問1債権譲渡の対抗要件(債務者対抗要件と第三者対抗要件)
AがBに対して有する売掛金債権をCに譲渡した場合の対抗要件に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.CがBに対して債権の譲受けを主張する(債務者に対抗する)ためには、AからBへの通知またはBの承諾が、確定日付のある証書によってされていなければならない。
- イ.Cが、Bへの譲渡の通知より後に同じ債権の譲渡を受けた第三者Dに対して優先を主張する(債務者以外の第三者に対抗する)ためには、AからBへの通知またはBの承諾が、確定日付のある証書によってされていなければならない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 467条は、債務者に請求できる状態にする要件と、二重譲渡などの第三者に優先を主張する要件を分けている。債務者対抗だけなら通知または承諾で足り、確定日付までは不要。
民法第467条第1項「譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない」e-Gov原文
- イ.正しい
- 第三者対抗要件では、通知・承諾がいつ存在したかを客観的に示す必要がある。確定日付のある証書が必要なのは、二重譲渡の優劣を日付で判断できるようにするため。
民法第467条第2項「前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない」e-Gov原文
ひっかけ確定日付のある証書が要るのは第三者に対抗するときだけ。債務者本人へはただの通知・承諾で足りる。
解説債権譲渡は譲渡人と譲受人の合意だけで効力を生じるが、それを誰に主張できるか(対抗要件)は相手ごとに段階が分かれ、アとイは相手が違う。アはCがBに『自分が新債権者だ』と主張する場面。債務者に対する対抗要件は、譲渡人から債務者への通知または債務者の承諾で足り(民法467条1項)、確定日付までは要らない。アは『確定日付のある証書でなければならない』とする点が誤り。イはCが二重譲受人Dとの優劣を主張する場面。債務者以外の第三者に対抗するには、通知または承諾が確定日付のある証書によってされていなければならない(同条2項)。イは正しい。したがって『アー誤、イー正』となる。
補足確定日付のある通知が複数あって同時に債務者へ到達した場合、各譲受人は債務者に全額を請求でき、債務者は他に同順位者がいることを理由に弁済を拒めない(最判昭55.1.11)。到達の先後が不明なときも同時到達として扱われる(最判平5.3.30)。
問2連帯債務(履行の請求・効力)
連帯債務に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.連帯債務では、債権者は、連帯債務者の一人に対しては、その負担部分に相当する一部の履行しか請求することができない。
- イ.連帯債務者の一人に対する履行の請求は、当然に他の連帯債務者に対してもその効力を生じる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
- ア.誤り
- 連帯債務は、債務者間の内部負担割合とは別に、債権者との外部関係では各連帯債務者が全部の履行責任を負う制度。負担部分は後で求償するときの内部調整であって、債権者から一人に請求できる範囲を制限しない。
民法第436条「債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる」e-Gov原文
- イ.誤り
- 一人に全額請求できることと、その請求の効力が他の連帯債務者へ波及することは別問題。現行民法は一人について生じた事由を原則相対効とし、履行の請求を絶対効事由に入れていないため、他の連帯債務者に当然には及ばない。
民法第441条「連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない」e-Gov原文
ひっかけイの「当然に他の連帯債務者にも効力を生じる」は、改正前の感覚。今は履行の請求は原則として一人どまり。
解説連帯債務では、各債務者がそれぞれ全部の給付をする義務を負い、債権者は連帯債務者の一人に対しても全部または一部の履行を請求できる(民法436条)。負担部分に縛られず一人に全額を請求できるのが「連帯」の効き目なので、「負担部分に相当する一部しか請求できない」とするアは誤り。イは、その請求が他の連帯債務者にも当然に効くか、という波及の問題。現行民法では、連帯債務者の一人について生じた事由は原則として他に効力を生じない相対的効力が基本で(同441条)、履行の請求もこの原則に従い当然には他へ及ばない。だからイも誤りになる。一人にいくら請求できるかと、その請求が他の連帯債務者へ波及するかは、別の条文が答えを出している。
補足他の連帯債務者にも及ぶ絶対的効力事由は、更改(438条)・相殺(439条1項)・混同(440条)に限られる。履行の請求がここに入っていないことが、イを誤りにしている。
問3連帯債務の絶対的効力事由(更改・免除)
連帯債務者の一人について生じた事由の効力に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.債権者が連帯債務者の一人に対して債務を免除したときは、他の連帯債務者の債務も全額消滅する。
- イ.連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 免除は絶対効事由でない → 他は残る
民法第441条「連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない」e-Gov原文
- イ.正しい
- 更改 → 絶対的効力
民法第438条「連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する」e-Gov原文
ひっかけアの「一人を免除すれば全員の債務が消える」は、相対的効力が原則という今の建付けに反する。免除は他へ及ばない。
解説連帯債務では、一人について生じた事由が他にも及ぶ絶対的効力か、その一人だけにとどまる相対的効力かが問われる。原則は相対的効力で、一人に生じた事由は他の連帯債務者に効力を生じない(民法441条)。免除はこの原則どおり相対的効力なので、債権者が一人を免除しても他の連帯債務者は全額の債務を負ったままで、「他の連帯債務者の債務も全額消滅する」とするアは誤り。これに対し更改は絶対的効力事由として明文で定められ、一人と債権者の間に更改があれば債権は全ての連帯債務者の利益のために消滅する(同438条)。だから「全ての連帯債務者の利益のために消滅する」とするイは正しい。同じ「一人について生じた事由」でも、免除は他へ届かず、更改は全員へ届く。
補足免除を受けた一人の負担部分について、求償の場面では他の連帯債務者がその者へ求償できる(445条)。免除は他の連帯債務者の「債務」は消さないが、内部の精算には影響が残る。
問4相殺の要件と相殺の禁止
相殺に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.二人が互いに同種の目的を有する債務を負担し、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によって債務を免れることができる。
- イ.悪意による不法行為に基づく損害賠償債務の債務者は、その債務を受働債権として、相殺をもって債権者に対抗することができない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 相殺適状 → 対当額で消滅
民法第505条第1項「二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる」e-Gov原文
- イ.正しい
- 現実弁済を確保 → 相殺不可
民法第509条「次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない」e-Gov原文
民法第509条第1号「悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務」e-Gov原文
ひっかけイの「悪意による不法行為」を受働債権とする相殺は封じられている。ここは「相殺できない」が正しい向き。
解説相殺は、二人が互いに同種の目的を有する債務を負担し、双方の債務が弁済期にある(相殺適状)ときに、対当額で簡単に決済できる制度である(民法505条1項)。アはこの要件をそのまま述べていて正しい。一方、相殺を認めると被害者が現実の支払を受けられず酷になる場面がある。そこで悪意による不法行為に基づく損害賠償債務を受働債権とする相殺は禁止され(同509条1号)、加害者側はこれを相殺で免れられない。だから「相殺をもって債権者に対抗することができない」とするイも正しい。相殺できる一般の要件と、被害者保護のために相殺を封じる場合とが、505条と509条に書き分けられている。
補足509条は2号で人の生命・身体の侵害による損害賠償債務も挙げる。逆に、被害者がその賠償債権を他人から譲り受けた場合は但書で相殺が認められ、禁止は無条件ではない。
問5受領権者としての外観を有する者に対する弁済
弁済に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.受領権者としての外観を有する者に対してした弁済は、弁済をした者が善意であれば、過失があったとしても常にその効力を有する。
- イ.債務の弁済は、債務者本人でなければすることができず、第三者が弁済をすることは一切認められない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
- ア.誤り
- 善意だけでは不足 → 無過失も必要
民法第478条「その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する」e-Gov原文
- イ.誤り
- 第三者弁済 → 原則可能
民法第474条第1項「債務の弁済は、第三者もすることができる」e-Gov原文
ひっかけアの「過失があっても常に」が落とし穴。478条は無過失まで要求していて、善意だけでは弁済は守られない。
解説弁済は本来、受領権限のある者にしなければ効力を生じない。ただ取引の安全のため、受領権者としての外観を有する者への弁済は、弁済をした者が善意でありかつ過失がなかったときに限り有効となる(民法478条)。条文は「善意」だけでなく「無過失」まで求めているので、「善意であれば過失があっても常に有効」とするアは誤り。イは誰が弁済できるかの問題で、弁済は債務者本人に限らず第三者もすることができる(同474条1項)。「第三者の弁済は一切認められない」とするイも誤り。外観者への弁済が守られる要件と、第三者でも弁済できるという原則と、二つの思い込みがそれぞれ条文と食い違っている。
補足第三者弁済は原則できるが、正当な利益を有しない第三者は債務者の意思に反して弁済できない(474条2項)。474条1項の「できる」には、こうした例外が続いている。
問6第三者の弁済
第三者の弁済に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.弁済をするについて正当な利益を有しない第三者は、債務者の意思に反する場合であっても、常に有効に弁済をすることができる。
- イ.弁済をするについて正当な利益を有する第三者は、債務者の意思に反する場合であっても、弁済をすることができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 意思に反する弁済 → 正当な利益が必要
民法第474条第2項「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない」e-Gov原文
- イ.正しい
- 正当な利益 → 意思に反しても弁済可
民法第474条第2項「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない」e-Gov原文
ひっかけ第三者なら誰でも自由に弁済できる、と読むとアで足をすくわれる。利益のない第三者は債務者の意思に反する弁済が原則できない。
解説弁済は債務者本人だけでなく第三者もできるのが原則だが(民法474条1項)、誰でも無制限というわけではない。弁済について正当な利益を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない(同条2項本文)。ただし債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、その弁済は有効となる(同項ただし書)。これに対し、物上保証人や担保不動産の第三取得者のように弁済について正当な利益を有する第三者は、債務者の意思に反しても弁済でき、弁済による代位で求償を確保できる。アは利益のない第三者でも『常に』弁済できるとする点で474条2項に反し誤り。イは利益のある第三者の弁済として正しい。分かれ目は『正当な利益』の有無に尽きる。
補足2項の制限がかかるのは『正当な利益を有しない』第三者だけ。物上保証人や担保不動産の第三取得者のように弁済について正当な利益のある第三者は、債務者の意思に反しても弁済できる。
問7詐害行為取消権
詐害行為取消権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを、裁判所に請求することができる。
- イ.詐害行為取消請求は、財産権を目的としない行為についても、することができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 責任財産の保全 → 裁判上の取消し
民法第424条第1項「債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる」e-Gov原文
- イ.誤り
- 身分行為等 → 取消し不可
民法第424条第2項「前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない」e-Gov原文
ひっかけどんな行為でも取り消せると考えるとイで誤る。身分行為のような財産権を目的としない行為は、はじめから対象外。
解説債務者が自分の財産を不当に減らすと債権者は回収できなくなるため、債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為(詐害行為)の取消しを裁判所に請求できる(民法424条1項本文)。ここでアは条文どおりで正しい。一方、この制度は責任財産(債権の引当て)の保全を目的とするので、財産権を目的としない行為には適用されない(同条2項)。婚姻・離婚・養子縁組のような身分行為がこれにあたり、イはそうした行為まで取消しの対象とする点で誤り。請求は『裁判所に』行うこと、対象が財産に関する行為に限られることの二点が条文の骨格である。
補足受益者が行為の時点で債権者を害することを知らなかった(善意の)ときは、債権者は取消しを請求できない(424条1項ただし書)。
問8消滅時効と時効の援用
債権の消滅時効に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。
- イ.時効は、当事者が援用しなければ、裁判所はこれによって裁判をすることができない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 主観的起算点5年
民法第166条第1項「債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する」e-Gov原文
民法第166条第1項第1号「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき」e-Gov原文
- イ.正しい
- 援用主義
民法第145条「が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない」e-Gov原文
ひっかけアは消滅時効の5年という期間、イは援用が要るかどうかを問う別々の論点。166条1項1号も145条もそのまま正しい。
解説債権の消滅時効は二つの起算点で測る。債権者が権利を行使することができることを知った時、すなわち主観的起算点から5年(民法166条1項1号)、または権利を行使することができる時、すなわち客観的起算点から10年(同項2号)行使しないと完成する。アはこの5年の主観的起算点を述べたもので正しい。もっとも期間の経過だけで効果が確定するわけではなく、時効は当事者が援用しなければ、裁判所はこれによって裁判をすることができない(同145条)。イはこの援用主義を述べたもので正しい。
補足145条が援用権を認める「当事者」には、主たる債務者だけでなく保証人・物上保証人・第三取得者など、時効によって直接利益を受ける者も含まれる。
問9時効の完成猶予と更新
時効の完成猶予・更新に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.裁判上の請求をしても、確定判決等によって権利が確定すれば、時効は更新されず、従前の時効がそのまま進行する。
- イ.裁判上の請求等がある場合には、その事由が終了するまでの間は、時効は完成しない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- リセットされる
民法第147条第2項「確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める」e-Gov原文
ひっかけアの「更新されず従前の時効がそのまま進行する」が誤り。確定判決で権利が確定すれば、時効はその時から新たに進行を始める(147条2項)。
解説時効の進行を止める仕組みには完成猶予と更新の二段がある。裁判上の請求、支払督促、調停、破産手続参加等の事由がある場合には、その事由が終了するまでの間は時効が完成しない(完成猶予。民法147条1項)。そして確定判決または確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効はその事由が終了した時から新たにその進行を始める(更新。同条2項)。アは確定判決で権利が確定しても更新されず従前の時効がそのまま進むとする点で、147条2項に反し誤り。イは請求中の完成猶予を述べたもので正しい。
補足裁判まで至らない催告にも完成猶予の効力があるが、こちらは催告の時から6か月を経過するまでに限られ、その間の再度の催告には猶予の効力がない(150条)。
問10供託
供託に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.弁済の提供をした場合において債権者がその受領を拒んだときであっても、弁済者は弁済の目的物を供託することができない。
- イ.弁済者が弁済の目的物を供託したときは、その供託をした時に、その債権は消滅する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 供託の可否
民法第494条第1項「弁済者は、次に掲げる場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができる」e-Gov原文
- イ.正しい
- 供託の効果
民法第494条第1項「弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅する」e-Gov原文
ひっかけ受領を拒まれたら、供託という出口で債務を確定的に消せる。
解説弁済の提供をしたのに債権者が受領を拒んだとき、債権者が受領できないとき、弁済者が過失なく債権者を確知できないとき、弁済者は債権者のために弁済の目的物を供託できる(民法494条1項各号)。アは『供託することができない』としており誤り。そして供託をした時に、その債権は消滅する(同項後段)。イはこの効果どおりで正しく、組み合わせはアー誤・イー正となる。
補足供託しても、債権者が供託物を受け取るまで(または供託が有効と確定するまで)は、弁済者は供託物を取り戻せる(496条1項)。
問11連帯債務者間の求償権
連帯債務者間の求償に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.連帯債務者の一人が弁済等で共同の免責を得たとき、その免責を得た額が自己の負担部分を超えなければ、他の連帯債務者に対して求償することは一切できない。
- イ.連帯債務者間の求償は、他の連帯債務者の負担部分にかかわらず、免責を得た全額について行うことができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
- ア.誤り
- 連帯債務者間の内部関係では、免責を得た額が自分の負担部分を超えているかどうかは求償の可否を左右しない。一部の弁済であっても、他の連帯債務者は本来自分が負担すべき分の支払いを免れているため、負担部分に応じた額を求償できる(民法442条1項)。「負担部分を超えなければ一切求償できない」という誤解は、連帯保証における求償のイメージ(全額を立て替えないと求償できない)との混同から生じやすい。
民法第442条第1項「その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず」e-Gov原文
- イ.誤り
- 連帯債務は対外的には各自が全部の履行責任を負うが(民法436条)、内部関係では負担割合に応じて公平に分担する制度である。そのため一人が免責を得ても、他の連帯債務者に請求できるのは免責を得た全額ではなく、各自の負担部分に応じた額にとどまる(民法442条1項)。
民法第442条第1項「各自の負担部分に応じた額の求償権を有する」e-Gov原文
ひっかけアは『負担部分を超えなければ一切求償できない』が誤り。イは『全額求償できる』が誤り。442条1項は『負担部分を超えるかにかかわらず・負担部分に応じた額』と定めており、どちらの極端も外れる。
解説連帯債務者の一人が弁済その他自己の財産で共同の免責を得たときは、その免責額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対して、各自の負担部分に応じた額の求償権を有する(民法442条1項)。ここから二点が出る。第一に、一部弁済で免責額が自分の負担部分に届かなくても求償できるので、アの『一切できない』は誤り。第二に、求償できるのは各自の負担部分に応じた額にとどまるので、『全額求償できる』とするイも誤り。なお法定利息や避けられなかった費用等も求償に含まれる(同条2項)。
補足弁済の前後に他の連帯債務者へ通知を怠ると、二重弁済を有効とみなされるなど求償が制限されることがある(民法443条)。
問12弁済の充当
弁済の充当に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務がある場合に、弁済が全ての債務を消滅させるのに足りないときでも、弁済をする者が充当すべき債務を指定することはできない。
- イ.当事者のいずれも充当の指定をしないときは、弁済はどの債務にも充当されず、その効力を生じない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
- ア.誤り
- 指定充当
民法第488条第1項「弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる」e-Gov原文
- イ.誤り
- 法定充当
民法第488条第4項「債務の中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは、弁済期にあるものに先に充当する」e-Gov原文
ひっかけ充当先はまず弁済者が選べ、誰も指定しなくても法定の順序で必ずどれかに充たる。
解説同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担し、弁済が全債務を消滅させるのに足りないときは、まず弁済をする者が、給付の時に充当すべき債務を指定できる(指定充当。民法488条1項)。よってアの『弁済者は指定できない』は誤り。弁済者が指定しないときは受領者が指定でき(同条2項)、いずれも指定しないときは弁済期の到来や弁済の利益等に従って法定の順序で充当される(法定充当。同条4項)。指定がなくても弁済が無効になるのではなく必ずいずれかの債務に充たるから、イの『どの債務にも充当されず効力を生じない』も誤りで、答えは誤誤。
補足一個の債務について元本のほか利息・費用があり全部に足りないときは、充当の順序は費用・利息・元本の順と決まっている(489条1項)。
問13債権の譲渡の対抗要件
債権の譲渡の対抗要件に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなくても、債務者その他の第三者に対抗することができる。
- イ.債権譲渡を債務者以外の第三者に対抗するためには、確定日付のある証書による通知又は承諾が必要である。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
解答・解説を見る
正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 対抗要件
民法第467条第1項「譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない」e-Gov原文
- イ.正しい
- 確定日付
民法第467条第2項「前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない」e-Gov原文
ひっかけ債務者本人へは通知か承諾で足り、第三者に勝つにはそれが確定日付のある証書であることまで要ります。
解説債権譲渡は当事者の合意で効力を生じるが、これを相手に主張するには段階があり、アとイは相手が違う。アは債務者への主張で、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗できない(民法467条1項)。通知も承諾もなしに対抗できるとするアは、この要件を欠いていて誤り。イは債務者以外の第三者への主張で、その通知・承諾は確定日付のある証書によってされなければ第三者に対抗できない(同条2項)。イは正しく、組み合わせは『アー誤、イー正』。債務者へは通知・承諾、二重譲受人へはさらに確定日付、と要求が一段重くなる。
補足確定日付のある通知が複数あって同時に債務者へ到達したときは、各譲受人がそれぞれ全額を請求でき、債務者は同順位の譲受人が他にいることを理由に弁済を拒めない(最判昭55.1.11)。
問14相殺の要件
相殺に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.二人が互いに同種の目的を有する債務を負担し、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。
- イ.相殺は、債務の性質がこれを許さない場合であっても、することができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 相殺
民法第505条第1項「二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる」e-Gov原文
- イ.誤り
- 相殺の制限
民法第505条第1項「債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない」e-Gov原文
ひっかけ同種・弁済期到来でも、性質上それを許さない債務までは相殺で消せない。
解説二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるとき(相殺適状)は、各債務者はその対当額について相殺によってその債務を免れることができる(民法505条1項本文)。アはこの本文どおりで正しい。もっとも、債務の性質がこれを許さないときは相殺できない(同項ただし書)から、「性質が許さない場合でも相殺できる」とするイは誤り。なす債務のように現実の履行に意味がある債務がその例である。
補足債務の性質が許さない例としては、互いに労務を提供する債務など、現実に履行してこそ意味のあるなす債務が挙げられる。
問15相殺禁止特約と相殺適状
相殺に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.当事者が相殺を禁止する旨の意思表示をした場合、その意思表示は、第三者がこれを知っていたか否かにかかわらず、常に第三者に対抗することができる。
- イ.相殺は、双方の債務の弁済期が到来していなくても、当然にすることができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
- ア.誤り
- 相殺禁止特約
民法第505条第2項「その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる」e-Gov原文
- イ.誤り
- 相殺適状
民法第505条第1項「双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる」e-Gov原文
ひっかけ「特約は常に第三者に通る」「弁済期前でも相殺は通る」は、どちらも条文の前で崩れる。
解説相殺を禁止し又は制限する旨の意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる(民法505条2項)。裏返せば善意・無重過失の第三者には対抗できないので、「知っていたか否かにかかわらず常に対抗できる」とするアは誤り。また相殺には双方の債務が弁済期にあること(相殺適状)が原則必要(同条1項)だから、「弁済期が到来していなくても当然に相殺できる」とするイも誤り。両方とも誤りで、組み合わせは4となる。
補足ただし自働債権(相殺する側の債権)が弁済期にあれば、受働債権の期限の利益を放棄して相殺でき、受働債権の弁済期到来は必須ではない。
問16弁済による代位の要件
弁済による代位に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する。
- イ.債務者のために弁済をした者であっても、債権者には代位しない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 代位の基本効果を確認
民法第499条「債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する」e-Gov原文
- イ.誤り
- 代位の効果を真逆にする
民法第499条「債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する」e-Gov原文
ひっかけ「弁済しても代位しない」は条文の真逆。499条はそのまま代位を認める。
解説499条は「債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する」と一行で定める。アはこの条文の言葉そのままで正しい。イはその効果を「代位しない」と真逆に反転させただけなので誤り。代位とは、弁済者が求償権を確保するために、債権者が持っていた原債権や担保権を行使できる地位に立つこと。条文をそっくり裏返した肢が誤りになる典型で、答えはアー○・イー×になる。
補足弁済者が代位して行使できるのは、求償権の範囲に限られる(501条2項)。
問17債権の譲渡性と性質による制限
債権の譲渡性に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.債権は、その性質がこれを許さないときは、譲り渡すことができない。
- イ.債権は、その性質のいかんを問わず、いかなる場合でも譲り渡すことができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 譲渡性の例外を確認
民法第466条第1項「その性質がこれを許さないときは、この限りでない」e-Gov原文
ひっかけ原則は譲渡自由でも、給付内容が債権者個人に結びつく債権はただし書で外れる。
解説466条1項は本文で「債権は、譲り渡すことができる」とし、ただし書で「その性質がこれを許さないときは、この限りでない」とする。アはそのただし書どおりで正しい。性質上譲渡になじまない債権、たとえば特定の画家に描かせる債権のように債権者が誰かで給付内容が変わるものは、譲渡できない。イは本文だけを取り出して「性質を問わずいかなる場合でも譲渡できる」とするが、ただし書を無視しているので誤り。よってアー○・イー×。
補足性質による制限とは別に、法律が譲渡を禁じる債権(扶養請求権など)もある。
問18譲渡制限の意思表示と債権譲渡の効力
譲渡制限の意思表示に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示をしたときであっても、債権の譲渡はその効力を妨げられない。
- イ.譲渡制限の意思表示がされたときは、債権の譲渡はその効力を生じず無効となる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 譲渡の効力が維持される点を確認
民法第466条第2項「債権の譲渡は、その効力を妨げられない」e-Gov原文
- イ.誤り
- 効力維持を真逆にする
民法第466条第2項「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない」e-Gov原文
ひっかけ譲渡制限があっても譲渡自体は有効。「無効になる」は改正前の発想。
解説466条2項は、当事者が譲渡を禁止・制限する意思表示(譲渡制限の意思表示)をしたときであっても、債権の譲渡はその効力を妨げられない、と定める。アはこの条文どおりで正しい。改正前は譲渡制限特約があると譲渡が原則無効と解されていたが、債権による資金調達などのため流通性を確保する方向に改められた。イはその効果を「無効となる」とする点で改正後の条文を真逆にしているので誤り。組み合わせはアー○・イー×。
補足譲渡されても、債務者は供託でき、その供託金は譲受人だけが還付請求できる(466条の2)。
問19譲渡制限と債務者の履行拒絶
譲渡制限の意思表示と債務者の対抗に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.譲渡制限の意思表示がされたことを軽過失で知らなかった譲受人に対しても、債務者はその債務の履行を拒むことができる。
- イ.譲渡制限の意思表示がされたことを知っていた譲受人に対しては、債務者はその債務の履行を拒むことができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 重過失要件を軽過失にすり替える
民法第466条第3項「重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ」e-Gov原文
- イ.正しい
- 悪意者への対抗を確認
民法第466条第3項「譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ」e-Gov原文
ひっかけ履行拒絶の線は悪意・重過失まで。軽過失で知らなかった譲受人には拒めない。
解説譲渡制限があっても譲渡は有効だが、466条3項は債務者の保護を定める。履行を拒め、かつ譲渡人への弁済を対抗できる相手は、譲渡制限を知っていた(悪意の)譲受人か、重大な過失で知らなかった譲受人に限られる。イはこの悪意の譲受人を相手にする場面なので正しい。アは「軽過失で知らなかった」譲受人にも拒めるとするが、基準は悪意か重過失であって軽過失は含まれない。だからアは誤りで、答えはアー×・イー○になる。
補足悪意・重過失の譲受人でも、相当の期間を定めて譲渡人への履行を催告し応じないと、債務者はもう拒めない(466条4項)。
問20悪意不法行為債務と相殺禁止
相殺禁止に関する次のア・イの正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.悪意による不法行為に基づく損害賠償債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
- イ.相殺禁止の規定がある場合でも、債務者は常に相殺をもって債権者に対抗することができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 509条1号
民法第509条第1号「悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務」e-Gov原文
- イ.誤り
- 常に相殺できるわけではない
民法第509条「次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない」e-Gov原文
ひっかけ相殺禁止があっても債務者は相殺で対抗できる、と考えるとイを正しいと誤る。悪意の不法行為による賠償債務は相殺で対抗できない。
解説相殺は債権回収に役立つが、すべての債務で自由に使えるわけではない。悪意による不法行為に基づく損害賠償債務の債務者は、その債務を受働債権として、相殺をもって債権者(被害者)に対抗することができない(民法509条1号)。アはこのとおりで正しい。相殺禁止に当たる債務では相殺で対抗できないので、「相殺禁止の規定がある場合でも常に相殺をもって対抗できる」とするイは誤り。
補足これは、被害者に現実の金銭賠償を受けさせるための規定である。509条は2号で、人の生命・身体の侵害による損害賠償債務も相殺禁止の対象に挙げている。
問21個人根保証契約の極度額
個人根保証契約(一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とし、保証人が個人である根保証契約)に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.個人根保証契約の保証人は、極度額の定めの有無にかかわらず、主たる債務の全額についてその履行をする責任を負う。
- イ.個人根保証契約は、極度額を定めなければ、その効力を生じない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 責任は極度額を限度とし、極度額を定めなければ効力も生じない → 全額責任とする点で条文に反し誤り。
民法第465条の2第1項「その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う」e-Gov原文
- イ.正しい
- 第465条の2第2項のとおり、極度額の定めは効力要件 → 正しい。
民法第465条の2第2項「前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない」e-Gov原文
ひっかけ根保証は保証人が『いくらまで』を知らないまま無限に膨らむ危険があるため、個人保証人を守る仕組みが極度額。
解説根保証とは、一定の範囲に属する不特定の債務(例えば継続的取引から生じる債務や賃貸借に基づく債務など)を主たる債務とする保証をいう。保証人が法人でない個人の場合、債務がいくらまで膨らむか予測できず、保証人が想定外の過大な責任を負う危険がある。そこで民法465条の2は、個人根保証契約の保証人を保護するため二つの歯止めを置いた。第一に、保証人が責任を負うのは『その全部に係る極度額を限度として』であり(同条1項)、極度額を超える部分について責任を負わない。第二に、個人根保証契約は極度額を定めなければその効力を生じない(同条2項)。つまり極度額の定めは単なる任意事項ではなく効力要件であり、極度額のない個人根保証契約は無効となる。さらに極度額の定めには保証契約の書面要件(446条2項・3項)が準用され、書面(または電磁的記録)によらなければ効力を生じない(同条3項)。アは『極度額の定めの有無にかかわらず全額責任を負う』とするが、責任は極度額を限度とし、そもそも極度額がなければ契約が効力を生じないから誤り。イは極度額を定めなければ効力を生じないとする点で同条2項のとおり正しい。したがって『アー誤、イー正』となる。
補足極度額は元本のほか利息・違約金・損害賠償など従たるものや保証債務についての違約金・損害賠償も含めた『その全部に係る』上限として定める必要がある(465条の2第1項)。また極度額の定めは、保証契約の書面要件(446条2項・3項)が準用され、書面(または電磁的記録)でしなければ効力を生じない(同条3項)。
問22差押えを受けた債権を受働債権とする相殺
差押えを受けた債権を受働債権とする相殺に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え前に取得した反対債権を有していた場合であっても、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することは一切できない。
- イ.差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権であっても、その債権による相殺をもって常に差押債権者に対抗することができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
解答・解説を見る
正解:4(アー誤、イー誤)
- ア.誤り
- 差押え『前』に取得した債権による相殺は対抗できる → 511条1項に反し誤り。
民法第511条第1項「差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる」e-Gov原文
- イ.誤り
- 差押え『後』に取得した債権による相殺は原則対抗できない → 511条1項に反し誤り。
民法第511条第1項「差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできない」e-Gov原文
ひっかけ分かれ目は『差押えの前か後か』。反対債権をいつ取得したかで相殺で対抗できるかどうかが逆になる。
解説差押えを受けた債権を『受働債権』として相殺できるか(第三債務者が差押債権者に相殺を対抗できるか)は、第三債務者が反対債権をいつ取得したかで決まる。民法511条1項は、差押え後に取得した債権による相殺は差押債権者に対抗できないが、差押え前に取得した債権による相殺は対抗できると定める。アは、差押え前に取得した反対債権による相殺を『一切できない』とする点で、対抗できるという条文の帰結を否定しており誤り。イは、差押え後に取得した債権による相殺を『常に対抗できる』とする点で、原則対抗できないという条文の帰結を逆転させており誤り。なお511条2項は、差押え後に取得した債権でも差押え前の原因に基づいて生じたものであれば相殺で対抗できるとしつつ(本文)、差押え後に他人の債権を取得した場合は対抗できないとする(ただし書)。取得時期を『差押えの前か後か』で切り分け、例外として『差押え前の原因に基づく債権』を押さえるのが要点である。したがって『アー誤、イー誤』となる。
補足差押え後に取得した債権であっても、それが差押え前の原因(例:差押え前に締結済みの契約や既存の委託関係)に基づいて生じたものであれば、第三債務者はその債権による相殺をもって差押債権者に対抗できる(民法511条2項本文)。ただし、第三債務者が差押え後に他人の債権を譲り受けるなどして取得した場合は、たとえ差押え前の原因に基づく債権でも相殺で対抗できない(同項ただし書)。債権法改正(2020年施行)で無制限説を明文化しつつ、この例外が整理された。
問23債権譲渡における債務者の抗弁
AがBに対して有する売掛金債権をCに譲渡した場合における、債務者Bが譲受人Cに主張できる抗弁に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.債務者Bは、対抗要件が具備される時(AからBへの通知またはBの承諾がされる時)までに譲渡人Aに対して生じた事由をもって、譲受人Cに対抗することができる。
- イ.債務者Bは、対抗要件が具備された時より後に譲渡人Aに対して生じた事由であっても、これをもって譲受人Cに対抗することができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 抗弁の基準時は対抗要件具備時。その時までに生じた事由なら譲受人に主張できる → 正しい。
民法第468条第1項「譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる」e-Gov原文
- イ.誤り
- 条文は『具備時までに』生じた事由に限る。具備後の事由まで対抗できるとするのは基準時の取り違えで誤り。
民法第468条第1項「対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由」e-Gov原文
ひっかけ抗弁を対抗できるかどうかの分かれ目は『対抗要件具備時』という一点。それより前か後かで結論が逆になる。
解説債権が譲渡されても、債務者の地位は譲渡前より不利になってはならない。そこで民法468条1項は、債務者は対抗要件が具備される時(譲渡人からの通知または債務者の承諾の時)までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗できると定め、抗弁の基準時を『対抗要件具備時』に固定した。たとえば具備時までに債務者が譲渡人へ一部弁済していた、同時履行の抗弁権を有していた、相殺適状にあった、といった事由は、そのまま譲受人にも主張できる。アはこの基準時どおりの記述で正しい。これに対しイは、対抗要件が具備された後に生じた事由まで譲受人に対抗できるとする。しかし条文が対抗を認めるのは『対抗要件具備時までに』生じた事由に限られ、具備後に新たに生じた事由は原則として基準時を超えるため対抗できない。イは基準時を取り違えており誤り。したがって『アー正、イー誤』となる。
補足対抗要件具備時までに債務者が譲渡人に対する反対債権を取得していれば、その反対債権が弁済期未到来でも、譲受人に対して相殺をもって対抗できる(民法469条1項)。抗弁の基準時と相殺の基準時はいずれも対抗要件具備時で連動している。
問24更改による債務の消滅
更改に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.当事者が従前の債務に代えて、次に掲げるものを目的とする新たな債務を発生させる契約をしたときは、従前の債務は更改によって消滅する。
- イ.更改には、従前の債務者が第三者と交替するもの(債務者の交替による更改)が含まれる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 更改は、従前の債務に代えて新たな債務を発生させる契約によって成立し、その結果として従前の債務が消滅する(民法513条本文)。単に内容を書き換える『変更』ではなく、旧債務を消滅させて別個の新債務を生じさせる点が特徴で、旧債務に付いていた担保・保証は当然には新債務に引き継がれない(518条)。アはこの効果(従前債務の消滅)を条文どおり述べており正しい。
- イ.正しい
- 更改を生じさせる新債務の類型は、①給付内容の重要な変更、②債務者の交替、③債権者の交替の3つが513条各号に列挙されており、イが指す『債務者の交替による更改』はこのうち②にあたる(513条2号)。なお債務者の交替による更改後の債務者は、更改前の債務者に対して求償権を取得しない(514条2項)。旧債務者との関係が完全に切れる点が『交替』と呼ばれる所以で、イはこの類型該当性を正しく述べている。
民法第513条第2号「従前の債務者が第三者と交替するもの」e-Gov原文
ひっかけ更改は『新しい債務が生まれ、古い債務が消える』のが肝。弁済のように債務を履行して消すのとは別物。
解説更改とは、当事者が従前の債務に代えて、次に掲げるものを目的とする新たな債務を発生させる契約をしたときに、従前の債務が消滅する制度である(民法513条)。ポイントは『従前の債務の消滅』と『新債務の発生』が一体で起こることで、既存の債務を履行して消滅させる弁済や、別の給付で代替して消滅させる代物弁済とは仕組みが異なる。更改を生じさせる新たな債務の類型は、①従前の給付の内容について重要な変更をするもの、②従前の債務者が第三者と交替するもの(債務者の交替)、③従前の債権者が第三者と交替するもの(債権者の交替)の3つである。アは①〜③のいずれかを目的とする新債務の契約により従前の債務が更改によって消滅するという効果を述べており、条文本文のとおり正しい。イは②の債務者の交替が更改に含まれることを述べており、513条2号のとおり正しい。したがって『アー正、イー正』となる。更改は従前の債務を消滅させて別個独立の新債務を生じさせるため、旧債務の担保や保証は当然には引き継がれず、質権・抵当権を移すには意思表示を要する(518条)点も、更改の性質を理解するうえで重要である。
補足更改前の債務の担保として設定された質権・抵当権は、債権者が更改前の債務の目的の限度で更改後の債務に移すことができるが、第三者が設定した場合はその承諾を要し、移転はあらかじめまたは同時に相手方への意思表示によってしなければならない(民法518条)。なお、債務者の交替による更改後の債務者は、更改前の債務者に対して求償権を取得しない(民法514条2項)。
問25混同による債権の消滅
混同による債権の消滅に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.債権及び債務が同一人に帰属したときは、原則として、その債権は混同によって消滅する。
- イ.債権が第三者の権利の目的である場合であっても、その債権は混同によって当然に消滅する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
解答・解説を見る
正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 混同 → 債権者と債務者が同一人 → 債権は原則消滅 → 正しい。
民法第520条「債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する」e-Gov原文
- イ.誤り
- 第三者の権利の目的 → 混同の例外 → 消滅しない → 記述は条文に反し誤り。
民法第520条「第三者の権利の目的であるときは、この限りでない」e-Gov原文
ひっかけ混同が起きても、その債権に第三者の権利がぶら下がっていれば消えない。
解説混同とは、対立する二つの法律上の地位(債権者としての地位と債務者としての地位)が同一人に帰属することをいう。たとえば、債権者が債務者を相続したり、債権者である会社が債務者である会社を吸収合併したりした場合、一人の者が自分自身に対して債権を有する状態となる。自分が自分に対して権利を行使することには意味がないため、民法第520条本文は『債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する』と定め、混同を債権の消滅原因の一つとしている。アはこの本文どおりであり正しい。もっとも、混同による消滅には例外がある。第520条ただし書は『その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない』と定める。たとえば、その債権に第三者のために質権が設定されているような場合、債権を消滅させると質権者(第三者)の利益を害してしまう。そこで、第三者の権利を保護するため、この場合には混同が生じても債権は消滅しない。イは、第三者の権利の目的である債権も『当然に消滅する』としており、このただし書の例外を無視している点で誤りである。したがって『アー正、イー誤』となる。
補足混同とは、債権者としての地位と債務者としての地位が同一人に帰属することをいう(例:債権者が債務者を相続した場合など)。原則として権利を存続させる意味がないため債権は消滅するが、その債権に第三者の権利(質権など)が及んでいるときは、第三者の利益を害さないよう例外的に消滅しない。