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民法・第3

企業財産の管理と法律の問題(27問)

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この章の概要

企業の財産をめぐる物権の章です。不動産・動産の物権変動の対抗要件、即時取得、留置権・質権・抵当権といった担保物権、取得時効、共有物の管理・変更・保存を収録しています。つまずきやすいのは、対抗要件(登記か引渡しか)と、共有での「変更・管理・保存」で必要な持分割合の違いです。数値や要件は丸暗記より、なぜその区別なのかを条文で押さえると安定します。

この章で確認する論点

3章では、物権変動の対抗要件・即時取得・留置権・質権・抵当権の内容を中心に27問を収録しています。正解番号だけでなく、選択肢ごとの根拠と誤りの理由まで確認します。

民法を他資格と横断して確認する場合は、民法を学べる資格と無料問題も使えます。

  • 契約で所有権が移っても、第三者に主張するには対抗要件が要る。動産なら引渡しが必要。
  • 即時取得が守るのは取引で動産を手に入れた人だけで、不動産には出てこない。
  • 未払いの債権があって物を持っていても、その占有が盗品のように不法行為で始まっていれば留置権は使えない。

この章で扱う条文

収録問題の解説が根拠として引用している条文の一覧です。リンク先はe-Gov法令検索の原文(解説内では該当箇所を逐語引用しています)。

民法162条177条178条179条180条192条206条242条249条251条252条295条342条344条351条369条370条372条388条448条466条470条472条488条489条

問題と解説を読む27問・答え付き

答え・解説つきで27問を読めます。自分で解いて試すには、上の「この章を解く」からどうぞ。

e-Gov逐語照合済み2025年12月〜2026年8月時点の法令に準拠
1物権変動の対抗要件(不動産・動産)

Aが自己の財産を他人に譲渡した場合の対抗要件に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • Aが所有する土地をBに売却した場合、Bは登記をしなければ、その土地の所有権の取得を第三者に対抗することができない。
  • Aが所有する機械(動産)をCに譲渡した場合、引渡しがなくても、Cはその所有権の取得を第三者に対抗することができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
不動産の対抗要件は登記 → 登記なし → 第三者に対抗不可

民法第177条その登記をしなければ、第三者に対抗することができない。e-Gov原文

誤り
動産の対抗要件は引渡し → 引渡しなし → 対抗不可(記述は誤り)

民法第178条動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。e-Gov原文

ひっかけ契約で所有権が移っても、第三者に主張するには対抗要件が要る。動産なら引渡しが必要。

解説契約で当事者間の所有権が移っても、それを契約当事者以外の第三者に主張するには対抗要件が要る。対抗要件は対象で異なり、不動産は登記(民法177条)、動産は引渡し(民法178条)である。アの土地は不動産だから、買主Bは登記を備えなければ、たとえば同じ土地を二重に買った別の第三者に所有権を対抗できない。これは正しい。イの機械は動産だから対抗要件は引渡しで、引渡しがなければ第三者に対抗できない。「引渡しがなくても対抗できる」とする点が誤り。横から現れた第三者に勝てるかは、登記か引渡しかという対抗要件の有無で決まる。

補足動産でも、自動車・船舶・建設機械など登録制度のあるものは登記・登録が対抗要件になり、178条の「引渡し」は適用されない。

2即時取得

動産の即時取得に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 即時取得の制度は、動産だけでなく、不動産の取引についても適用される。
  • 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)

誤り
即時取得の対象は動産のみ → 不動産には適用されない

民法第192条動産の占有を始めた者e-Gov原文

正しい
192条の要件をすべて満たす → 即時に権利を取得する(正しい)

民法第192条取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。e-Gov原文

ひっかけ即時取得が守るのは取引で動産を手に入れた人だけで、不動産には出てこない。

解説即時取得(善意取得)は、本当は無権利者から動産を買ってしまった人でも、取引の安全のために保護する制度である。要件は民法192条のとおり、(1)取引行為によること、(2)平穏かつ公然と、(3)動産の占有を始めたこと、(4)善意、(5)無過失で、これらをすべて満たすと即時にその動産について権利を取得する。イは192条の要件をそのまま述べており正しい。核心は対象が動産に限られる点で、不動産は登記を見れば権利者が分かり占有を信頼した人を特別に保護する必要がない。だからアの「不動産にも適用」は誤りで、不動産が出てきたら即時取得ではなく登記(177条)で考える。

補足ただし占有物が盗品・遺失物のときは例外で、被害者・遺失者は盗難・遺失の時から2年間、占有者に回復を請求できる(193条)。

3留置権

留置権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。
  • 占有が不法行為によって始まった場合であっても、占有者はその物について留置権を行使することができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)

正しい
留置権の原則(295条1項本文)どおり → 正しい

民法第295条第1項他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。e-Gov原文

誤り
295条2項で適用除外 → 留置権を行使できない(記述は誤り)

民法第295条第2項占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。e-Gov原文

ひっかけ未払いの債権があって物を持っていても、その占有が盗品のように不法行為で始まっていれば留置権は使えない。

解説他人の物を占有している人が、その物に関して生じた債権を持っているとき、支払を受けるまでその物を手元に留めておける。これが留置権で(民法295条1項)、修理した時計を修理代の支払があるまで返さない、という場面が典型である。手元に物を置くこと自体が、相手に支払を促す圧力になる。ただし占有の始まりが不法行為による場合には留置権は認められない(同条2項)。盗んだ物のように、保護に値しない占有まで強い権利で守る理由はないからである。本問のアは295条1項本文そのままで正しい。イは『不法行為で始まった占有でも行使できる』とするが、これは2項が真正面から否定する場面なので誤り。占有が始まった経緯が正当か否かが、アとイの分かれ目になっている。

補足留置権は債権の一部弁済では消えない。残債が少しでもあれば留置物の全部について行使できる(不可分性。民法296条)。

4質権

質権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 質権者は、質物を占有していても、その質物について他の債権者に優先して自己の債権の弁済を受ける権利を有しない。
  • 質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)

誤り
342条は優先弁済権を認めている → 『有しない』は誤り

民法第342条その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。e-Gov原文

正しい
344条のとおり質権は要物契約 → 引渡しで成立(正しい)

民法第344条質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。e-Gov原文

ひっかけ質権者は質物を占有しているだけでなく、その物から他の債権者に先んじて回収できる。優先弁済権を否定するアが誤り。

解説借金の担保として受け取った物を債権者(質権者)が占有し、弁済がなければその物から他の債権者に優先して回収できる。これが質権で、優先弁済権を定めるのが民法342条である。質屋に品物を預けて金を借りる場面が典型で、債権者が現物を手元に置く点が、占有を移さない抵当権と異なる。もう一つの柱が成立要件で、質権の設定は目的物を実際に引き渡して初めて効力を生じる要物契約である(344条)。合意だけでは足りず、引渡しが要る。本問のアは優先弁済権を『有しない』とする点が342条に反して誤り。イは引渡しで効力を生じるという344条どおりで正しい。アの誤りは、質権の存在意義そのものである優先弁済権を否定している点にある。

補足質権者が弁済期前にあらかじめ『払えなければ質物の所有権をもらう』と約す流質契約は禁止されている(民法349条)。

5抵当権の内容

抵当権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
  • 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)

正しい
369条1項どおり抵当権は非占有担保+優先弁済権 → 正しい

民法第369条第1項抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。e-Gov原文

正しい
369条2項で明文上認められている → 正しい

民法第369条第2項地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。e-Gov原文

ひっかけ抵当権は占有を移さない非占有担保で、対象は不動産だけでなく地上権・永小作権にも及ぶ。アもイも条文どおり。

解説不動産などを担保にしつつ、その占有を債権者に移さない。これが抵当権の特徴で、民法369条1項が定める。住宅ローンで自宅に抵当権を設定しても債務者はその家に住み続けられ、返済が滞ったときに抵当権者が競売で換価し、他の債権者に優先して回収する(優先弁済権)。占有を移さないこの点が、現物を預ける質権との最大の違いになる。対象は不動産が中心だが、地上権・永小作権も抵当権の目的にできる(同条2項)。本問はアが369条1項、イが同条2項のとおりで、いずれも正しい。組合せ問題では『両方正しい』もあり得るので、一方が正しいと分かっても他方を反射的に逆にせず、イも2項に当てて確認することになる。

補足建物への抵当権は土地に当然には及ばず、土地・建物は別々の不動産として別個に抵当権を設定する扱いになる。

6法定地上権

法定地上権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 法定地上権が成立するためには、抵当権の設定時において、土地とその上の建物の所有者が互いに異なっていることが必要である。
  • 法定地上権が成立する場合の地代は、常に当事者間の合意のみによって定められ、裁判所がこれを定めることはない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)

誤り
388条の要件は『同一の所有者』 → 『異なること』は逆で誤り

民法第388条土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合においてe-Gov原文

誤り
388条後段は『当事者の請求により裁判所が定める』 → 記述は誤り

民法第388条地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。e-Gov原文

ひっかけ成立の出発点は『設定時に土地と建物が同一所有者』であること。所有者が別人だと要件を逆にしてしまう。

解説自分の土地に自分の建物が建っている状態で、その土地か建物に抵当権が設定され、競売で土地と建物の持ち主が別々になると、建物は敷地を使う権利を失い、本来なら取り壊さざるを得なくなる。これを避けるのが法定地上権である。抵当権設定時に土地と建物が同一の所有者に属していたことを前提に、競売で所有者が分かれたとき、建物のために地上権が設定されたものとみなす(民法388条)。本問のアは『所有者が異なっていることが必要』とするが、要件は逆で、設定時に同一所有者でなければならないから誤り。イの地代は、当事者の合意で決まらない場合でも当事者の請求により裁判所が定めるとされており(388条後段)、『裁判所が関与することはない』は誤り。設定時に同じ人のものだったか、という出発点を取り違えると、アで足をすくわれる。

補足更地に抵当権を設定した後に建物を建てても、設定時は建物が存在しないため法定地上権は成立しない。

7所有権の取得時効

所有権の取得時効に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
  • 占有の開始時に善意かつ無過失であった場合でも、所有権を時効取得するには常に20年間の占有を要する。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)

正しい
20年の長期取得時効は、所有の意思、平穏公然の占有、20年の継続が核。善意無過失は10年時効の要件であり、20年時効には不要。

民法第162条第1項二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。e-Gov原文

誤り
占有開始時に善意無過失なら10年で足りる。出題文の「常に20年」は、162条2項の短期取得時効を消しているため誤り。

民法第162条第2項十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。e-Gov原文

ひっかけイの誤りは『常に20年』の一語。善意無過失なら、そこは10年に縮む。

解説所有の意思をもって、平穏かつ公然と他人の物を占有した者は、その所有権を時効取得する。期間は占有開始時の主観で2段階に分かれ、原則は20年(民法162条1項)、占有を始めた時に善意であり、かつ過失がなかったときは10年に短縮される(同条2項)。アは20年の原則をそのまま述べており、1項のとおり正しい。イは『善意かつ無過失でも常に20年を要する』とするが、その場合こそ10年で足りるので誤り。期間を分けるのは占有開始時点の善意・無過失の有無であって、途中で悪意に変わっても、起算点の主観で決まった期間は動かない。

補足期間は占有開始時の主観で固定される。始めに善意無過失なら、途中で他人の物と知っても10年のままで、20年に延びはしない。

8共有物の使用と管理

共有に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 共有物の管理に関する事項は、共有者全員の同意がなければ決することができない。
  • 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)

誤り
252条1項は持分価格の過半数で決する → 全員同意は不要

民法第252条第1項各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。e-Gov原文

正しい
249条1項どおり → 正しい

民法第249条第1項各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。e-Gov原文

ひっかけアは管理に『全員同意』を求める。だが管理は過半数で決まる。

解説共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する(民法252条1項)。アは『全員の同意がなければ決することができない』とするが、管理は過半数で足りるので誤り。一方、各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる(249条1項)。持分が3分の1でも物の全部を使える建付けで、イはこの249条1項のとおり正しい。共有物をめぐる意思決定は一律ではなく、変更は全員、管理は過半数、保存は単独と段階が分かれる。アが取り違えたのは、この真ん中の管理の段階である。

補足共有物の全部を使えるといっても、自己の持分を超える使用分は、別段の合意がなければ他の共有者に対価を償還する義務がある(249条2項)。

9共有物の変更と保存行為

共有物に対する各共有者の行為に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物にその形状又は効用の著しい変更を伴う変更を加えることができない。
  • 各共有者は、他の共有者の同意がなければ、共有物の保存行為をすることもできない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
251条1項どおり変更行為は同意が必要 → 正しい

民法第251条第1項他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更e-Gov原文

誤り
252条5項で保存行為は単独でできる → 同意不要

民法第252条第5項各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。e-Gov原文

ひっかけイが扱うのは保存行為。修繕のような現状維持は、ひとりでできる。

解説共有物に対する行為は、影響の大きさで必要な合意が変わる。形状又は効用の著しい変更を伴う変更行為は、他の共有者の同意がなければできない(民法251条1項)。アはこの変更行為の同意要件をそのまま述べており正しい。これに対し、共有物の現状を維持する保存行為(建物の修繕、不法占拠者への明渡し請求など)は、各共有者が他の共有者の同意を得ずに単独でできる(252条5項)。保存行為は共有者全員の利益になり害がないからである。イは保存行為にも同意がいるとするが、単独でできるので誤り。アの変更とイの保存は、同意の要否が正反対に出る場面である。

補足変更行為のうち、形状・効用を『著しく』変えない軽微な変更は、変更でなく管理として持分の過半数で決められる(252条1項括弧書)。

10抵当権の効力範囲と付合

物の付合及び抵当権の効力に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 抵当権の効力は、抵当不動産に付加して一体となっている物には及ばない。
  • 不動産に従として付合した物について、その不動産の所有者がその物の所有権を取得することはない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:4(アー誤、イー誤)

誤り
370条本文で付加一体物に及ぶ → 記述は誤り

民法第370条付加して一体となっている物に及ぶ。e-Gov原文

誤り
242条本文で付合物の所有権を取得する → 記述は誤り

民法第242条不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。e-Gov原文

ひっかけアもイも『及ばない/取得しない』と方向を逆に振っている。条文はどちらも肯定形。

解説抵当権の効力は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産に付加して一体となっている物に及ぶ(民法370条本文)。アは『付加して一体となっている物には及ばない』とするが、原則は及ぶので誤り。これと表裏で、不動産に従として付合した物は、その不動産の所有者がその所有権を取得する(242条本文。建物に組み込まれた増築部分など)。イは『所有権を取得することはない』とするが、取得するので誤り。よって両方誤りで『アー誤、イー誤』。設定後に付合した物にも効力が及ぶことで、抵当不動産の担保価値が保たれる仕組みになっている。

補足370条が及ぶのはあくまで不動産に付加一体となった物で、抵当地の上に立つ建物は除かれる。土地と建物は別個の不動産だからである。

11保証債務の付従性

保証債務の付従性に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。
  • 主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されたときは、保証人の負担もこれに応じて加重される。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)

正しい
保証は主たる債務に付従 → 主たる債務より重くできない → 主たる債務の限度に減縮(正しい)

民法第448条主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。e-Gov原文

誤り
保証契約後の主債務の加重 → 保証人の負担は加重されない(448条2項) → 記述は誤り

民法第448条保証人の負担は加重されない。e-Gov原文

ひっかけ保証は主たる債務に「くっついて」存在する。だから主たる債務より重くなることはなく、後から勝手に膨らむこともない。

解説保証債務は主たる債務を担保するために存在するので、主たる債務に付き従う(付従性)。その表れとして、保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する(民法448条1項)。アはこの規定どおりで正しい。さらに、主たる債務の目的・態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない(同条2項)。保証人は契約時の内容を前提に責任を引き受けたのだから、後から主たる債務者と債権者の間で重くされても巻き込まれないという趣旨である。イは「保証人の負担も加重される」とするので誤り。よって『アー正、イー誤』。

補足減縮されるのは「重いとき」だけで、保証人の負担が主たる債務より軽い分には問題ない。なお主たる債務が消滅すれば保証債務も消滅するのも付従性の表れ。

12債権譲渡(譲渡制限の意思表示)

債権の譲渡性及び譲渡制限の意思表示に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(譲渡制限の意思表示)をしたときは、これに反してされた債権の譲渡は無効となる。
  • 譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
譲渡制限の意思表示は、債権者と債務者の間で譲渡を制限する約束があるという意味にとどまり、譲渡そのものを当然に無効にする効力までは持たない。466条2項は、譲渡制限があっても債権譲渡の効力は妨げられないと明示している。

民法第466条債権の譲渡は、その効力を妨げられない。e-Gov原文

正しい
譲渡自体は有効としつつ、譲渡制限を知っていた、又は重大な過失で知らなかった譲受人まで全面的に保護する必要はない。そこで債務者は、そのような譲受人に対して履行を拒める。無効ではなく、債務者側の抗弁として処理する点が核心。

民法第466条知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができe-Gov原文

ひっかけ2020年施行の改正で『特約に反する譲渡=無効』ではなくなった。譲渡は有効、ただし債務者は悪意・重過失の相手に支払いを拒める、という二段構えで考える。

解説債権は原則として自由に譲り渡すことができる(民法466条1項)。かつては譲渡禁止特約に反する譲渡は無効と扱われたが、現行法では当事者が譲渡制限の意思表示をしたときであっても、債権の譲渡はその効力を妨げられない(同条2項)。アは『無効となる』とするので誤り。もっとも、債務者は誰に弁済すべきか混乱しないよう保護されており、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者はその債務の履行を拒むことができる(同条3項)。イはこの規定どおりで正しい。よって『アー誤、イー正』。譲渡の有効性と債務者の履行拒絶を切り離して理解するのがポイント。

補足債務者が履行を拒める相手は、譲渡制限を知っていた(悪意)か重大な過失で知らなかった譲受人に限られる。善意無重過失の譲受人には支払いを拒めない。

13債務引受(併存的・免責的)

債務引受に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する。
  • 免責的債務引受の引受人は、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:1(アー正、イー正)

正しい
併存的=従来の債務者も残る → 引受人は連帯して同一内容の債務を負担(正しい)

民法第470条債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する。e-Gov原文

正しい
免責的=従来の債務者が抜ける → 引受人が同一内容の債務を負担し債務者は免責(正しい)

民法第472条債務者は自己の債務を免れる。e-Gov原文

ひっかけ『併存』は並び立つ、『免責』は責任を免れる、と言葉どおり。従来の債務者が残るか抜けるかで2つを区別する。

解説債務引受には、従来の債務者がそのまま残る『併存的債務引受』と、従来の債務者が抜ける『免責的債務引受』がある。併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する(民法470条1項)。アはこのとおりで正しい。これに対し免責的債務引受の引受人は、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れる(同472条1項)。イもこのとおりで正しい。両者の核心の違いは、従来の債務者が連帯して残る(併存的)か、債務を免れて抜ける(免責的)かにある。よって『アー正、イー正』。

補足免責的債務引受は、債権者と引受人の契約でもできるが、その場合は債権者が債務者に通知した時に効力が生じる(472条2項)。

14弁済の充当

弁済の充当に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 同種の給付を目的とする数個の債務があり、弁済として提供した給付が全ての債務を消滅させるのに足りないときは、充当すべき債務を指定できるのは弁済を受領する者だけであり、弁済をする者は指定することができない。
  • 一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合に、全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、まず元本に充当し、次いで利息、費用の順に充当しなければならない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:4(アー誤、イー誤)

誤り
488条1項で弁済をする者がまず充当を指定できる → 弁済者は指定できないとする記述は誤り

民法第488条弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。e-Gov原文

誤り
489条1項では費用→利息→元本の順 → 元本を先とする記述は誤り

民法第489条これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。e-Gov原文

ひっかけ充当は『誰が決めるか』と『どの順で当てるか』の2点が問われる。指定はまず払う側、元本利息費用は費用から、と押さえる。

解説弁済の充当には2つの論点がある。第一に、同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務があり、給付が全ての債務を消滅させるのに足りないとき、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる(民法488条1項)。指定権はまず弁済をする者にあり、アの『受領する者だけ』は誤り。第二に、元本のほか利息及び費用を支払うべき場合に給付が不足するときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない(同489条1項)。順序は費用→利息→元本であって、イの『まず元本』は誤り。よって『アー誤、イー誤』。

補足当事者間で充当の順序について合意があるときは、その合意が優先する(490条)。488条・489条は合意がない場合のルール。

15物上保証人の求償権

物上保証人の求償権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 他人の債務を担保するため自己の不動産に抵当権を設定した物上保証人は、その債務を弁済しても、債務者に対して求償権を行使することはできない。
  • 他人の債務を担保するため質権を設定した者は、その債務を弁済し、又は質権の実行によって質物の所有権を失ったときは、債務者に対して求償権を有する。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
351条の求償権が372条で抵当権に準用 → 抵当権の物上保証人も求償できる → 記述は誤り

民法第372条第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する。e-Gov原文

民法第351条保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。e-Gov原文

正しい
351条で質権の物上保証人は弁済・質物喪失時に債務者へ求償権を有する → 記述は正しい

民法第351条保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。e-Gov原文

ひっかけ物上保証人は債務を負わず財産を差し出すだけだが、肩代わりで損をしたら債務者に取り戻せる。質権の規定(351条)が抵当権にも準用される点がカギ。

解説物上保証人とは、他人の債務を担保するために自分の財産に担保権を設定した人をいう。民法351条は、他人の債務を担保するため質権を設定した者が、その債務を弁済し、又は質権の実行によって質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有すると定める。イはこの条文どおりで正しい。そしてこの351条は、抵当権についても準用される(民法372条)。したがって抵当権を設定した物上保証人も、債務を弁済すれば債務者に対して求償できる。アは『求償権を行使することはできない』とするので誤り。物上保証人は自ら債務を負うわけではないが、担保の実行や弁済で損失を被ったときは債務者に取り戻せる、という結論を質権・抵当権いずれでも押さえる。よって『アー誤、イー正』。

補足求償権は『保証債務に関する規定に従い』認められるため、委託の有無などに応じて保証人の求償の規定(459条以下)が基準になる。

16占有権の取得

占有権の取得に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。
  • 占有権は、必ず登記をしなければ取得できない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
条文どおり

民法第180条自己のためにする意思をもって物を所持することe-Gov原文

誤り
要件・効果のすり替え

民法第180条自己のためにする意思をもって物を所持することe-Gov原文

ひっかけ占有権も登記しないと取得できない、と考えるとイを正しいと誤る。占有権は物を所持することで取得する。

解説占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する(民法180条)。ここでいう所持とは物を事実上支配している状態をいい、占有権はその事実状態そのものを保護する権利である。だから真の所有者かどうかや登記の有無とは関係なく成立する。アは180条の要件(意思+所持)をそのまま述べており正しい。イは『必ず登記をしなければ取得できない』とするが、登記は不動産の物権変動を第三者に対抗するための要件であって、占有権を取得するための条件ではないため誤り。『権利には登記が要る』という発想を占有権にまで広げない点がポイントである。

補足占有権は、実際に物を支配している事実を保護する権利であり、その物の真の所有者かどうかとは別に成立する。占有が侵害されたときは、占有回収の訴えなどの占有訴権で保護される(197条以下)。

17所有権の内容

所有権の内容に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 所有者は、法令の制限内で所有物を使用・収益・処分する権利を有する。
  • 所有者であっても、所有物を収益する権利は一切ない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
条文どおり

民法第206条自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利e-Gov原文

誤り
要件・効果のすり替え

民法第206条自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利e-Gov原文

ひっかけ所有権でも収益はできない、と取り違えるとイを正しいと誤る。所有権は使用・収益・処分の権利を含む。

解説所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する(民法206条)。使用は自ら使うこと、収益は貸して賃料を得るなど物から利益を上げること、処分は売却や廃棄などをいう。アはこの三つの権能を正しく述べており正しい。イは所有者でも収益する権利は一切ないとするが、206条が明文で収益を認めているため誤り。所有権が物に対する最も全面的な権利であることを押さえる。

補足所有権の行使も、法令による制限(建築規制や土地利用規制など)や、権利濫用の禁止・信義則といった一般原則の枠内で認められる。無制限ではない。

18共有物の変更

共有物の変更に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物にその形状又は効用の著しい変更を伴う変更を加えることができない。
  • 共有者の一人は、他の共有者の同意なく共有物にその形状又は効用の著しい変更を伴う変更を加えることができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
251条1項は、形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除き、共有物の変更には他の共有者の同意が必要とする。

民法第251条第1項各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。e-Gov原文

誤り
251条1項により、形状又は効用の著しい変更を伴う変更は、他の共有者の同意なしに単独ではできない。

民法第251条第1項各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。e-Gov原文

ひっかけ共有物は自分の持分だから自由に変えてよい、と考えるとイを正しいと誤る。共有物への著しい変更には他の共有者の同意が必要。

解説民法251条1項は、各共有者が他の共有者の同意なしに共有物へ変更を加えることを制限する一方、その形状又は効用の著しい変更を伴わないものをこの規律から除いている。アは著しい変更に同意が必要とするため正しい。イは著しい変更まで一人でできるとするため誤り。通常の管理や著しい変更を伴わない変更は持分価格の過半数で決するのに対し(252条1項)、著しい変更には他の共有者の同意が必要という境界を確認する。

補足令和3年の改正で、変更のうち「その形状または効用の著しい変更を伴わないもの」(軽微な変更)は、全員同意ではなく持分価格の過半数で決められることになった(251条1項かっこ書・252条1項)。

19共有物の管理

共有物の管理に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 共有物の管理に関する事項は、原則として各共有者の持分価格の過半数で決する。
  • 共有物の管理は、常に全共有者の同意がなければ決められない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
共有物の管理は、保存行為や変更行為と区別される。通常の管理事項は、各共有者の人数ではなく持分価格の過半数で決する。

民法第252条第1項各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決するe-Gov原文

誤り
全員同意が問題になりやすいのは共有物の変更などであり、管理事項は持分過半数が原則。すべて全員同意とすると管理と変更の区別を失う。

民法第252条第1項各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決するe-Gov原文

ひっかけ共有物のことは何でも全員一致でないと決められない、と考えるとイを正しいと誤る。管理は持分価格の過半数で決する。

解説共有物の管理に関する事項は、原則として各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する(民法252条1項)。頭数ではなく持分の価格が基準になる点に注意する。アはこのとおりで正しい。イは常に全共有者の同意が必要とするが、管理は過半数で足りるため誤り。共有物に変更を加えるには他の共有者の同意が要る(251条1項)のに対し、通常の管理は過半数で決するという段階の違いを押さえる。

補足共有物をめぐる行為は、変更(著しい変更)=全員の同意(251条)、管理=持分の過半数(252条)、保存(現状維持)=各共有者が単独ででき(252条)、と決定に必要な範囲が段階的に分かれている。

20混同による物権消滅

混同による物権消滅に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 同一物について所有権と他の物権が同一人に帰属したとき、その物権は原則として消滅する。
  • 所有権と他の物権が同一人に帰属しても、他の物権は常に存続する。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
条文どおり

民法第179条第1項所有権及び他の物権が同一人に帰属したときe-Gov原文

誤り
要件・効果のすり替え

民法第179条第1項所有権及び他の物権が同一人に帰属したときe-Gov原文

ひっかけ権利が同一人に集まっても物権は残る、と考えるとイを正しいと誤る。所有権と他の物権が同一人に帰属すると、その物権は原則として消滅する。

解説同一物について所有権と他の物権(抵当権や地上権など)が同一人に帰属したときは、その他の物権は原則として消滅する(民法179条1項)。これを混同という。たとえば自分の土地に付いていた抵当権を自分が取得すれば、その抵当権を存続させる意味がなくなるため消える。アはこのとおりで正しい。イは常に存続するとするが、179条1項の原則に反し誤り。ただし、その物権を存続させる必要がある場合には例外的に消滅しないこともある。

補足ただし、その物または他の物権が第三者の権利の目的であるときは、第三者を害さないよう、混同が生じても物権は消滅しない(179条1項ただし書)。例外がある点は、債権の混同(520条)と同じ考え方である。

21不動産物権変動の対抗要件

不動産に関する物権変動と登記に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 不動産の売買による所有権移転は、登記をしなければ、売主・買主の当事者間でも効力を生じない。
  • 不動産に関する物権の得喪・変更は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
登記は対抗要件で効力要件ではない

民法第177条その登記をしなければ、第三者に対抗することができないe-Gov原文

正しい
177条:対抗要件

民法第177条その登記をしなければ、第三者に対抗することができないe-Gov原文

ひっかけ登記は『第三者に勝つための切符』。当事者間の効力には要らない。

解説不動産の物権変動は、当事者の意思表示によって生じる(意思主義・176条)。だから登記をしなくても当事者間では所有権は移っており、『当事者間でも効力を生じない』とするアは誤り。一方、その物権変動を当事者以外の第三者に主張するには登記が必要である(177条・対抗要件)。だからイは正しい。登記は『効力要件』ではなく『対抗要件』、という整理がポイント。結論はアー誤、イー正。

補足登記の欠缺を主張する正当な利益のない者(背信的悪意者など)は、177条の『第三者』に当たらない(判例)。

22即時取得

動産の即時取得に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 取引行為によって、平穏・公然・善意・無過失で動産の占有を始めた者は、即時にその動産について行使する権利を取得する。
  • 即時取得は動産について認められる制度であり、不動産には適用されない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:1(アー正、イー正)

正しい
192条:動産取引の安全保護

民法第192条取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。e-Gov原文

正しい
条文が『動産』に限定

民法第192条取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は…即時にその動産について行使する権利を取得する。e-Gov原文

ひっかけ即時取得は『動産』限定。不動産は登記で守る世界。

解説即時取得は、無権利者から動産を取引で取得した者でも、平穏・公然・善意・無過失であれば、その動産の権利を取得できる制度である(民法192条)。動産取引の安全を図るためで、アは正しい。そしてこの制度は『動産』に限られる。不動産は登記によって権利関係が公示されるため、見た目を信じた者を保護する公信の原則は働かない。だからイも正しい。結論はアー正、イー正。

補足盗品・遺失物には特則があり、被害者・遺失者は一定期間内に回復を請求できる(193条)。

23共有物の管理に必要な持分価格

A、B、Cが、ある建物をそれぞれ2分の1、4分の1、4分の1の持分で共有している。共有物の管理及び保存に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 共有建物の通常の管理に関する事項は、持分価格が2分の1であるAが単独で賛成すれば決することができる。
  • 共有建物の現状を維持するために必要な保存行為は、各共有者が単独ですることができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:3(アー誤、イー正)

誤り
管理事項は人数ではなく持分価格の過半数で決する。Aの持分2分の1は過半数ではないため、A単独では決められない。

民法第252条第1項共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。e-Gov原文

正しい
252条5項により、保存行為について他の共有者の同意や持分価格の過半数は必要ない。

民法第252条第5項各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。e-Gov原文

ひっかけ『半数』と『過半数』を同じにせず、2分の1を超えているか確認する。

解説共有物の通常の管理に関する事項は、共有者の人数ではなく持分価格の過半数で決する(民法252条1項)。本問のAは持分2分の1であり、半数には達するが過半数ではないため、Aだけでは管理事項を決められない。一方、共有物の現状を維持する保存行為は各共有者が単独でできる(同条5項)。管理と保存では必要な決定方法が異なる。

補足過半数とは半数を超えることをいう。持分2分の1だけでは過半数に達しない。

24共有物の軽微な変更

共有物への変更に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 共有物の形状又は効用の著しい変更を伴う変更は、原則として、他の共有者の同意を得なければ加えることができない。
  • 共有物の形状又は効用の著しい変更を伴わない変更であっても、常に共有者全員の同意が必要である。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
251条1項は、形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除き、共有物への変更に他の共有者の同意を求めている。

民法第251条第1項各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。e-Gov原文

誤り
著しい変更を伴わない変更は251条1項の全員同意の対象から除かれ、252条1項の持分価格の過半数で決する。

民法第251条第1項各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。e-Gov原文

民法第252条第1項共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。e-Gov原文

ひっかけ『変更はすべて全員同意』ではない。形状又は効用の著しい変更を伴うかを確認する。

解説共有物への変更は一律に全員同意ではない。民法251条1項が他の共有者の同意を求める変更から、形状又は効用の著しい変更を伴わないものは除かれている。著しい変更には他の共有者の同意が必要だが、著しい変更を伴わない変更は252条1項により持分価格の過半数で決する。この境界を落とさないことが重要である。

補足令和3年民法改正により、形状又は効用の著しい変更を伴わない変更は持分価格の過半数で決められることが明確化された。

25共有物の管理と保存の事例判断

A、B、Cが、ある建物をそれぞれ5分の3、5分の1、5分の1の持分で共有している。共有物の管理及び保存に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 共有建物の通常の管理に関する事項は、持分価格が5分の3であるAが単独で賛成すれば決することができる。
  • 共有建物の保存行為は、持分割合にかかわらず、B又はCも単独ですることができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:1(アー正、イー正)

正しい
管理事項は持分価格の過半数で決し、Aの5分の3は2分の1を超える。

民法第252条第1項共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。e-Gov原文

正しい
保存行為は各共有者が単独ででき、持分割合の大小は問われない。

民法第252条第5項各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。e-Gov原文

ひっかけ共有者の人数ではなく持分価格を合計し、2分の1を超えるか確認する。

解説管理事項の決定では共有者の人数ではなく持分価格を見る。Aの5分の3は2分の1を超えるため、Aだけの賛成でも過半数に達する。一方、保存行為は持分割合の大小にかかわらず各共有者が単独でできる。

補足同じ一人の賛成でも、持分2分の1なら不足し、5分の3なら過半数に達する。

26共有物の管理における人数と持分

共有物の管理及び保存に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 共有物の通常の管理に関する事項は、各共有者の持分価格にかかわらず、共有者の人数の過半数で決する。
  • 共有物の保存行為も、各共有者の持分価格の過半数で決しなければすることができない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:4(アー誤、イー誤)

誤り
管理事項は共有者の人数ではなく、持分価格の過半数で決する。

民法第252条第1項共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。e-Gov原文

誤り
保存行為は各共有者が単独ででき、持分価格の過半数は必要ない。

民法第252条第5項各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。e-Gov原文

ひっかけ管理の『過半数』が人数基準か持分価格基準かを確認する。

解説共有物の通常の管理は、共有者の頭数ではなく持分価格の過半数で決する。保存行為はこれと異なり、各共有者が単独でできる。管理と保存を同じ多数決ルールで処理しないことが重要である。

補足管理・保存・著しい変更では必要な決定方法が異なる。条文上の行為分類を先に行う。

27物権変動の対抗要件(不動産・動産)と即時取得の横断確認

物権変動の対抗要件(不動産・動産)と即時取得を横断して確認する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • Aが所有する土地をBに売却した場合、Bは登記をしなければ、その土地の所有権の取得を第三者に対抗することができない。
  • 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:1(アー正、イー正)

正しい
不動産の対抗要件は登記 → 登記なし → 第三者に対抗不可

民法第177条その登記をしなければ、第三者に対抗することができない。e-Gov原文

正しい
192条の要件をすべて満たす → 即時に権利を取得する(正しい)

民法第192条取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。e-Gov原文

ひっかけ異なる制度の要件や法律効果を一つのルールとして混同しない。

解説物権変動の対抗要件(不動産・動産)と即時取得は、根拠条文と法律効果を分けて整理する。

補足各記述に付したe-Gov根拠を個別に確認する。

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この章の27問を、根拠条文つきで採点します。選択肢ごとの正誤を自分で判断してから答え合わせできます。

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