Gov原文

誤り
使用人ではない

商法第27条その商人の使用人でないものをいうe-Gov原文

ひっかけ代理商は社内の従業員ではなく、特定の商人と契約して取引を取り次ぐ独立の事業者である。

解説代理商とは、商人のためにその平常の営業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で、その商人の使用人でないものをいう(商法27条かっこ書)。雇用された使用人ではなく、独立した商人である点が定義の核心なので、「その商人の使用人をいう」とするイは誤り。代理商は、取引の代理・媒介をしたときは遅滞なくその旨を商人に通知しなければならず(同27条)、この通知義務を述べたアは正しい。

補足代理商は通知義務に加えて競業避止義務(商法28条)も負い、取引で生じた債権の弁済を受けるまで占有物を留置できる(同31条)。

53表見支配人

表見支配人に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 会社の本店・支店の事業の主任者であることを示す名称を付した使用人であっても、実際に支配人として選任されていなければ、その者がした裁判外の行為について会社が責任を負うことはない。
  • 支店長等の名称を付した使用人は、実際の代理権の有無にかかわらず、その事業に関し一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなされる(相手方が悪意の場合を除く)。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)

誤り
表見支配人

会社法第13条会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該本店又は支店の事業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなすe-Gov原文

正しい
外観法理

会社法第13条相手方が悪意であったときは、この限りでないe-Gov原文

ひっかけ「支店長」の肩書を信じて取引した相手は、その者に本当は代理権がなくても保護される。

解説会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称(支店長・営業所長等)を付した使用人は、実際には支配人としての代理権がなくても、その本店・支店の事業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなされる(表見支配人。会社法13条本文)。したがって「実際に支配人として選任されていなければ責任を負うことはない」とするアは誤り。みなし規定の内容を正しく述べ、相手方が悪意のときは適用されない点(同条ただし書)も押さえたイが正である。

補足みなされるのは裁判外の行為に限られ、訴訟などの裁判上の行為は含まない。なお個人商人にも商法24条という同趣旨の規定がある。

54支配人の選任(商人・会社)

支配人に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 商人は、支配人を選任し、その営業所において、その営業を行わせることができる。
  • 会社も、支配人を選任し、その本店又は支店において、その事業を行わせることができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:1(アー正、イー正)

正しい
支配人の選任

商法第20条商人は、支配人を選任し、その営業所において、その営業を行わせることができるe-Gov原文

正しい
会社の支配人

会社法第10条支配人を選任し、その本店又は支店において、その事業を行わせることができるe-Gov原文

ひっかけ支配人を置けるのは会社だけではない。個人商人も商法に基づいて支配人を選任できる。

解説支配人は、個人商人も会社も選任することができる。商人については、支配人を選任し、その営業所においてその営業を行わせることができ(商法20条)、アはこれに沿って正しい。会社についても、支配人を選任し、その本店又は支店においてその事業を行わせることができ(会社法10条)、イも正しい。条文の建付けは、個人商人を商法が、会社を会社法が受け持つ形で同じ趣旨を定めている。

補足営業所・本支店の単位で「その営業所において営業を行わせる」のが条文の建て付けで、支配人はその営業所を基準に包括的な代理権を持つ。

55支配人の代理権の制限

支配人の権限に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 支配人の代理権に加えた内部的な制限は、善意の第三者に対しても対抗することができる。
  • 支配人は、他の使用人を選任することはできるが、解任することはできない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:4(アー誤、イー誤)

誤り
制限の対抗不能

商法第21条第3項支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができないe-Gov原文

誤り
使用人の選解任

商法第21条第2項支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができるe-Gov原文

ひっかけ一定額以上の取引には承認が必要、といった社内の枠をはめても、それを知らない取引相手には主張できない。

解説支配人の代理権に加えた内部的な制限は、善意の第三者に対抗することができない(商法21条3項)。取引の安全を守るための定めだから、「善意の第三者に対しても対抗できる」とするアは誤り。また支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる(同条2項)ので、「選任できるが解任はできない」とするイも誤り。代表取締役の代表権の制限が善意の第三者に対抗できないこと(会社法349条5項)と同じ構造である。

補足対抗できないのは「善意」の第三者に対してであり、制限を知っていた相手には主張できる。21条2項では使用人の解任権まで支配人に認められている。

56支配人の競業避止義務(総合)

支配人の競業避止義務に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 支配人は、商人の許可がなくても、自己のためにその商人の営業の部類に属する取引をすることができる。
  • 支配人が競業避止義務に違反して取引をしても、商人に生じた損害の額が推定されることはない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)

誤り
競業避止義務

商法第23条第1項支配人は、商人の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならないe-Gov原文

誤り
損害額の推定

商法第23条第2項当該行為によって支配人又は第三者が得た利益の額は、商人に生じた損害の額と推定するe-Gov原文

ひっかけ支配人の競業には許可がいる。そして許可なく競業すれば、得た利益がそのまま損害と見積もられる。

解説支配人は商人の許可を受けなければ競業取引等をしてはならない(競業避止義務。商法23条1項)から、「許可がなくても自己のために競業取引ができる」とするアは誤り。さらに、違反して競業取引をしたときは、その取引によって支配人又は第三者が得た利益の額が、商人に生じた損害の額と推定される(同条2項)ので、「損害の額が推定されることはない」とするイも誤り。損害額の立証は難しいため、違反者が得た利益を損害額とみなして、商人の立証負担を軽くしている。

補足推定にとどまるので、商人の損害が利益額より大きい・小さいと反証する余地は残る。取締役の競業違反(会社法423条2項)にも同じ利益額の推定が働く。

57売買

売買に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
  • 売買は、財産権の移転を約するだけで成立し、代金を支払うことの合意は売買の要素ではない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)

正しい
売買

民法第555条売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずるe-Gov原文

誤り
有償性

民法第555条売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずるe-Gov原文

ひっかけ財産権を渡す約束だけでは売買にならない。代金を払う約束が抜けると別の契約になる。

解説売買は、当事者の一方(売主)がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方(買主)がこれに対してその代金を支払うことを約することによって効力を生ずる(民法555条)。アはこの条文どおりで正しい。代金(金銭)を支払う約束が売買の要素であり、これを欠けば売買ではない。だからイの「代金支払の合意は要素ではない」は誤り。無償で財産権を移すなら贈与(549条)、金銭以外の財産権どうしの交換なら交換(586条)になる。

補足対価が金銭でなく別の物だと交換(586条)に変わる点が分かれ目。なお売買の規定は、売買以外の有償契約にも性質が許す限り準用される(559条)。

58請負

請負に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 請負は、当事者の一方がある仕事に従事することを約する契約であり、仕事の完成は契約の要素ではない。
  • 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
仕事の完成

民法第632条請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずるe-Gov原文

正しい
請負

民法第632条請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずるe-Gov原文

ひっかけ請負で約束するのは「働くこと」ではなく「仕上げること」。完成しなければ目的を達しない。

解説アは「仕事に従事することを約する契約で、仕事の完成は要素ではない」とするが、請負は仕事を完成することを約する契約なので(民法632条)、誤り。イはその632条の定義どおりで、請負人が仕事を完成し、注文者がその結果に対して報酬を支払うことを約して成立する、として正しい。完成という結果が目的(結果債務)である点が、事務処理そのものを目的とする委任との違いになる。

補足結果を出さないと意味がないので、報酬は原則として仕事の目的物の引渡しと同時払い(633条)。完成物に不具合があれば請負人は契約不適合責任を負う(559条・562条以下)。

59受任者の注意義務

委任における受任者の注意義務に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
  • 委任が無償である場合、受任者は自己の財産に対するのと同一の注意をもって処理すれば足り、善管注意義務までは負わない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
善管注意義務

民法第644条受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負うe-Gov原文

誤り
有償無償を問わない

民法第644条受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負うe-Gov原文

ひっかけタダで引き受けたかどうかで注意義務は変わらない。無償でも善管注意のまま。

解説受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意(善管注意義務)をもって、委任事務を処理する義務を負う(民法644条)。アはこのとおりで正しい。ここで肝心なのは、委任が無償であっても善管注意義務が軽減されない点である。だからイの「無償なら自己の財産と同一の注意で足りる」は誤り。無償の受寄者が自己の財産に対するのと同一の注意で足りる(659条)のとは扱いが異なる。受任者はほかに報告義務(645条)、受取物引渡義務(646条)等も負う。

補足委任は特約がなければ報酬を請求できず無償が原則だが(648条1項)、その無償の委任でも善管注意義務を負う。同じ無償でも自己の財産と同一の注意で足りる寄託(659条)と対照すると差がはっきりする。

60委任の解除(第1章・biz2-ch1-0060)

委任の解除に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 委任契約は、やむを得ない事由がある場合に限り、解除することができる。
  • 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
任意解除権

民法第651条第1項委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができるe-Gov原文

正しい
信頼関係

民法第651条第1項委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができるe-Gov原文

ひっかけ委任の解除に「やむを得ない事由」は要らない。いつでも解除できるのが原則。

解説アは「やむを得ない事由がある場合に限り解除できる」とするが、委任は各当事者がいつでもその解除をすることができるので(民法651条1項。任意解除権)、誤り。イはこの任意解除権を正しく述べており、正しい。委任が当事者間の信頼関係を基礎とするため、いつでも解除できるのが原則とされている。ただし、相手方に不利な時期の解除や、受任者の利益(報酬目的を除く)をも目的とする委任の解除のときは、やむを得ない事由がない限り相手方の損害を賠償しなければならない(同条2項)。

補足解除自体は自由でも、相手に不利な時期の解除などでは損害賠償が伴う(651条2項)。「解除できる」ことと「無償で解除できる」ことは別。

61委任の解除(総合)

委任の解除に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 委任を解除した者は、相手方に不利な時期に解除したときであっても、相手方の損害を賠償する必要はない。
  • 委任は、当事者の一方が解除を申し出ても、相手方の同意がなければ解除することができない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:4(アー誤、イー誤)

誤り
損害賠償

民法第651条第2項相手方の損害を賠償しなければならないe-Gov原文

誤り
任意解除権

民法第651条第1項委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができるe-Gov原文

ひっかけ「不利な時期でも賠償不要」と「同意がないと解除できない」は、651条の1項と2項を逆に読んだ誤り。

解説アは「不利な時期に解除しても損害賠償は不要」とするが、相手方に不利な時期の解除は、やむを得ない事由がない限り損害を賠償しなければならないので(民法651条2項)、誤り。イは「相手方の同意がなければ解除できない」とするが、委任は各当事者が相手方の同意なくいつでも解除できるので(同条1項)、誤り。委任は任意解除を認めつつ、相手方の不測の損害は賠償で埋め合わせる仕組みになっている。

補足解除には相手の同意が要らない(単独でできる、1項)反面、不利な時期の解除には賠償義務が付く(2項)。同意は不要だが賠償は必要、という非対称が651条の構造。

62債務不履行による損害賠償の要件

債務不履行による損害賠償に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであっても、債権者は損害賠償を請求することができる。
  • 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
免責事由の見落とし

民法第415条第1項債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでないe-Gov原文

正しい
原則の確認

民法第415条第1項債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときe-Gov原文

ひっかけアは『帰責事由がなくても賠償できる』と言い切るが、415条1項ただし書がそこを否定する。

解説415条1項の損害賠償は、債務者が本旨に従った履行をしないか、履行が不能であることから出発する。ただし同項ただし書で、その不履行が契約その他の発生原因および取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものなら、債務者は責任を免れる。アは帰責事由がなくても賠償できるとするが、このただし書を無視しているため誤り。イは本旨不履行で賠償を請求できるとする本文そのままで正しい。賠償の可否を分けるのは、本文の成立要件ではなく、ただし書の免責事由が働くかどうかである。

補足415条1項の帰責事由は、旧法の『過失』ではなく『契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念』に照らして判断される。

63履行に代わる損害賠償(填補賠償)

履行に代わる損害賠償に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 債務の履行が不能であるときは、債権者は、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
  • 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したときは、債権者は、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:1(アー正、イー正)

正しい
填補賠償の要件確認

民法第415条第2項債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができるe-Gov原文

正しい
填補賠償の要件確認

民法第415条第2項債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したときe-Gov原文

ひっかけアは1号、イは2号にそのまま乗る。填補賠償が動くのは履行遅滞ではなくこの限定列挙の場面だけ。

解説415条2項は、損害賠償を請求できる場合のうち履行に代わる損害賠償(填補賠償)を請求できる場面を、3つに限って列挙する。1号が履行不能のとき、2号が債務者が履行を拒絶する意思を明確に表示したとき、3号が契約が解除されまたは解除権が発生したときである。アは1号の履行不能、イは2号の明確な履行拒絶にそのまま当たるため、いずれも正しい。単なる履行遅滞では填補賠償に進めず、この3場面のどれかに乗って初めて本来の給付に代わる賠償を求められる。

補足3つ目の場面は『解除した後』だけでなく、解除権が発生した時点でもよい(415条2項3号)。現実に解除する前から填補賠償を請求できる。

64同時履行の抗弁

同時履行の抗弁に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 相手方の債務が弁済期にないときであっても、当事者の一方は自己の債務の履行を拒むことができる。
  • 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
ただし書の見落とし

民法第533条相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでないe-Gov原文

正しい
同時履行の抗弁の原則

民法第533条自己の債務の履行を拒むことができるe-Gov原文

ひっかけ自分が先に履行する約束なら、相手の弁済期前に『同時履行だ』とは言えない。アはそこを取り違えている。

解説533条本文は、双務契約の当事者の一方が、相手方が履行を提供するまで自己の債務の履行を拒めるとする。ただし書はここに例外を置き、相手方の債務がまだ弁済期にないとき、つまり自分が先に履行すべき立場のときは拒めないとする。アは弁済期にない相手にも履行を拒めるとするが、このただし書に反するため誤り。イは履行提供まで自己の履行を拒めるとする本文どおりで正しい。先履行義務を負う者には、同時履行の抗弁の出番がない。

補足弁済期の前後だけでなく、先履行特約があれば抗弁は使えない。逆に相手が一度提供して引っ込めた後は、再び抗弁が復活する。

65同時履行の抗弁の対象

同時履行の抗弁に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 同時履行の抗弁は、片務契約の当事者の一方が相手方の履行提供まで自己の債務の履行を拒むことを認める制度である。
  • 同時履行の抗弁における相手方の債務の履行には、債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行も含まれる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
同時履行の抗弁は、売買の代金支払債務と目的物引渡債務のように、双方の債務が対価関係に立つ双務契約で公平を保つための制度。片務契約では相手方の反対債務との牽連関係が前提にならないため、533条の対象を片務契約とする記述は出発点で誤る。

民法第533条双務契約の当事者の一方はe-Gov原文

正しい
533条は単に本来の給付だけでなく、履行に代わる損害賠償債務の履行も相手方の履行に含めている。契約関係が損害賠償の段階に移っても、対価的牽連関係が残る場面では同時履行の抗弁を問題にできる。

民法第533条債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含むe-Gov原文

ひっかけアの誤りは『片務契約』の一語。533条は双務契約の当事者だけを名宛人にしている。

解説533条は冒頭で『双務契約の当事者の一方は』と定め、対価的な債務を負い合う当事者の間でだけ同時履行の抗弁を認める。アは片務契約を主体とするが、条文の前提と違うため誤り。イは、相手方が提供すべき『債務の履行』に履行に代わる損害賠償の債務の履行も含むとする点で、533条本文のかっこ書(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む)どおり正しい。本来の給付が填補賠償に姿を変えても、抗弁の対象から外れない。

補足かっこ書のおかげで、相手の債務が填補賠償に変わっても抗弁は消えない。だから一方の目的物滅失(債権者有責など)で填補賠償化しても、なお同時履行を主張できる。

66危険負担(債務者主義)

危険負担に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。
  • 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)

誤り
効果の裏返し

民法第536条第1項当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときe-Gov原文

正しい
危険負担の原則

民法第536条第1項債権者は、反対給付の履行を拒むことができるe-Gov原文

ひっかけアとイは同じ事実から正反対の結論を出す。536条1項が採るのは『拒める』側。

解説536条1項は、当事者双方の責めに帰することができない事由で債務が履行不能になったとき、債権者は反対給付の履行を拒めるとする。売買目的物が双方無責で滅失すれば、買主は代金支払を拒める。イはこの効果どおりで正しい。アは同じ場面で『反対給付の履行を拒むことができない』とし、効果をちょうど裏返しているため誤り。条文が選んだのは、危険を債務者側に負わせる結論である。

補足ここで債権者は反対給付を『拒める』にとどまり、契約が自動で消えるわけではない。完全に関係を清算するには、別途542条1項1号の無催告解除が要る。

67危険負担(債権者の帰責事由)

危険負担に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 債権者の責めに帰すべき事由による履行不能の場合、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときでも、これを債権者に償還する必要はない。
  • 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)

誤り
償還義務の見落とし

民法第536条第2項自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならないe-Gov原文

正しい
債権者主義の確認

民法第536条第2項債権者は、反対給付の履行を拒むことができないe-Gov原文

ひっかけアが落としているのは後段の償還義務。代金は払わせ、債務者が浮かせた分は返す、その両方がある。

解説536条2項は、債権者の責めに帰すべき事由で履行不能になった場面を扱う。前段で、債権者は反対給付の履行を拒めないとする。買主の責めで目的物が滅失しても、買主はなお代金を支払わなければならない。イはこの前段どおりで正しい。後段はさらに、債務者が履行を免れたことで利益を得たら、それを債権者に償還しなければならないとする。アはこの償還を不要とするため誤り。代金は満額払わせつつ、債務者が浮かせた費用は債権者に戻す、という二段構えになっている。

補足償還の対象は、債務者が履行を免れたことで現実に得た利益(仕入を免れた原価や転用益など)に限られ、反対給付の全額ではない。

68催告による解除(第1章・biz2-ch1-0068)

催告による契約の解除に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 当事者の一方がその債務を履行しない場合、相手方は、催告をすることなく直ちに契約の解除をすることができる。
  • 履行の催告をした場合でも、その期間を経過した時における債務の不履行が契約および取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、契約の解除をすることができない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)

誤り
催告要件の見落とし

民法第541条相当の期間を定めてその履行の催告をしe-Gov原文

正しい
軽微性の例外

民法第541条債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでないe-Gov原文

ひっかけアは催告という入口を省く誤り。イの軽微性は、催告した後でも解除を止める出口の例外。

解説541条本文は、当事者の一方が債務を履行しない場合に、相手方が相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないとき解除できるとする。アは催告なしに直ちに解除できるとするが、本文の催告手続を飛ばしているため誤り。イは、催告期間を経過した時点の不履行が契約および取引上の社会通念に照らして軽微なら解除できないとするただし書どおりで正しい。催告を踏んでも、残った不履行が軽微なら解除という重い効果には進ませない。

補足軽微かどうかは、期間を『経過した時』の不履行を基準に判断する(541条ただし書)。催告時に軽微でも、その後さらに不履行が広がれば解除に進める。

69催告によらない解除(全部)

催告によらない契約の解除に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したときは、債権者は、相当の期間を定めて催告をした後でなければ契約の解除をすることができない。
  • 債務の全部の履行が不能であるときは、債権者は、催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
無催告解除の見落とし

民法第542条債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したときe-Gov原文

正しい
無催告解除の事由

民法第542条前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができるe-Gov原文

ひっかけ全部の履行をはっきり拒んだ相手に催告は無意味。だから2号は無催告解除を認める。アはそこに催告を足して誤り。

解説542条1項は、催告しても意味がない場面を並べ、その場合は前条の催告なしに直ちに解除できるとする。1号が債務の全部の履行が不能なとき、2号が債務者が全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したときである。イは1号の全部履行不能にそのまま当たるため正しい。アは2号の全部履行拒絶の場面で催告を要求するが、まさに催告が無意味だから無催告解除を認めた条文の趣旨に反するため誤り。履行を全部拒む相手に期間を切って催告しても、結果は変わらない。

補足全部の履行不能・全部の履行拒絶は1項1号・2号で要件はそれだけだが、これが『一部』になると3号で『残存部分のみでは契約目的を達せられない』ことまで要る。

70催告によらない解除(一部・定期行為)

催告によらない契約の解除に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 債務の一部の履行が不能である場合は、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないときに限らず、債権者は常に無催告で契約全部の解除をすることができる。
  • 特定の日時に履行をしなければ契約の目的を達することができない場合に、債務者が履行をしないでその時期を経過したときは、債権者は催告をすることなく直ちに解除をすることができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
目的達成不能要件の脱落

民法第542条残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないときe-Gov原文

正しい
定期行為の解除

民法第542条債務者が履行をしないでその時期を経過したときe-Gov原文

ひっかけアの誤りは『常に』の一語。一部不能で全部解除するには、残った部分だけでは目的を達せないことが要る。

解説542条1項3号は、一部の履行が不能な場合でも、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないときに限り、無催告で全部解除を認める。アは一部不能なら常に全部解除できるとし、この目的達成不能の要件を落としているため誤り。イは4号の定期行為、つまり特定の日時や一定の期間内に履行しなければ目的を達せない契約で、その時期を徒過したときに無催告解除できるとする条文どおりで正しい。一部不能には目的達成不能という絞りがかかり、定期行為では時期の徒過そのものが解除事由になる。

補足目的達成不能に至らない一部不能なら、542条2項1号でその一部だけを無催告解除できる。全部解除か一部解除かが残存部分の意味で分かれる。

71解除制度の横断整理

契約の解除に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 債務者が債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合は、残存する部分のみで契約目的を達せられるかにかかわらず、債権者は催告によらず直ちに全部の解除をすることができる。
  • 催告による解除の場合、催告において相手方が定めるべきは相当の期間であり、その期間内に履行がないことが解除の前提となる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
目的達成不能要件の脱落

民法第542条債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないときe-Gov原文

正しい
催告解除の核

民法第541条その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができるe-Gov原文

ひっかけアは『残存部分で目的を達せられるか』を無視して全部解除を認める誤り。3号はそこを関門にしている。

解説542条1項3号は、債務者が一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合でも、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないときに限って、無催告での全部解除を認める。アは残存部分で目的を達せられるかを問わず常に全部解除できるとするため、この絞りを欠いて誤り。イは541条本文を言い換えたもので、催告で定めるべきは相当の期間であり、その期間内に履行がないことが解除の前提だとする点で正しい。一部不能でも一部拒絶でも、全部解除に進むには残存部分での目的達成不能が共通の関門になる。

補足一部拒絶でも目的達成不能まで至らなければ、542条2項2号でその一部のみを無催告解除できる。全部解除と一部解除の分岐点が残存部分の評価にある。

72代理行為の要件及び効果

代理人がした意思表示の効果に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、まず代理人に効力が生じ、その後本人へ移転する。
  • 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
条文は『直接に』効力を生ずるとし、移転構成を採らない。

民法第99条第1項本人に対して直接にその効力を生ずるe-Gov原文

正しい
代理の基本効果は本人への直接帰属である。

民法第99条第1項本人に対して直接にその効力を生ずるe-Gov原文

ひっかけ効果は本人に『直接』生じる。代理人を経由して移転するのではない。

解説代理人が権限内で本人のためにすることを示して(顕名して)した意思表示は、本人に対して直接にその効力を生じる(民法99条1項)。アは『まず代理人に効力が生じ、その後本人へ移転する』とするが、条文は『直接に』効力を生じるとしており、いったん代理人に帰属させてから移す構成はとらない。よってアは誤り。イは効果が本人に直接生じるとしており正しい。要件は権限内であることと顕名で、この二つがそろえば効果は本人に帰属する。

補足効果が直接帰属する反面、意思表示の瑕疵や善意・悪意は原則として代理人を基準に判断される(101条)。

73本人のためにすることを示さない意思表示

顕名のない意思表示に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときであっても、その意思表示は常に代理人自身のためにしたものとみなされる。
  • 代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、原則として自己のためにしたものとみなされる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
ただし書により相手方が知り又は知り得たときは本人効果となる。

民法第100条代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときe-Gov原文

正しい
顕名がなければ相手方は本人効果を予期できないため。

民法第100条自己のためにしたものとみなすe-Gov原文

ひっかけ『常に』が引っかけ。相手方が事情を知っていれば、顕名がなくても本人に効果が及ぶ。

解説顕名を欠いた意思表示は、原則として代理人が自己のためにしたものとみなされる(民法100条本文)。イはこの原則どおりで正しい。アは『相手方が本人のためと知り、又は知ることができたときであっても、常に代理人自身のためとみなされる』とするが、100条ただし書は相手方が知り又は知り得たときは99条1項を準用するとしており、その場合は本人に効果が帰属する。『常に』としたアは、このただし書の例外を消している点で誤り。

補足顕名は明示でなくてもよく、取引の状況から本人のためと相手方に分かれば足りるとされる。

74代理権授与の表示による表見代理

代理権授与の表示による表見代理に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 代理権授与の表示があった場合、第三者がその他人が代理権を与えられていないことを過失によって知らなかったときであっても、表示をした者は責任を負う。
  • 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
ただし書が善意無過失の第三者のみを保護する趣旨である。

民法第109条第1項過失によって知らなかったときは、この限りでないe-Gov原文

正しい
表示を信頼した第三者を保護するための表見代理である。

民法第109条第1項第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者e-Gov原文

ひっかけ本文だけ読むと過失ある第三者も保護されそうだが、ただし書がそこを切り落とす。

解説民法109条1項は、第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その表示した代理権の範囲内でその他人が第三者とした行為について責任を負うと定める。だからイは条文どおりで正しい。ただし同項ただし書が、第三者が代理権を与えられていないことを知り、または過失で知らなかったときは責任を負わないとして例外を置く。アは第三者が過失で知らなかった場合でも表示者が責任を負うとするが、これはただし書が責任を否定する場面そのものなので誤り。本文だけを読むとアも正しく見えるが、ただし書が善意無過失の第三者だけを保護対象に絞っている。

補足授権表示の範囲を越えた行為については、109条2項が110条と重なる形で、第三者に正当な理由があるときに限り表示者の責任を認める。

75権限外の行為の表見代理

権限外の行為の表見代理に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときは、表見代理の規定が準用される。
  • 代理人がその権限外の行為をした場合には、第三者が権限があると信ずべき正当な理由を有していなくても、本人は当然に責任を負う。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
基本代理権ある者の越権を信頼した第三者を保護する。

民法第110条権限があると信ずべき正当な理由があるときe-Gov原文

誤り
正当な理由が準用の要件であり、それを欠けば保護されない。

民法第110条代理人がその権限外の行為をした場合e-Gov原文

ひっかけ越権行為そのものではなく、第三者の『正当な理由』が本人を巻き込む引き金になる。

解説民法110条は、代理人が権限外の行為をした場合に、第三者が代理人に権限があると信ずべき正当な理由があるときは109条1項本文を準用すると定める。アはこの正当理由を要件として準用を認めており正しい。イは正当理由がなくても本人が当然に責任を負うとするが、110条は正当な理由を準用の入口に据えているので、これを欠けば本人は責任を負わない。よってイは誤り。本人を縛るのは越権の事実ではなく、第三者側に正当理由が備わったときだけである。

補足110条が働く前提として、代理人には何らかの基本代理権が必要で、まったく代理権のない者の行為はこの条文では救われない。

76代理権消滅後の表見代理

代理権消滅後の表見代理に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。
  • 代理権消滅後の行為について、第三者が過失によって代理権消滅の事実を知らなかったときであっても、本人は責任を負う。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
代理権が消滅したことを知らない第三者の信頼を保護する。

民法第112条第1項代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負うe-Gov原文

誤り
善意無過失の第三者のみを保護する趣旨である。

民法第112条第1項過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでないe-Gov原文

ひっかけ『消滅を知らなかった』だけでは足りず、知らなかったことに過失がないことまで要る。

解説民法112条1項は、代理権が消滅した後でも、消滅前の代理権の範囲内でその他人が第三者とした行為について、代理権消滅の事実を知らなかった第三者に対して本人が責任を負うと定める。アはこの範囲どおりで正しい。イは第三者が過失で消滅を知らなかった場合でも本人が責任を負うとするが、同項ただし書は過失で知らなかった第三者を保護対象から外す。だからイは誤り。守られるのは消滅を知らず、かつ知らないことに過失もなかった第三者に限られる。

補足消滅後にさらに従前の権限を越える行為がされた場合は、112条2項が正当な理由ある第三者を別枠で保護する。

77代理行為の要件と顕名

代理行為の要件に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、相手方の認識を問わず一切本人に効力を生じない。
  • 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
ただし書により例外的に本人効果が認められる。

民法第100条前条第一項の規定を準用するe-Gov原文

正しい
代理の基本効果を定めた規定である。

民法第99条第1項その権限内において本人のためにすることを示してした意思表示e-Gov原文

ひっかけ顕名がなくても、相手方が代理だと分かっていた・分かり得たなら効果は本人へ飛ぶ。

解説民法99条1項により、代理人が権限内で本人のためにすることを示してした意思表示は本人に直接効力を生じる。イはこの基本効果どおりで正しい。これに対しアは、顕名を欠いた意思表示は相手方の認識を問わず一切本人に効力を生じないとする。しかし100条は顕名なき表示を原則として代理人自身のものとみなしつつ、ただし書で前条1項を準用し、相手方が本人のためにする意思を知り、または知り得たときは本人に効力を生じさせる。アは『一切』生じないと言い切る点でこの例外を消しており誤り。

補足100条の準用は99条1項だけで、署名代理のように相手方が本人名義を信じた場合の処理とは別の話になる。

78表見代理規定の準用関係

表見代理規定の準用に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 権限外の行為の表見代理は、代理権授与の表示による表見代理の本文の規定を準用する形で定められている。
  • 代理権授与の表示による表見代理の責任は、第三者が代理権不存在を過失によって知らなかった場合にも常に発生する。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)

正しい
授権表示型の責任構造を越権型にも及ぼす立法形式である。

民法第110条前条第一項本文の規定はe-Gov原文

誤り
ただし書が過失ある第三者を保護対象から除外する。

民法第109条第1項過失によって知らなかったときは、この限りでないe-Gov原文

ひっかけ準用されるのは『本文』だけ。ただし書の免責は条文を移しても消えない。

解説民法110条は、その条文上『前条第一項本文の規定は…準用する』という形で、109条1項本文を権限外の行為に引き写している。アはこの立法形式をそのまま述べており正しい。一方イは、109条の責任が第三者の過失を問わず常に発生するとするが、109条1項ただし書は過失で代理権不存在を知らなかった第三者を保護から外す。だからイは誤り。準用されるのは本文であって、ただし書が定める主観要件は準用の有無とは別に第三者ごとに判断される。

補足条文番号でいえば、109条本文を借りるのが110条、112条本文を借りるのが112条2項という関係になっている。

79表見代理の主観要件

表見代理の主観要件に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 代理権授与の表示による表見代理では、第三者が代理権を与えられていないことを知っていたときであっても、表示をした者は責任を負う。
  • 代理権消滅後の表見代理では、第三者が過失によって代理権消滅の事実を知らなかったときは、本人は責任を負わない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
ただし書が悪意の第三者を保護対象から除外する。

民法第109条第1項代理権を与えられていないことを知りe-Gov原文

正しい
善意無過失の第三者のみを保護する趣旨である。

民法第112条第1項第三者が過失によってその事実を知らなかったときe-Gov原文

ひっかけ悪意は109条で、過失は112条で落ちる。落とし方の条文が違うだけで結論は同じ。

解説表見代理が第三者を保護する条文は、いずれも第三者の主観に条件を付けている。アは、代理権授与表示の場面で第三者が代理権不存在を知っていた(悪意)ときでも表示者が責任を負うとするが、109条1項ただし書は悪意の第三者を真っ先に保護から外すので誤り。イは、代理権消滅後の場面で第三者が過失で消滅を知らなかったときは本人が責任を負わないとしており、112条1項ただし書どおりで正しい。悪意なら109条で、過失なら112条で、いずれも保護の外に置かれる。

補足保護に必要な『善意無過失』のうち善意の立証は第三者側、無過失をめぐる事情は本人側が争うのが通常の構図になる。

80代理の効果帰属と顕名の例外

代理の効果帰属に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、相手方が善意無過失であっても、常に本人に対して直接効力を生ずる。
  • 代理人がその権限外の行為をした場合に、第三者に正当な理由があるときは、第三者との間でした行為について本人が責任を負いうる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
本人効果は相手方が悪意・有過失のとき例外的に生ずるにすぎない。

民法第100条本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなすe-Gov原文

正しい
基本代理権者の越権を信頼した第三者を保護する。

民法第110条第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときe-Gov原文

ひっかけ顕名なしの原則は本人ではなく代理人に効果がつく。本人に飛ぶのは相手方が悪意・有過失のときだけ。

解説民法100条本文は、顕名を欠いた意思表示を自己(代理人)のためにしたものとみなす。アは、顕名がなくても相手方が善意無過失なら常に本人に直接効力が生じるとするが、本人に効果が及ぶのはただし書で相手方が悪意・有過失だった場合に限られ、原則と例外を逆にしているので誤り。イは、110条により権限外行為でも第三者に正当な理由があれば本人が責任を負いうるとしており正しい。顕名の場面は『相手方が代理と気づいたか』、越権の場面は『正当な理由があるか』で、見るべき要素が入れ替わる。

補足100条ただし書の『相手方が悪意・有過失』と、110条の『第三者に正当理由あり』は、効果が本人へ向くための条件が正反対になっている。

81無権代理と本人の追認の効力

代理権を有しない者がした契約と本人の追認に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人が追認をしなくても、当然に本人に対してその効力を生ずる。
  • 無権代理行為の追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)

誤り
条文は追認しなければ効力を生じないと定める

民法第113条第1項本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じないe-Gov原文

正しい
原則として遡及効が認められる

民法第116条追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずるe-Gov原文

ひっかけ『当然に効力を生ずる』と書いてあれば、無権代理ではまず疑ってよい。

解説民法113条1項は、代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人が追認しなければ本人に効力を生じないと定める。アは追認がなくても当然に本人へ効力が生じるとするが、条文はその逆なので誤り。イは、116条が追認は別段の意思表示がなければ契約の時にさかのぼって効力を生じるとする点をそのまま述べており正しい。無権代理は宙に浮いた状態にあり、本人の追認という一手が入って初めて、しかも契約時に遡って有効になる。

補足本人が追認を拒絶すると、相手方は117条により無権代理人へ履行または損害賠償を請求できる立場に移る。

82追認の遡及効と第三者の権利

無権代理行為の追認の遡及効に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 追認の遡及効によって第三者の権利を害することはできない。
  • 追認は、別段の意思表示がない場合でも、追認をした時から将来に向かってのみ効力を生ずる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
ただし書が第三者保護を定める

民法第116条ただし、第三者の権利を害することはできないe-Gov原文

誤り
原則は遡及効である

民法第116条契約の時にさかのぼってその効力を生ずるe-Gov原文

ひっかけ原則は契約時への遡及。『将来効だけ』と書いてあれば原則を裏返している。

解説民法116条本文は、追認は別段の意思表示がないときは契約の時にさかのぼって効力を生じると定める。イは追認が将来に向かってのみ効力を生じるとするが、原則は遡及効なので誤り。アは、同条ただし書が遡及効によっても第三者の権利を害することはできないとする点どおりで正しい。遡及で過去の契約が有効になっても、その遡及はすでに利害関係に入った第三者の権利を踏み越える形では働かない。

補足ここでいう害されない第三者は、追認前に当事者から目的物について権利を取得した者のように、遡及で立場を覆される者を指す。

83追認の相手方への対抗

無権代理行為の追認またはその拒絶の対抗に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 追認またはその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。
  • 相手方が追認の事実を知ったときであっても、本人は相手方に対して追認を対抗することはできない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)

正しい
相手方への意思表示が原則

民法第113条第2項その相手方に対抗することができないe-Gov原文

誤り
事実を知れば例外的に対抗できる

民法第113条第2項ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでないe-Gov原文

ひっかけ原則は相手方への意思表示。ただし相手方が事実を知ってしまえば、その通知は要らなくなる。

解説民法113条2項本文は、追認またはその拒絶は相手方に対してしなければ相手方に対抗できないと定める。アはこの原則どおりで正しい。イは、相手方が追認の事実を知ったときでも本人は対抗できないとするが、同項ただし書は相手方がその事実を知ったときはこの限りでないとして、相手方に直接していなくても対抗を認める。だからイは誤り。原則は相手方への意思表示だが、相手方がすでに知ってしまえばその一手は不要になる。

補足113条2項が向き先を相手方に定めるのに対し、無権代理人本人にした追認も相手方が知れば同様に対抗できると扱われる。

84無権代理人の責任の内容

無権代理人の責任に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
  • 無権代理人の責任は、本人の追認を得たときであっても免れることはできない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
選択権は相手方にある

民法第117条第1項相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負うe-Gov原文

誤り
追認を得れば責任は生じない

民法第117条第1項本人の追認を得たときを除きe-Gov原文

ひっかけ追認を得れば責任は消える。「追認しても免れない」は条文と真逆。

解説他人の代理人として契約した者は、自己の代理権を証明したとき、または本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従って履行または損害賠償の責任を負う(民法117条1項)。この『除き』が責任を切る2つの事由で、代理権の証明か本人の追認のどちらかがあれば無権代理人は何も負わない。アはこの条文どおりで正しい。イは『追認を得ても責任を免れない』とするが、追認はまさに除外事由なので逆。本人が追認すれば契約は本人に帰属し、無権代理人が肩代わりする場面自体がなくなる。だからアー正、イー誤。

補足履行か損害賠償かは相手方が選ぶ。無権代理人の側に選択権はない。

85無権代理人の責任の選択権

無権代理人の責任における選択に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 無権代理人が履行または損害賠償のいずれの責任を負うかは、無権代理人自身の選択に従う。
  • 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したときは、相手方に対して履行または損害賠償の責任を負わない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)

誤り
選択権は相手方にある

民法第117条第1項相手方の選択に従いe-Gov原文

正しい
証明は除外事由にあたる

民法第117条第1項自己の代理権を証明したときe-Gov原文

ひっかけ選ぶのは追及する相手方。無権代理人が履行か賠償かを選べるわけではない。

解説無権代理人が履行と損害賠償のどちらを負うかは、相手方の選択による(民法117条1項)。条文は『相手方の選択に従い』と定めており、選ぶのは責任を追及する側であって、責任を負う無権代理人ではない。アは選択権を無権代理人自身に置くため誤り。イは『自己の代理権を証明したとき』を責任の除外事由とする条文どおりで正しく、証明できればそもそも無権代理ではないから責任は生じない。組み合わせはアー誤、イー正。

補足代理権を証明できれば有権代理だったことになり、117条の責任は最初から問題にならない。

86無権代理人の責任が生じない場合

無権代理人の責任が適用されない場合に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、無権代理人の責任の規定は適用しない。
  • 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたときであっても、無権代理人の責任の規定が適用される。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
相手方の悪意は適用除外

民法第117条第2項第1号代理権を有しないことを相手方が知っていたときe-Gov原文

誤り
制限を受けていれば適用除外

民法第117条第2項第3号行為能力の制限を受けていたときe-Gov原文

ひっかけ行為能力の制限は責任を外す3号の事由。「制限があっても負う」は除外を見落としている。

解説無権代理人の責任には適用除外があり、(1)相手方が代理権のないことを知っていたとき、(2)相手方が過失で知らなかったとき、(3)無権代理人が行為能力の制限を受けていたときは、責任規定が適用されない(民法117条2項各号)。アは1号の悪意の相手方をそのまま述べており正しい。イは『行為能力の制限を受けていても適用される』とするが、3号がまさにこれを除外しているので誤り。制限行為能力者は重い無過失責任から外される。よってアー正、イー誤。

補足2号の例外として、相手方が過失で知らなくても、無権代理人が自分に代理権のないことを知っていたときは責任を負う(117条2項2号ただし書)。

87無権代理と無権代理人の責任の総合

無権代理に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
  • 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたときであっても、無権代理人は相手方に対して履行または損害賠償の責任を負う。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
本人の追認が効力の要件

民法第113条第1項本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じないe-Gov原文

誤り
相手方の悪意は適用除外

民法第117条第2項第1号代理権を有しないことを相手方が知っていたときe-Gov原文

ひっかけ悪意の相手方には責任を追及させない。「知っていても負う」は1号の除外に反する。

解説代理権のない者が他人の代理人としてした契約は、本人が追認しなければ本人に効力を生じない(民法113条1項)。これは『本人に帰属するか』という効力の問題。アはこの条文どおりで正しい。イは無権代理人の責任の話で、相手方が代理権のないことを知っていたとき(悪意)でも責任を負うとするが、117条2項1号がこの場合を適用除外にしているので誤り。悪意の相手方は保護に値しないため責任追及できない。効力(113条)と責任(117条)は別の条文で動く。アー正、イー誤。

補足本人への効力(113条)と無権代理人個人の責任(117条)は別問題。本人が追認を拒んでも、相手方が善意なら無権代理人への117条責任は残る。

88追認の遡及効と本人の効力の総合

無権代理行為とその追認に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 無権代理行為の追認は、別段の意思表示があっても、常に契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。
  • 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約について、本人が追認をすると、本人に対してその効力を生ずる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)

誤り
別段の意思表示があれば遡及しない

民法第116条別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずるe-Gov原文

正しい
追認すれば本人に効力が生じる

民法第113条第1項本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じないe-Gov原文

ひっかけ「常に遡及」は116条の『別段の意思表示がないときは』を飛ばしている。

解説無権代理行為の追認は、別段の意思表示がないときに契約の時にさかのぼって効力を生ずる(民法116条)。『別段の意思表示がないときは』が条件で、当事者が遡及しないと合意すれば遡らない。アは『別段の意思表示があっても常に遡及する』とするが、これでは当事者の別段の合意を無視することになり誤り。イは本人が追認すれば契約が本人に帰属するという113条1項の裏返しで正しい。アー誤、イー正。

補足遡及効が認められても、それによって第三者の権利を害することはできない(116条ただし書)。

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