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民法・第12

法的紛争等の予防と対応の問題(20問)

この章を解く(20問)→

紛争対応は、契約責任ではない責任を切り出す

紛争が起きたときの民事責任をあつかう章(20問)です。不法行為と使用者責任・土地工作物責任・共同不法行為、不当利得、事務管理、債権者代位権、詐害行為取消権、不法行為の消滅時効を収録しています。契約によらない責任が中心で、成立要件と免責・求償・時効の組み合わせが問われます。

第12章は不法行為、使用者責任、土地工作物責任、不当利得、事務管理です。契約がない場面でも責任が発生するかを、成立要件と時効で確認します。

  • 不法行為は故意・過失、損害、因果関係を見る。
  • 使用者責任と土地工作物責任は責任主体を分ける。
  • 不当利得と事務管理を同じ救済として扱わない。

この章で確認する論点

12章では、不当利得の返還義務・不法行為と使用者責任・使用者責任の免責と求償・不動産物権変動の対抗要件・履行遅滞となる時期を中心に20問を収録しています。正解番号だけでなく、選択肢ごとの根拠と誤りの理由まで確認します。

民法を他資格と横断して確認する場合は、民法を学べる資格と無料問題も使えます。

  • 従業員が起こした損害でも、賠償を求められる相手は本人だけとは限らない。
  • 『使用者は絶対に免れない』も『被用者に一切求償できない』も、どちらも言い過ぎ。
  • 不動産で効くのは登記、引渡しで効くのは動産。ここを入れ替えると両方落とす。

この章で扱う条文

収録問題の解説が根拠として引用している条文の一覧です。リンク先はe-Gov法令検索の原文(解説内では該当箇所を逐語引用しています)。

民法177条412条423条424条697条703条709条715条717条719条720条722条723条724条

問題と解説を読む20問・答え付き

答え・解説つきで20問を読めます。自分で解いて試すには、上の「この章を解く」からどうぞ。

e-Gov逐語照合済み2025年12月〜2026年6月時点の法令に準拠
1不法行為と使用者責任

不法行為に基づく損害賠償に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
  • ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うことがある。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:1(アー正、イー正)

正しい
一般不法行為

民法第709条故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負うe-Gov原文

正しい
使用者責任

民法第715条第1項ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うe-Gov原文

ひっかけ従業員が起こした損害でも、賠償を求められる相手は本人だけとは限らない。

解説アは一般不法行為の要件そのものである。故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う(民法709条)。イは使用者責任で、ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う(同715条1項)。企業活動では、従業員が職務の遂行中に取引先や第三者へ損害を与える場面が生じ、その場合、加害行為をした従業員本人(709条)に加えて、使用者である会社も賠償責任を問われうる。被害者から見れば、賠償資力のある会社に請求できる意味が大きい。

補足『その事業の執行について』は外形から判断され、被用者の行為が職務の範囲内に見える限り、たとえ被用者が私利を図っていても使用者責任が及びうる。

2使用者責任の免責と求償

使用者責任に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 使用者は、被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたことを証明しても、使用者責任を免れることはできない。
  • 使用者責任が成立する場合であっても、使用者は、被用者に対して求償権を行使することは一切できない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:4(アー誤、イー誤)

誤り
免責事由

民法第715条第1項使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでないe-Gov原文

誤り
求償権

民法第715条第3項前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げないe-Gov原文

ひっかけ『使用者は絶対に免れない』も『被用者に一切求償できない』も、どちらも言い過ぎ。

解説アもイも誤りである。まずアについて、使用者責任は無条件の責任ではなく、使用者が被用者の選任およびその事業の監督について相当の注意をしたとき、または相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、責任を免れる(民法715条1項ただし書)。条文上は免責の余地があるため、『相当の注意を証明しても免れない』とするアは誤り(もっとも裁判実務でこの免責が認められる例はほとんどない)。次にイについて、第三者に賠償した使用者は、被用者に対して求償権を行使できる(同条3項)。『一切できない』とするイも誤り。ただし求償は、損害の公平な分担の見地から信義則上相当と認められる限度に制限されることがある。

補足求償は使用者から被用者への一方通行とは限らない。被用者が先に被害者へ全額賠償したときは、被用者の側から使用者へ負担を求める(いわゆる逆求償)ことも認められている。

3不動産物権変動の対抗要件

不動産に関する物権変動の対抗要件に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 不動産に関する物権の得喪及び変更は、登記をしなくても、当然に第三者に対抗することができる。
  • 不動産物権変動の対抗要件は引渡しであり、登記をする必要はない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:4(アー誤、イー誤)

誤り
登記が対抗要件

民法第177条その登記をしなければ、第三者に対抗することができないe-Gov原文

誤り
登記主義

民法第177条その登記をしなければ、第三者に対抗することができないe-Gov原文

ひっかけ不動産で効くのは登記、引渡しで効くのは動産。ここを入れ替えると両方落とす。

解説アもイも誤りである。不動産に関する物権の得喪および変更は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない(民法177条)。所有権を取得しても、登記を備えないかぎり第三者に『これは自分のものだ』と主張できないから、『登記がなくても当然に対抗できる』とするアは誤り。そして不動産の対抗要件は登記であって引渡しではないから、『対抗要件は引渡し』とするイも誤り。引渡しは動産物権変動の対抗要件である(同178条)。同一の不動産が二重に譲渡された場面では、先に登記を備えた譲受人が優先する。

補足177条の『第三者』は無制限ではない。実体を知りながら登記の欠けを主張するような背信的悪意者は第三者にあたらず、その者に対しては登記がなくても物権変動を対抗できる。

4不当利得の返還義務

不当利得に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
  • 不当利得の返還義務は、受けた利益が現存するか否かにかかわらず、常に受けた利益の全額に及ぶ。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
不当利得

民法第703条法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者e-Gov原文

誤り
現存利益

民法第703条その利益の存する限度において、これを返還する義務を負うe-Gov原文

ひっかけ善意の受益者が返すのは、今も残っている利益の分。受け取った全額ではない。

解説法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(受益者)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う(不当利得。民法703条)。アはこの条文どおりで正しい。ここで返還の範囲が問題になる。善意の受益者は、利益が手元に残っている限度(現存利益)を返せば足り、常に全額に及ぶわけではない。イは『現存するか否かにかかわらず常に全額』とする点で703条に反するので誤り。

補足悪意の受益者になると扱いが重くなり、受けた利益に利息を付けて返還し、なお損害があれば賠償責任まで負う(民法704条)。善意か悪意かで返還範囲が分かれる。

5履行遅滞となる時期

履行遅滞の責任を負う時期に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
  • 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けても遅滞の責任を負わない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)

正しい
確定期限

民法第412条第1項債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負うe-Gov原文

誤り
期限の定めなし

民法第412条第3項期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負うe-Gov原文

ひっかけ「いつから遅れか」は期限しだい。期限の定めがない債務は、請求された時点で遅滞に入る。

解説債務者がいつから履行遅滞の責任を負うかは、履行期の種類で変わる。確定期限があるときは、その期限の到来した時から遅滞となる(民法412条1項)。アはこのとおりで正しい。一方イは、期限を定めなかったときは履行の請求を受けても遅滞の責任を負わないとするが、412条3項は「履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う」と定めるため誤り。期限の定めがない債務でも、債権者の請求があればその時点から遅滞になる。よってアー正、イー誤となる。

補足不確定期限の場合は、期限到来後に請求を受けた時か、債務者が期限到来を知った時の、いずれか早い時から遅滞となる(民法412条2項)。

6債権者代位権

債権者代位権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 債権者は、自己の債権を保全する必要があるか否かにかかわらず、債務者に属する権利を代位行使することができる。
  • 債権者は、債務者の一身に専属する権利であっても、これを代位行使することができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)

誤り
保全の必要性

民法第423条第1項債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利e-Gov原文

誤り
代位の対象外

民法第423条第1項債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでないe-Gov原文

ひっかけ保全の必要があり、かつ一身専属でない権利。どちらか欠けても代位は届かない。

解説債権者代位権は、自己の債権を保全する必要があるときに、債務者に属する権利を代わって行使できる制度である(民法423条1項本文)。アは『保全の必要があるか否かにかかわらず』としており、必要性の要件を外しているので誤り。さらに、債務者の一身に専属する権利と差押えを禁じられた権利は対象から外れる(同項ただし書)。イは一身専属権も代位行使できるとしており誤り。両肢とも誤りで、組み合わせはアー誤・イー誤。

補足自己の債権の期限が来るまでは代位行使できない。ただし時効の完成猶予のような保存行為は期限前でもできる(423条2項)。

7土地工作物責任

土地の工作物の責任に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、まずその工作物の占有者が損害賠償責任を負う。
  • 工作物の占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をした場合でも、所有者が損害賠償責任を負うことはない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)

正しい
工作物責任

民法第717条第1項土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負うe-Gov原文

誤り
所有者の無過失責任

民法第717条第1項占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならないe-Gov原文

ひっかけ占有者が注意を尽くして免責されると、責任は所有者へ移る。

解説土地の工作物(建物・塀・看板など)の設置又は保存に瑕疵があって他人に損害が生じたときは、まずその工作物の占有者が損害賠償責任を負う(民法717条1項本文)。もっとも、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたことを証明すれば占有者は免責され、今度は所有者が賠償しなければならない(同項ただし書)。アはこの一次的な占有者責任を正しく述べており正しい。イは、占有者が免責された場合に所有者が責任を負う場面を否定しており誤り。

補足占有者は必要な注意の証明で免責される余地があるのに対し、所有者は注意を尽くしても免責されない無過失責任を負う。占有者と所有者で免責の可否が逆になる点に717条の特徴がある。

8共同不法行為

共同不法行為に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。
  • 共同行為者のうちいずれの者が損害を加えたかを知ることができないときも、各自が連帯して損害賠償責任を負う。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)

正しい
連帯責任

民法第719条第1項数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負うe-Gov原文

正しい
加害者不明

民法第719条第1項共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とするe-Gov原文

ひっかけ誰がやったか分からなくても、共同行為者は全員が全額の連帯責任を負う。

解説数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う(民法719条1項前段)。被害者は加害者の誰に対しても損害の全額を請求できる。さらに、共同行為者のうちいずれの者が損害を加えたかを知ることができないときも各自が連帯責任を負う(同項後段)。加害者を特定できない被害者を救済する規定である。アは前段、イは後段にそのまま当たり、いずれも正しい。

補足教唆者・幇助者も共同行為者とみなされて連帯責任を負う(719条2項)。なお全額を弁償した加害者は、他の加害者に対し各自の過失割合に応じた負担部分を求償できる。

9事務管理

事務管理に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 義務なく他人のために事務の管理を始めた者(管理者)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって事務管理をしなければならない。
  • 事務管理とは、法律上の義務に基づいて他人の事務を処理する場合をいう。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
事務管理

民法第697条第1項義務なく他人のために事務の管理を始めた者e-Gov原文

民法第697条第1項最も本人の利益に適合する方法によってe-Gov原文

誤り
義務なし

民法第697条第1項義務なく他人のために事務の管理を始めた者e-Gov原文

ひっかけ鍵は『義務なく』始めること。義務があれば事務管理ではない。

解説事務管理とは、義務なく他人のために事務の管理を始めることをいう(民法697条1項)。管理者は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法で管理しなければならず、本人の意思を知り又は推知できるときはその意思に従う(同条2項)。隣家が留守の間に台風で壊れた屋根を頼まれずに修理する場面が典型である。アは697条1項・2項どおりで正しい。イは事務管理を『法律上の義務に基づく』処理だと説明しており、『義務なく』という出発点を真逆にしているため誤り。

補足管理者は本人のために支出した有益な費用の償還を請求できる(民法702条1項)が、委任と違って報酬請求権はない。好意で他人の事務に踏み込む制度なので、実費は取り戻せても手間賃は出ない。

10正当防衛・緊急避難(不法行為)

不法行為における正当防衛・緊急避難に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利等を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、常に損害賠償責任を負う。
  • 他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合(緊急避難)には、正当防衛に関する規定は準用されない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:4(アー誤、イー誤)

誤り
正当防衛

民法第720条第1項他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わないe-Gov原文

誤り
緊急避難

民法第720条第2項前項の規定は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について準用するe-Gov原文

ひっかけアの『常に損害賠償責任を負う』は720条1項に正面から反する。イの『準用されない』も同条2項に反する。両方とも条文の逆を言っている。

解説他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利・法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない(正当防衛。民法720条1項)。だから『常に損害賠償責任を負う』とするアは誤り。さらに、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合(緊急避難)にも、この規定が準用される(同条2項)。よって準用を否定するイも誤り。やむを得ない防衛・避難行為について、不法行為責任が阻却される。

補足720条1項ただし書により、正当防衛で免責されても、被害者は元の不法行為者に対して損害賠償を請求できる。

11名誉毀損における原状回復

名誉毀損に対する救済に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。
  • 名誉毀損の場合に裁判所が命ずることができるのは金銭による損害賠償のみであり、謝罪広告等の名誉を回復する処分を命ずることはできない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
原状回復

民法第723条裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができるe-Gov原文

誤り
金銭賠償に限られない

民法第723条裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができるe-Gov原文

ひっかけ723条は損害賠償『に代えて、又はとともに』名誉回復処分を認める。アはそのとおりで正しく、『金銭賠償のみ』とするイが誤り。

解説他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる(民法723条)。謝罪広告の掲載などがその例である。アはこの条文どおりで正しい。これに対し、命じられるのは金銭賠償のみで名誉回復処分は命じられないとするイは誤り。金銭だけでは回復しにくい名誉という人格的利益を、原状回復的な処分で保護する趣旨である。

補足謝罪広告を命じる判決は、単に真相を告げ陳謝する程度のものなら良心の自由(憲法19条)に反せず、代替執行もできる(最大判昭31.7.4)。

12不法行為による損害賠償請求権の消滅時効

不法行為による損害賠償請求権の消滅時効に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。
  • 不法行為による損害賠償請求権は、不法行為の時から20年間行使しないときも、時効によって消滅する。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:1(アー正、イー正)

正しい
被害者側が損害と加害者を知った時から進む短期の時効。損害だけでなく加害者も知ったことが起算点になる。

民法第724条被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときe-Gov原文

正しい
被害者が損害や加害者を知らなくても、不法行為時から長期間経過すると法律関係を確定させる必要がある。そこで20年の客観的期間が置かれている。

民法第724条不法行為の時から二十年間行使しないときe-Gov原文

ひっかけ起算点の違う『3年』と『20年』が、それぞれ独立に時効を進めます。

解説不法行為による損害賠償請求権は、被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年で時効消滅する(民法724条1号)。これが主観的起算点で、アは正しい。これとは別に、不法行為の時から20年という客観的起算点の時効も走り(同条2号)、イもこの条文どおり正しい。3年と20年は片方が満ちた時点で権利が消える二本立てで、知らないまま20年を過ぎれば、加害者を特定する前でも請求権は失われる。

補足人の生命・身体を害する不法行為では、3年の側だけが5年に延びる(724条の2)。20年の方は動かないので、人身被害の時効は『5年・20年』の組み合わせになる。

13不法行為の消滅時効(総合)

不法行為による損害賠償請求権の消滅時効に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 不法行為による損害賠償請求権は、被害者が損害及び加害者を知った時から10年間行使しないときに、時効によって消滅する。
  • 不法行為による損害賠償請求権には、不法行為の時からの長期の時効はなく、損害及び加害者を知った時から起算する時効のみが適用される。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:4(アー誤、イー誤)

誤り
3年

民法第724条被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときe-Gov原文

誤り
20年

民法第724条不法行為の時から二十年間行使しないときe-Gov原文

ひっかけ『3年を10年と読み替える』『長期の時効を消す』という二つの細工が同時に入っています。

解説不法行為の損害賠償請求権で、損害および加害者を知った時から進む時効は3年であって10年ではない(民法724条1号)から、『10年』とするアは誤り。さらに、知った時からの時効とは別に、不法行為の時から20年の長期の時効が存在する(同条2号)ので、『長期の時効はない』とするイも誤り。短期は3年、長期は20年という数字と、起算点が二つある構造の両方を取り違えると、この組み合わせを外す。

補足20年の長期時効は、かつて『除斥期間(中断・停止のない期間制限)』と解されていたが、現行724条2号は明文で消滅時効と位置づけ、更新・完成猶予の対象とした。

14不当利得の返還義務(第12章・biz2-ch12-0015)

不当利得の返還義務に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 法律上の原因なく他人の財産等によって利益を受け他人に損失を及ぼした者は、利益が現存しているか否かにかかわらず、受けた利益の全額を返還しなければならない。
  • 不当利得返還義務は、契約に基づく債務であり、法律上の原因がある場合にのみ生じる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:4(アー誤、イー誤)

誤り
現存利益

民法第703条その利益の存する限度において、これを返還する義務を負うe-Gov原文

誤り
法律上の原因なし

民法第703条法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者e-Gov原文

ひっかけ不当利得は法律上の原因が「ない」ことから生まれ、善意者の返還は現存利益にとどまります。

解説不当利得の受益者がいくら返すかは善意か悪意かで分かれ、善意の受益者はその利益の存する限度(現存利益)で返還すれば足りる(民法703条)。だから『利益が現存しているか否かにかかわらず全額を返還しなければならない』とするアは、善意者の現存利益の扱いを無視していて誤り。そして不当利得は法律上の原因なく利益を受けた場合に生じるものだから、『契約に基づく債務であり、法律上の原因がある場合にのみ生じる』とするイは制度の前提を取り違えていて誤り。返還範囲と発生原因の両方で外れ、組み合わせは『アー誤、イー誤』。

補足現存利益で足りるのは善意の受益者に限られる。悪意の受益者は受けた利益に利息を付して返還し、なお損害があれば賠償責任まで負う(民法704条)。善意か悪意かが返還の重さを大きく分ける。

15詐害行為取消請求の受益者の主観

詐害行為取消請求に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを、裁判所に請求することができる。
  • 受益者がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときであっても、債権者は詐害行為取消請求をすることができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
裁判上の行使である点を確認

民法第424条第1項債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができるe-Gov原文

誤り
ただし書の善意受益者保護を裏返す

民法第424条第1項その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」というe-Gov原文

ひっかけ受益者が善意なら、債務者が害意でしていても取り消せない。ただし書がそこで効く。

解説詐害行為取消請求は、債務者が債権者を害すると知ってした行為について、債権者が裁判所に取消しを求める制度。アはその本文どおりで正しい。問題はイで、424条1項にはただし書があり、利益を受けた受益者がその行為の時に債権者を害することを知らなかった(善意の)ときは取り消せない。取引の安全のため、事情を知らずに財産を取得した者まで巻き込まないという趣旨。だから「受益者が善意でも取消請求できる」とするイは誤りで、組み合わせはアー○・イー×になる。

補足行使には期間制限もあり、債権者が害意を知った時から2年、行為の時から10年で訴えを提起できなくなる(426条)。

16詐害行為取消請求の対象行為と被保全債権

詐害行為取消請求の要件に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 財産権を目的としない行為については、詐害行為取消請求の規定は適用されない。
  • 債権者の債権が強制執行により実現することのできないものであっても、債権者は詐害行為取消請求をすることができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
取消対象の限定を確認

民法第424条第2項前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しないe-Gov原文

誤り
被保全債権の適格を裏返す

民法第424条第4項その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができないe-Gov原文

ひっかけ強制執行で実現できない債権を、詐害行為取消しで守ることはできない。4項がそこを切る。

解説アは424条2項そのままで、財産権を目的としない行為には詐害行為取消しの規定が及ばない。婚姻や離婚といった身分行為が責任財産の保全になじまないからで、正しい。イは被保全債権の側の話で、424条4項は、その債権が強制執行により実現できないものであるときは取消請求ができないと定める。詐害行為取消権は最終的に強制執行で満足を得るための制度なので、執行できない債権を保全する意味がない。よってイは誤り、答えはアー○・イー×。

補足詐害行為の前の原因に基づいて生じた債権であることも必要で、行為より後に発生した債権では取消請求できない(424条3項)。

17債権者代位権の保全必要性

債権者代位権に関する次のア・イの正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利を行使することができる。
  • 債務者の一身に専属する権利であっても、債権者は当然に代位行使することができる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
423条1項

民法第423条第1項債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利e-Gov原文

誤り
対象外の権利

民法第423条第1項債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでないe-Gov原文

ひっかけ債権者は債務者のどんな権利でも代位行使できる、と考えるとイを正しいと誤る。一身専属権や差押禁止権は対象外。

解説債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(被代位権利)を行使することができる(債権者代位権。民法423条1項本文)。アはこのとおりで正しい。もっとも、債務者の一身に専属する権利や差押えを禁じられた権利は、代位行使の対象から除かれる(同項ただし書)。したがって「一身に専属する権利であっても当然に代位行使できる」とするイは誤り。

補足一身専属権とは、離婚請求権や名誉毀損の慰謝料請求権など、行使するかを本人の意思に委ねるべき権利をいう。債権者代位権は責任財産の保全のための制度なので、こうした権利や差押禁止財産には及ばない。

18事務管理の方法と通知義務

事務管理に関する次のア・イの正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 義務なく他人のために事務の管理を始めた者は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって管理しなければならない。
  • 義務なく他人のために事務の管理を始めた者は、本人に不利な方法であっても、自己の利益に最も適合する方法で管理すれば足りる。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
事務管理の基本義務

民法第697条第1項最も本人の利益に適合する方法によってe-Gov原文

誤り
他人のための事務管理

民法第697条第1項義務なく他人のために事務の管理を始めた者e-Gov原文

ひっかけ頼まれず他人の事務を始めた者は自分の都合で管理してよい、と考えるとイを正しいと誤る。本人の利益に適合する方法で管理しなければならない。

解説義務なく他人のために事務の管理を始めた者(管理者)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理をしなければならない(事務管理。民法697条1項)。アはこのとおりで正しい。管理の基準は本人の利益であって管理者自身の利益ではないので、「自己の利益に最も適合する方法で管理すれば足りる」とするイは誤り。

補足管理者は、本人の意思を知っているときやこれを推知できるときは、その意思に従って管理しなければならない(697条2項)。また、管理を始めたことを遅滞なく本人に通知する義務なども負う(699条)。

19不当利得の返還範囲

不当利得に関する次のア・イの正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、不当利得返還義務を負う。
  • 善意の受益者であっても、受けた利益が現存しない場合を含め、常に受けた利益の全額を返還しなければならない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
不当利得の成立

民法第703条法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者e-Gov原文

誤り
常に全額ではない

民法第703条その利益の存する限度において、これを返還する義務を負うe-Gov原文

ひっかけ受益者は常に受けた利益の全額を返す、と考えるとイを正しいと誤る。善意の受益者は利益が現存する限度で返せば足りる。

解説法律上の原因なく他人の財産または労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(受益者)は、不当利得として返還義務を負う(民法703条前段)。アはこのとおりで正しい。もっとも、その返還範囲は「その利益の存する限度」(現存利益)であって、善意の受益者は利益が現存しない部分まで返す必要はない。したがって「現存しない場合を含め常に全額を返還しなければならない」とするイは誤り。

補足これは善意の受益者の返還範囲である。これに対し、悪意の受益者は、受けた利益に利息を付して返還し、なお損害があればその賠償責任も負う(704条)。善意か悪意かで返還範囲が大きく変わる。

20不法行為における過失相殺

不法行為による損害賠償と過失相殺に関する次のア・イの正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。

  • 不法行為について被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して損害賠償の額を定めることができる。
  • 不法行為による損害賠償については、損害賠償の方法及び中間利息の控除に関する規定は準用されない。
  1. アー正、イー正
  2. アー正、イー誤
  3. アー誤、イー正
  4. アー誤、イー誤
解答・解説を見る

正解:2(アー正、イー誤)

正しい
不法行為の過失相殺

民法第722条これを考慮して、損害賠償の額を定めることができるe-Gov原文

誤り
準用を否定するのは誤り

民法第722条第四百十七条及び第四百十七条の二の規定は、不法行為による損害賠償について準用するe-Gov原文

ひっかけ不法行為にも損害賠償の方法・中間利息控除の規定が準用される。

解説不法行為では、被害者に過失があれば、裁判所はこれを考慮して損害賠償額を定めることができる。あわせて、損害賠償の方法と中間利息控除に関する民法417条・417条の2も不法行為に準用される。過失相殺の有無だけでなく、準用規定も確認する。

補足債務不履行の過失相殺との違いを聞く問題にもつながる。

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