問1保証契約の成立(要式性)
保証契約に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
- イ.保証契約は、当事者の口頭の合意のみで効力を生じ、書面によることを要しない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 補充的な責任 → 主債務不履行が前提
民法第446条第1項「保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う」e-Gov原文
- イ.誤り
- 軽率な保証を防ぐ → 要式契約
民法第446条第2項「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない」e-Gov原文
ひっかけ保証は重い責任を負わせる契約だからこそ、口約束では足りず書面が要求される。
解説アは保証人の責任内容、イは保証契約の成立形式を問う。アについて、保証人は主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う(民法446条1項)。主債務を補う補充的な責任で、アは条文どおり正しい。イは『口頭の合意のみで効力を生じる』とするが、保証契約は書面でしなければ効力を生じない(同条2項)。頼まれて安易に引き受けたのに後で重い負担を負う事故が多いため、保証人を保護する趣旨で要式契約とされている。口頭だけの保証は無効で、イは誤り。よって『アー正、イー誤』。
補足書面の代わりに、その内容を記録した電磁的記録によってした保証契約も書面によるものとみなされ有効に成立する(446条3項)。電子契約での保証も明文で認められている。
問2連帯保証(催告・検索の抗弁)
保証に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.連帯保証人は、債権者から債務の履行を請求されたとき、まず主たる債務者に催告すべき旨を請求する催告の抗弁を主張することができる。
- イ.単純保証人は、債権者が主たる債務者に催告をした後でも、主たる債務者に弁済の資力がありかつ執行が容易であることを証明すれば、まず主たる債務者の財産に執行するよう求めることができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 連帯 → 補充性が後退
民法第454条「保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない」e-Gov原文
- イ.正しい
- 補充性 → 先に主債務者へ
民法第453条「保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない」e-Gov原文
ひっかけ「保証人なら誰でも、まず主債務者へと言える」と読むと、アを正にしてしまう。連帯保証人にはその抗弁がない。
解説保証人がいきなり債権者から請求されたとき、「まず主債務者に催告してくれ」と言えるのが催告の抗弁(民法452条)、「主債務者に資力があり執行も容易だから先にそちらへ」と言えるのが検索の抗弁(同453条)である。どちらも、保証はあくまで主債務者が払えないときの備えだという補充性から出てくる。ところが連帯保証人は主債務者と連帯して債務を負担するため、この前二条の権利を持たない(同454条)。だからアのように連帯保証人が催告の抗弁を主張する、というのは成り立たない。イは単純保証人が453条の検索の抗弁を行使する場面そのもので、資力と執行容易を証明すれば先に主債務者の財産へ執行させられる。連帯か単純かという一点で、アとイの結論が裏返る。
補足454条が奪うのは「前二条の権利」、つまり催告(452条)と検索(453条)の二つだけ。連帯保証人でも、主債務が時効消滅すればその援用や付従性による抗弁までなくなるわけではない。
問3抵当権(順位・効力の及ぶ範囲)
抵当権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による。
- イ.抵当権の効力は、設定行為に別段の定めがない限り、抵当不動産に付加して一体となっている物には及ばない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 公示 → 登記順で優劣
民法第373条「同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による」e-Gov原文
- イ.誤り
- 一体物 → 抵当権の効力内
民法第370条「その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ」e-Gov原文
ひっかけイの「付加して一体となっている物には及ばない」は、原則と例外を逆さにした言い回し。原則は及ぶ方。
解説同一の不動産には抵当権を複数設定でき、その優劣(順位)は登記の前後で決まる(民法373条)。先に登記した抵当権が上位に立つという、登記による公示の表れである。アはこれをそのまま述べているので正しい。イは効力の物的範囲の話で、抵当権の効力は抵当不動産に付加して一体となっている物(付加一体物)に及ぶのが原則である(同370条)。設定行為で別段の定めを置けば別だが、何もなければ「及ぶ」が出発点なので、「及ばない」と言い切るイは誤り。順位を聞く肢と、効力の届く範囲を聞く肢が並んでいる。
補足付加一体物には及ぶ一方、抵当不動産から分離・搬出された動産には原則として効力が及ばなくなる。「一体かどうか」が及ぶ範囲の境目になる。
問4保証債務の付従性(範囲・加重)
保証債務の範囲に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.保証債務は、主たる債務の元本に限られ、主たる債務に関する利息や損害賠償には及ばない。
- イ.主たる債務の目的または態様が保証契約の締結後に加重されたときは、保証人の負担もこれに応じて加重される。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
- ア.誤り
- 付従性 → 主債務に従たるものに及ぶ
民法第447条第1項「保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する」e-Gov原文
- イ.誤り
- 保証人保護 → 事後の加重は及ばない
民法第448条第2項「主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない」e-Gov原文
ひっかけ「保証は元本だけ」「主債務が増えれば保証も増える」のどちらも条文と逆で、アもイも誤りになる。
解説保証債務は主たる債務に付き従う(付従性)。その範囲も主債務だけにとどまらず、主債務に関する利息・違約金・損害賠償その他従たるものすべてに及ぶ(民法447条1項)。だから「元本に限られ利息や損害賠償には及ばない」とするアは誤り。もう一方、保証人は保証を引き受けた時点の負担を前提にしている。そこで保証契約の締結後に主たる債務の目的または態様が加重されても、保証人の負担はそれに連動して重くならない(同448条2項)。アとイは方向が逆で、付従性で範囲は従たるものまで広がるのに、締結後の一方的な加重は保証人に届かない。両方とも「保証人の負担はこう動く」という思い込みを外したところに正解がある。
補足448条には1項もあり、主債務より重い保証は主債務の限度に減縮される。締結後の加重を遮断する2項と合わせ、保証人の負担が主債務を超えない仕組みになっている。
問5委託を受けた保証人の求償権
保証人の求償に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.主たる債務者の委託を受けて保証をした保証人が弁済をしたときは、主たる債務者に対し、そのために支出した財産の額の求償権を有する。
- イ.保証人は、その保証債務についてのみ、違約金または損害賠償の額を約定することができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 委託+弁済 → 主債務者に求償
民法第459条第1項「主たる債務者に代わって弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させる行為」e-Gov原文
民法第459条第1項「主たる債務者に対し、そのために支出した財産の額」e-Gov原文
- イ.正しい
- 保証人独自の約定 → 自己の保証債務に限る
民法第447条第2項「保証人は、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる」e-Gov原文
ひっかけイの「保証債務についてのみ」が引っかけどころ。保証人が約定で重くできるのは自分の保証債務だけで、主債務ではない。
解説主たる債務者から頼まれて(委託を受けて)保証した者が、弁済その他自己の財産で主債務を消滅させたときは、本来支払うべき主たる債務者に対し、そのために支出した財産の額を求償できる(民法459条1項)。アはこの立替払いの清算をそのまま述べていて正しい。イは別の論点で、保証人は主債務の内容そのものは動かせないが、自分の保証債務についてだけは違約金や損害賠償の額をあらかじめ約定できる(同447条2項)。これも正しい。弁済後に主債務者へ向ける求償と、保証人が自分の債務に上乗せできる約定とは、別々の条文が支えている。
補足委託を受けた保証人は、一定の場合に弁済前でも求償できる(460条の事前求償)。委託がない保証人だと求償の範囲はさらに狭まり、委託の有無が清算の手厚さを分ける。
問6法定地上権
法定地上権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.土地とその上の建物が別々の所有者に属する場合に、土地に抵当権が設定されて実行されたときは、その建物のために法定地上権が成立する。
- イ.土地とその上の建物が同一の所有者に属し、その一方に抵当権が設定されて実行され、所有者を異にするに至ったときは、その建物について地上権が設定されたものとみなされる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 同一所有が要件 → 別所有では不成立
民法第388条「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において」e-Gov原文
- イ.正しい
- 建物存続のため → 法定地上権
民法第388条「その建物について、地上権が設定されたものとみなす」e-Gov原文
ひっかけアの「土地に抵当権が付いて実行されれば成立」では足りない。設定時に土地も建物も同じ所有者だったか、がもう一つの関門。
解説土地と建物は別個の不動産なので、抵当権の実行で両者の所有者が分かれると、建物は敷地を使う権利を失い、取り壊さざるを得なくなりかねない。これを避けるのが法定地上権で、抵当権設定時に土地と建物が同一の所有者に属していた場合に、実行で所有者が分かれたとき建物のために地上権が設定されたものとみなす(民法388条)。出発点は「設定時に同一所有者」であること。アは土地と建物がもともと別々の所有者という前提なので、この要件を欠き、法定地上権は成立しない。イは同一所有者の土地建物の一方に抵当権が設定され、実行で所有者を異にするに至った場面そのもので、388条の効果どおり建物に地上権が成立する。アとイの分かれ目は、抵当権設定の時点で所有者が一人だったかどうかにある。
補足もともと別所有者なら、建物側は最初から賃借権なり地上権なりの敷地利用権を持っているはずで、法定地上権で補う必要がない。要件が「同一所有者」に絞られるのはそのためである。
問7抵当権の内容(非占有担保・優先弁済権)
抵当権の内容に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.抵当権者は、債務者または第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
- イ.地上権および永小作権も、抵当権の目的とすることができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 非占有担保 → 優先弁済
民法第369条第1項「抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する」e-Gov原文
- イ.正しい
- 不動産以外の物権 → 一部は抵当可
民法第369条第2項「地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる」e-Gov原文
ひっかけアの「占有を移転しないで」は抵当権の核心。ここを質権と取り違えなければ、アは素直に正と読める。
解説抵当権は、目的物の占有を債権者に移さずに担保にでき、債務が弁済されないとき目的不動産から他の債権者に先立って優先弁済を受けられる権利である(民法369条1項)。アはこの定義をそのまま述べていて正しい。占有を移さないので、債務者は担保に入れた不動産をそのまま使い続けられ、ここが引渡しを要する質権との違いになる。イは目的物の話で、抵当権の目的は不動産に限らず、地上権および永小作権も対象にできる(同条2項)。これも正しい。占有を残したまま優先弁済という性質と、目的にできる権利の広がりが、369条の1項と2項に分かれて置かれている。
補足もっとも優先弁済が及ぶ利息その他の定期金は、満期となった最後の2年分に限られる(375条)。後順位抵当権者や一般債権者の取り分を守るための上限で、利息が無制限に優先するわけではない。
問8弁済による代位
弁済による代位に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する。
- イ.債権者に代位した者は、自己の求償権の範囲とは無関係に、債権者が有していた一切の権利を無制限に行使することができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 弁済による代位
民法第499条「債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する」e-Gov原文
- イ.誤り
- 求償権の範囲
民法第501条第2項「債権者に代位した者が自己の権利に基づいて債務者に対して求償をすることができる範囲内」e-Gov原文
ひっかけイの「求償権の範囲とは無関係に無制限に」が誤り。代位による権利行使は、自分が債務者に求償できる範囲内に限られる(501条2項)。
解説保証人や物上保証人など、債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する(弁済による代位。民法499条)。アはこの文言どおりで正しい。代位した者は債権の効力および担保として債権者が有していた一切の権利を行使できるが(同501条1項)、その行使は、自己の権利に基づいて債務者に求償できる範囲内に限られる(同条2項)。立替えた分を回収するための制度だからである。イは求償権の範囲と無関係に一切の権利を無制限に行使できるとする点で誤り。
補足債権の一部だけを代位弁済したときは、代位者は債権者の同意を得たうえで、弁済額に応じて債権者とともに権利を行使することになる(502条1項)。全部弁済の場合と扱いが分かれる。
問9催告の抗弁と連帯保証人について生じた事由
保証に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.保証人は、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたときであっても、まず主たる債務者に催告すべき旨を請求することができる。
- イ.連帯保証人について生じた事由は、更改があった場合であっても、主たる債務者に対して一切効力を生じない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
- ア.誤り
- 抗弁の例外
民法第452条「主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない」e-Gov原文
- イ.誤り
- 絶対効の準用
民法第458条「第四百三十八条、第四百三十九条第一項、第四百四十条及び第四百四十一条の規定は、主たる債務者と連帯して債務を負担する保証人について生じた事由について準用する」e-Gov原文
ひっかけアは催告の抗弁に例外がない前提、イは連帯保証人の事由が主債務者に全く及ばない前提で、どちらも言いすぎ。452条ただし書の例外と458条の準用があるため両方誤り。
解説単純保証人は、まず主たる債務者に催告すべき旨を請求できる催告の抗弁を有する(民法452条本文)。ただし主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、またはその行方が知れないときは、この抗弁を主張できない(同条ただし書)。アはこの例外を無視して破産の場合にも催告の抗弁を行使できるとする点で誤り。また連帯保証人について生じた事由のうち、更改(438条)・相殺(439条1項)・混同(440条)は、主たる債務者について生じた事由として準用される(同458条)。イは更改があっても主たる債務者に一切効力を生じないとする点で、この準用に反し誤り。
補足連帯保証人には452条の催告の抗弁・453条の検索の抗弁がそもそも認められていない(454条)。アで問題になる催告の抗弁は、連帯でない単純保証人の話である。
問10抵当権と物上代位(規定の準用)
抵当権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.抵当権には、先取特権の物上代位に関する規定その他の留置権・先取特権に関する一定の規定が準用されることはない。
- イ.抵当権については、先取特権の物上代位に関する規定(民法304条)等が準用される。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 準用
民法第372条「第二百九十六条、第三百四条及び第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する」e-Gov原文
- イ.正しい
- 物上代位
民法第372条「第二百九十六条、第三百四条及び第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する」e-Gov原文
ひっかけ目的物が焼けて保険金請求権に化けても、抵当権はその金銭債権を追いかけられる。
解説抵当権には、留置権・先取特権に関する一定の規定が準用される(民法372条が296条・304条・351条を準用)。中心となるのが先取特権の物上代位を定めた304条の準用であり、抵当不動産が火災で焼失して火災保険金請求権に変わった場合や、第三者の不法行為で損害賠償請求権が生じた場合に、抵当権者はその金銭債権の上に抵当権を及ぼし優先弁済を受けられる。アは準用が及ばないとする点で誤り、イは物上代位の準用を正しく述べており正しい。
補足ただし304条1項ただし書により、物上代位を行使するには保険金等が債務者へ払い渡される前に差押えをしておく必要がある。払渡し後では特定性が失われ、行使できない。
問11留置権の内容
留置権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有していても、弁済を受けるまでその物を留置することはできない。
- イ.他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
解答・解説を見る
正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 留置権
民法第295条第1項「その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる」e-Gov原文
- イ.正しい
- 牽連性
民法第295条第1項「他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる」e-Gov原文
ひっかけ修理代をもらうまで品物を渡さない、この当然の主張が留置権として法定されている。
解説他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる(留置権。民法295条1項本文)。時計の修理人が修理代金の支払を受けるまで時計を留置できる、という場面である。アは「留置することはできない」と否定するので誤り、条文どおりのイが正しい。被担保債権と物との牽連性(その物に関して生じた債権であること)が要件になる点が、牽連性を要しない商人間の留置権(商法521条)と異なる。
補足商人間の留置権(商法521条)は牽連性が要らない代わり、留置物が債務者の所有であることを要する点で民法の留置権と分かれる。
問12留置権の成立要件
留置権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.占有が不法行為によって始まった場合であっても、占有者はその物について留置権を行使することができる。
- イ.留置権は、被担保債権が弁済期にあるか否かにかかわらず、行使することができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
- ア.誤り
- 不法占有の除外
民法第295条第2項「前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない」e-Gov原文
- イ.誤り
- 弁済期
民法第295条第1項「その債権が弁済期にないときは、この限りでない」e-Gov原文
ひっかけ盗品を握っていても、弁済期前の債権を抱えていても、留置権は立ち上がらない。
解説留置権には成立を妨げる消極的要件がある。被担保債権が弁済期にないときは留置権は生じず(民法295条1項ただし書)、占有が不法行為によって始まった場合にも認められない(同条2項)。アは「不法行為で占有を始めても留置権を行使できる」とするので2項に反し誤り、イは「弁済期にあるか否かにかかわらず行使できる」とするのでただし書に反し誤りで、両方誤りとなる。盗んだ物に費用を投じても留置権が生じないのが2項の典型例である。
補足占有開始時は善意でも、後に他人の物と知りながら占有を続けた者には、295条2項を類推して留置権を否定するのが判例である。
問13保証人の責任
保証に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
- イ.保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 保証債務
民法第446条第1項「保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う」e-Gov原文
- イ.正しい
- 要式契約
民法第446条第2項「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない」e-Gov原文
ひっかけ保証は口約束では成り立たない。書面でなければそもそも効力が生じない。
解説保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う(民法446条1項。保証債務。付従性・補充性をもつ)。アはこのとおりで正しい。そしてイのいうとおり、保証契約は、書面でしなければその効力を生じない(同条2項。要式契約)。電磁的記録でされたときは書面によるものとみなされる(同条3項)。契約は本来、合意だけで成立するのが原則だが、安易・情義的な保証から保証人を守るため、保証だけは書面が効力要件とされている。
補足書面要件をさらに進めて、事業のための貸金等債務を個人が保証するときは、締結日の前1か月以内に作成した公正証書で保証意思を表示しないと効力を生じない(465条の6)。
問14保証契約の要式性
保証契約の方式に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.保証契約は、口頭の合意のみによって、その効力を生ずる。
- イ.保証契約は、書面でしなければその効力を生じない(保証人保護のため要式契約とされている)。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 要式契約
民法第446条第2項「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない」e-Gov原文
- イ.正しい
- 保証人保護
民法第446条第2項「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない」e-Gov原文
ひっかけアとイは同じ条文の表と裏。「口頭で効力が生じる」と言った瞬間に446条2項に反する。
解説アは「口頭の合意のみで効力を生ずる」とするが、保証契約は書面でしなければその効力を生じないので(民法446条2項)、誤り。イはこの要式性を正しく述べており、正しい。契約は原則として諾成(合意だけで成立)だが、保証契約はその例外で、書面を効力要件とする。保証人が軽い気持ちで保証をして予想外の責任を負う事態を防ぎ、保証意思を明確にして保証人を保護する趣旨である。電磁的記録でされたときは書面とみなされる(同条3項)。
補足諾成が原則の契約の中で、書面を効力要件とするのは保証のほかに書面によらない贈与(550条で各当事者が解除できる)など限られた場面しかない。保証はその数少ない要式契約の一つ。
問15委託を受けた保証人の求償権(第9章・biz2-ch9-0015)
委託を受けた保証人の求償権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.主たる債務者の委託を受けて保証をした保証人が、主たる債務者に代わって弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させる行為をしたときは、主たる債務者に対して求償権を有する。
- イ.求償できる範囲は、支出した財産の額がその債務の消滅行為によって消滅した主たる債務の額を超える場合であっても、常に支出した財産の額の全額である。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
解答・解説を見る
正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 求償権の発生を確認
民法第459条「主たる債務者に代わって弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させる行為」e-Gov原文
- イ.誤り
- 求償範囲の上限を裏返す
民法第459条「その財産の額がその債務の消滅行為によって消滅した主たる債務の額を超える場合にあっては、その消滅した額」e-Gov原文
ひっかけ支出額が消滅した債務額を上回ったら、求償できるのは消滅した額まで。括弧書が上限になる。
解説459条1項は、主たる債務者の委託を受けた保証人が弁済その他の債務消滅行為をしたとき、その債務者に対して求償権を取得すると定める。アはこの本文どおりで正しい。イが扱うのは求償の範囲で、原則は支出した財産の額だが、同項の括弧書が上限を置く。支出額が消滅した主たる債務の額を超える場合は「その消滅した額」が限度になる。たとえば代物弁済で時価より高い物を渡しても、超過分まで債務者に負担させることはできない。だから「常に支出した全額を求償できる」とするイは誤り、組み合わせはアー○・イー×。
補足求償権には法定利息や避けられなかった費用も含められる(442条2項を準用する459条2項)。
問16抵当権の内容と目的物
抵当権の内容に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.地上権及び永小作権は、抵当権の目的とすることができない。
- イ.抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 条文は目的とできると定めており、できないとするのは裏返しの誤り。
民法第369条第2項「地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる」e-Gov原文
- イ.正しい
- 抵当権は占有を移転せず優先弁済を受ける権利である。
民法第369条第1項「債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産」e-Gov原文
ひっかけ抵当権の目的を不動産だけと思うとアに引っかかる。369条2項に地上権・永小作権が並んでいる。
解説抵当権は、債務者または第三者が占有を移転しないで担保に供した不動産について、他の債権者に先立って弁済を受ける権利である(369条1項)。目的物の占有は設定者の手元に残り、抵当権者は占有を取らない非占有担保という点が、占有を取る質権との分かれ目になる。目的物は不動産に限られず、369条2項は地上権および永小作権も抵当権の目的とすることができると定める。だからアの『地上権・永小作権は目的とできない』は条文の裏返しで誤り。イは1項の文言そのままで正しい。
補足抵当権を設定できるのは不動産・地上権・永小作権で、動産には抵当権を設定できない。動産を担保に取るなら質権(342条)になる。
問17抵当権の効力の及ぶ範囲
抵当権の効力の及ぶ範囲に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産に付加して一体となっている物に及ぶ。
- イ.設定行為に別段の定めがある場合は、付加一体物に抵当権の効力が及ぶ範囲について例外が認められる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 条文どおり付加して一体となっている物に及ぶ。
- イ.正しい
- ただし書に別段の定めがある場合は限りでないとある。
ひっかけ370条は本文だけでなくただし書まで読む条文。別段の定めで効力範囲を変えられるかが分かれ目。
解説370条本文は、抵当権は抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産に付加して一体となっている物に及ぶと定める。建物を除く理由は、土地の抵当権が地上の建物まで巻き込まないようにするためで、アはこの本文どおりで正しい。イが指す『設定行為に別段の定めがある場合』は、370条ただし書が効力範囲の例外として明記している場面なので、これも正しい。本文の原則とただし書の例外が同居している条文で、両方とも条文に書かれている。
補足ただし書の例外は別段の定めだけではなく、債務者の行為について詐害行為取消請求ができる場合も挙げられている(370条ただし書)。例外は二つある。
問18抵当権の効力と詐害行為
抵当権の効力の及ぶ範囲に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.債務者の行為について詐害行為取消請求をすることができる場合であっても、付加一体物には常に抵当権の効力が及ぶ。
- イ.抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産に付加して一体となっている物に及ぶ。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- ただし書で詐害行為取消請求できる場合は限りでないとある。
民法第370条「詐害行為取消請求をすることができる場合」e-Gov原文
ひっかけ詐害行為取消請求ができる場面は370条ただし書の例外そのもの。『常に及ぶ』と書いてあれば誤り。
解説370条ただし書は、付加一体物への効力について二つの場合を例外としている。一つは設定行為に別段の定めがある場合、もう一つは債務者の行為について詐害行為取消請求ができる場合である。アは『詐害行為取消請求ができる場合であっても常に及ぶ』とするが、その場合はまさにただし書で効力が及ばないとされる場面なので誤り。イは370条本文の文言どおり、抵当地上の建物を除き付加一体物に及ぶとしており正しい。
補足詐害行為取消請求(424条)で取り消せるような付加であれば、抵当権者を不当に利することになるため効力を及ぼさない、という利益調整がただし書の趣旨にあたる。
問19法定地上権の成立要件
法定地上権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.法定地上権が成立する場合、地代は当事者の協議が調わないときであっても、裁判所が定めることはできない。
- イ.土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなされる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 条文は当事者の請求により裁判所が定めるとしている。
民法第388条「地代は、当事者の請求により、裁判所が定める」e-Gov原文
- イ.正しい
- 条文どおり建物について地上権が設定されたものとみなす。
民法第388条「その建物について、地上権が設定されたものとみなす」e-Gov原文
ひっかけ地代を誰が決めるかが論点。協議が調わなければ裁判所が定める(388条2項)。
解説388条2項は、法定地上権の地代について、当事者の請求により裁判所が定めると規定する。協議が調わないときに裁判所が決められない、とするアは2項の文言と正反対で誤り。イは388条1項そのもので、土地と建物が同一所有者に属し、その一方に抵当権が設定され、実行により所有者を異にするに至ったときは、建物について地上権が設定されたものとみなされる。設定したものではなく、法律上当然にみなされるのが法定地上権の仕組みになる。
補足388条が成立要件とするのは抵当権設定時点で土地上に建物が存在し、かつ土地建物が同一所有者であること。更地に抵当権を設定した後に建てた建物には、原則として法定地上権は成立しない。
問20法定地上権の対象
法定地上権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.法定地上権が成立する場合、地上権が設定されたものとみなされるのは土地についてである。
- イ.法定地上権は、土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合に成立し得る。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 条文は建物について地上権が設定されたものとみなすとしている。
民法第388条「その建物について、地上権が設定されたものとみなす」e-Gov原文
- イ.正しい
- 条文は同一の所有者に属する場合と定める。
ひっかけ地上権が成立するのは『建物について』。土地についてと書いてあるアは対象が入れ替わっている。
解説法定地上権でみなされる地上権が成立するのは建物についてである(388条1項)。土地について地上権が設定されたものとみなす、とするアは対象が逆で誤り。地上権は土地を利用するための権利だが、保護されるのは抵当権実行で土地から切り離されてしまう建物の側であり、その建物のために土地利用権を与える構造になる。イは388条1項の出発点である『土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合』を述べており正しい。
補足建物のための土地利用権という点で、約定の地上権(265条)や建物所有目的の借地権と機能は同じ。違いは当事者の合意ではなく抵当権実行を機に法律が当然に発生させる点にある。
問21質権の内容
質権の内容に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.質権者は、目的物の占有を取得しなくても、優先弁済を受ける権利を有する。
- イ.質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 条文は受け取った物を占有しと定めており占有を要する。
- イ.正しい
- 条文どおり物を占有し優先弁済を受ける権利を有する。
民法第342条「債務者又は第三者から受け取った物を占有し」e-Gov原文
ひっかけ質権は『物を占有して』はじめて権利になる。占有なしで優先弁済、と書いてあるアは中身を抜いている。
解説342条は、質権者が債権の担保として債務者または第三者から受け取った物を占有し、その物について他の債権者に先立って弁済を受けると定める。受け取った物の占有が質権の内容そのものなので、占有を取得しなくても優先弁済を受けられるとするアは誤り。イは342条の文言どおりで正しい。なお質権設定は引渡しによって効力を生ずる要物契約であり(344条)、占有を移すことが成立の前提にもなっている。
補足344条により質権の設定は目的物を引き渡すことで効力を生ずる。当事者が合意しただけでは足りず、現実の引渡しがいる点が、合意だけで成立する抵当権との違いになる。
問22質権と抵当権の対比
質権及び抵当権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.質権者は、債務者又は第三者から受け取った物を占有することが、その権利の内容に含まれる。
- イ.抵当権者は、目的不動産の占有を移転して債権の担保とする。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 条文は受け取った物を占有しと定める。
民法第342条「債務者又は第三者から受け取った物を占有し」e-Gov原文
- イ.誤り
- 条文は占有を移転しないで債務の担保に供すると定める。
民法第369条第1項「占有を移転しないで債務の担保に供した不動産」e-Gov原文
ひっかけ質権は占有を取り、抵当権は占有を取らない。イが抵当権に『占有を移転』と書いた時点で誤り。
解説質権は債務者または第三者から受け取った物を占有することが内容に含まれ(342条)、占有を担保の手段とする。アはこの占有担保としての性質を述べており正しい。これに対し抵当権は、369条1項が占有を移転しないで担保に供した不動産について、と定めるとおり占有を設定者に残す非占有担保である。占有を移転して担保とする、とするイは抵当権の性質と逆で誤り。両者は占有を移すか否かで真っ向から分かれる。
補足目的物の範囲も対照的で、質権は動産・不動産・財産権(362条)まで広く取れるのに対し、抵当権は不動産・地上権・永小作権に限られ動産には設定できない。
問23先取特権の内容
先取特権の内容に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.先取特権者は、法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
- イ.先取特権者は、当事者の契約によってのみ成立し、法律の規定によっては生じない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 条文どおり債務者の財産について優先弁済を受ける。
民法第303条「その債務者の財産について、他の債権者に先立って」e-Gov原文
- イ.誤り
- 条文はこの法律その他の法律の規定に従いと定める。
ひっかけ先取特権は契約で作るものではない。『契約によってのみ成立』と書いてあるイは成立の根拠を取り違えている。
解説303条は、先取特権者がこの法律その他の法律の規定に従い、債務者の財産について他の債権者に先立って弁済を受けると定める。アは303条の文言どおりで正しい。一方イは『当事者の契約によってのみ成立し、法律の規定によっては生じない』とするが、先取特権は当事者の合意ではなく法律の定める原因があれば当然に発生する法定担保物権なので誤り。条文が『法律の規定に従い』と明示している点が、契約で設定する質権・抵当権との分かれ目になる。
補足法定担保物権なので登記や引渡しがなくても発生する。たとえば一般の先取特権には共益の費用・雇用関係・葬式の費用・日用品の供給の四つの原因が定められている(306条)。
問24優先弁済権の共通性
担保物権の優先弁済権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.先取特権者は、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有しない。
- イ.質権者は、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有しない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
- ア.誤り
- 条文は他の債権者に先立って弁済を受ける権利を有すると定める。
民法第303条「他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する」e-Gov原文
- イ.誤り
- 条文は他の債権者に先立って弁済を受ける権利を有すると定める。
民法第342条「他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する」e-Gov原文
ひっかけ『優先弁済権を有しない』が二つ並ぶ問題。担保物権の核心を否定しているので、どちらも素直に誤りになる。
解説303条は先取特権者が、342条は質権者が、いずれも他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有すると定める。優先弁済権を有しない、とするアもイも、それぞれの条文を否定しているので両方誤り。優先的に弁済を受けられることは担保物権に共通する効力であって、先取特権だけ・質権だけが例外的に持たない、という分け方はできない。だから組み合わせはアー誤、イー誤になる。
補足優先弁済を受ける手段は担保物権ごとに違い、先取特権・質権・抵当権は競売による換価のほか、配当への参加というかたちで優先弁済を実現する。効力の有無ではなく実現方法に差がある。
問25担保物権の目的物
担保物権の目的物に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.抵当権は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について設定される。
- イ.地上権及び永小作権は、抵当権の目的とすることができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 条文は占有を移転しないで債務の担保に供した不動産と定める。
民法第369条第1項「占有を移転しないで債務の担保に供した不動産」e-Gov原文
- イ.正しい
- 条文は抵当権の目的とすることができると定める。
民法第369条第2項「地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる」e-Gov原文
ひっかけ369条は1項と2項で対象を二段構えにしている。不動産だけと読むとイを誤りと早合点する。
解説369条1項は、抵当権が占有を移転しないで担保に供した不動産について設定されると定め、アはこの文言どおりで正しい。続く369条2項は、地上権および永小作権も抵当権の目的とすることができると定めるので、イも正しい。抵当権の対象は不動産だけにとどまらず、不動産を使う権利である地上権・永小作権まで含むことになる。両肢とも369条の条文そのままなので、組み合わせはアー正、イー正になる。
補足目的にできるのは不動産・地上権・永小作権までで、動産はここに入らない。動産を担保化する手段は質権(342条)や、判例上の譲渡担保といった別の制度になる。