問1物権変動と即時取得
物権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。
- イ.取引行為によって平穏かつ公然に動産の占有を始めた者が、善意でかつ過失がないときは、即時にその動産について権利を取得する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
物権は『合意だけ』で動きます(対抗には登記等が別途必要)。
物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって効力を生ずる(意思主義。民法176条。第三者対抗には不動産は登記、動産は引渡しが必要)。また、取引行為によって平穏・公然に動産の占有を始めた者が善意・無過失であるときは、即時にその動産について権利を取得する(即時取得。同192条)。無権利者から動産を譲り受けても、取引の安全のため一定要件で権利取得が認められる。動産取引に特有の保護である。
問2留置権
留置権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。
- イ.占有が不法行為によって始まった場合であっても、占有者は留置権を行使することができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
盗んだ物などに留置権は認められません。
他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権(例:修理代金)を有するときは、その弁済を受けるまでその物を留置できる(留置権。民法295条1項。ただし債権が弁済期にないときは留置できない)。もっとも、占有が不法行為によって始まった場合には留置権は成立しない(同条2項)。盗品の占有者に留置権を認めるのは不当だからである。公平の見地から認められる法定担保物権だが、占有の正当性が前提になる。
問3質権
質権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.質権者は、目的物の占有を移転せず、債務者のもとに目的物を残したまま、これを担保とすることができる。
- イ.質権者は、受け取った物を占有し、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
質権は『物を預かる』担保、抵当権は『預からない』担保です。
質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する(民法342条)。質権は目的物を質権者に引き渡して占有を移す担保である点が、占有を移さない抵当権(同369条)と大きく異なる。質権者が占有を続けることで弁済を間接的に強制する機能もある。占有移転の要否で質権と抵当権を区別する。
問4共有物の使用
共有物の使用に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
- イ.共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
共有物は『持分に応じて』使え、独占すれば対価を払います。
共有とは、数人が一つの物を共同で所有する状態である。各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる(民法249条1項)。共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う(同条2項)。また各共有者は善良な管理者の注意をもって共有物を使用しなければならない(同条3項)。共有物の利用に関する基本ルールである。
問5所有権の取得時効
所有権の取得時効に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.20年間、所有の意思をもって、平穏かつ公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
- イ.占有の開始の時に善意かつ無過失であっても、所有権の取得時効には常に20年の占有を要する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
取得時効の期間は、占有開始時の善意無過失で変わります。
所有権の取得時効は、占有開始時の主観的態様により期間が異なる。20年間、所有の意思をもって、平穏かつ公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する(長期取得時効。民法162条1項)。占有開始の時に善意でかつ過失がなかったときは、10年間の占有で所有権を取得する(短期取得時効。同条2項)。『20年が原則、善意無過失なら10年』と覚える。
問6不動産に関する物権変動の対抗要件
不動産に関する物権の変動に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.不動産に関する物権の得喪及び変更は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
- イ.不動産の物権変動は、当事者間の意思表示だけでは効力を生じず、登記をしなければ当事者間でも効力を生じない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
登記は『第三者に主張する』ための要件で、当事者間では不要です。
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない(民法177条)。物権変動自体は当事者の意思表示によって生じる(同176条。意思主義)ので、登記は効力要件ではなく対抗要件である。すなわち、当事者間では登記なしで物権変動の効力が生じるが、第三者(二重譲受人等)に物権取得を主張するには登記が必要となる。
問7即時取得
動産の即時取得に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.取引行為によって、平穏かつ公然と動産の占有を始めた者は、善意かつ無過失であるときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
- イ.即時取得は、無権利者から動産を取得した場合であっても、取引の安全のため取得者を保護する制度である。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
事情を知らずに動産を買った人は、無権利者からでも権利を取得できます。
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利(所有権・質権等)を取得する(即時取得・善意取得。民法192条)。占有に公信力を認め、動産取引の安全を図る制度である。要件は、(1) 動産、(2) 取引行為による取得、(3) 平穏・公然・善意・無過失、(4) 占有の取得である。盗品・遺失物については回復請求の特則(同193条)がある。
問8動産物権譲渡の対抗要件
動産に関する物権の譲渡の対抗要件に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。
- イ.動産に関する物権の譲渡は、その動産の登記を備えなければ、第三者に対抗することができない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 動産物権譲渡の対抗要件を正しく述べている。(根拠:民法第178条)
- イ.誤り
- 動産の対抗要件を登記とする点が条文に反し誤り。(根拠:民法第178条)
対抗要件の取り違え
民法第178条は動産に関する物権の譲渡の対抗要件を引渡しと定める。不動産の対抗要件である登記とは異なり、動産では引渡しによって第三者に対抗できる点を区別して押さえる。
問9動産物権譲渡の対抗要件の効果
動産に関する物権の譲渡の対抗要件に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.動産に関する物権の譲渡は、引渡しがなくても、当事者間の意思表示のみで第三者に対抗することができる。
- イ.動産に関する物権の譲渡について、引渡しを備えていない譲受人は、その物権の取得を第三者に対抗することができない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 引渡しなしに第三者へ対抗できるとする点が条文に反し誤り。(根拠:民法第178条)
- イ.正しい
- 引渡しを欠く場合に第三者へ対抗できないことを正しく述べている。(根拠:民法第178条)
対抗要件不要との誤り
民法第178条は動産物権譲渡の対抗要件を引渡しと定める。意思表示のみで当事者間の物権変動は生じるが、第三者に対抗するには引渡しが必要であり、これを欠く譲受人は第三者に対抗できない。