問1不法行為と使用者責任
不法行為に基づく損害賠償に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
- イ.ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うことがある。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
従業員の不法行為は、会社も責任を負うことがあります。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う(一般不法行為。民法709条)。さらに、ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う(使用者責任。同715条1項)。企業活動では従業員の行為で第三者に損害が生じることがあり、その場合、加害者本人だけでなく使用者である企業も責任を問われうる点が実務上重要である。
問2使用者責任の免責と求償
使用者責任に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.使用者は、被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたことを証明しても、使用者責任を免れることはできない。
- イ.使用者責任が成立する場合であっても、使用者は、被用者に対して求償権を行使することは一切できない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
「使用者は絶対に免れない」「求償できない」とどちらも誤りです。
使用者責任は無条件の責任ではない。使用者は、被用者の選任およびその事業の監督について相当の注意をしたとき、または相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、責任を免れる(民法715条1項ただし書。もっとも実務上免責はほとんど認められない)。また、使用者責任を負って第三者に賠償した使用者は、被用者に対して求償権を行使できる(同条3項。ただし信義則上、求償が制限されることがある)。免責の余地と求償権の双方を押さえる。
問3不動産物権変動の対抗要件
不動産に関する物権変動の対抗要件に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.不動産に関する物権の得喪及び変更は、登記をしなくても、当然に第三者に対抗することができる。
- イ.不動産物権変動の対抗要件は引渡しであり、登記をする必要はない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
不動産は『登記』、動産は『引渡し』が対抗要件です。
不動産に関する物権の得喪および変更は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない(民法177条)。つまり、所有権などを取得しても、登記を備えないと第三者にその権利を主張できない。これに対し、動産の物権変動の対抗要件は引渡しである(同178条)。二重譲渡などの場面では、先に登記を備えた者が優先する。対抗要件が不動産では登記、動産では引渡しという違いを正確に押さえる。
問4不当利得の返還義務
不当利得に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
- イ.不当利得の返還義務は、受けた利益が現存するか否かにかかわらず、常に受けた利益の全額に及ぶ。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
返す額は『今残っている利益』が基準です(善意の場合)。
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(受益者)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う(不当利得。民法703条)。善意の受益者は、利益が手元に残っている限度(現存利益)で返還すれば足りる。これに対し、悪意の受益者は、受けた利益に利息を付して返還し、なお損害があれば賠償責任を負う(同704条)。善意か悪意かで返還範囲が変わる点を押さえる。
問5履行遅滞となる時期
履行遅滞の責任を負う時期に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
- イ.債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けても遅滞の責任を負わない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
いつから『遅れ』になるかは、期限の種類で変わります。
債務者がいつから履行遅滞(債務不履行の一類型)の責任を負うかは、履行期の種類で異なる。確定期限があるときは期限の到来した時から(民法412条1項)、不確定期限があるときは期限到来後に請求を受けた時又は期限到来を知った時のいずれか早い時から(同2項)、期限を定めなかったときは履行の請求を受けた時から(同3項)、それぞれ遅滞の責任を負う。期限の種類ごとに遅滞の起算点を整理して覚える。
問6債権者代位権
債権者代位権に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.債権者は、自己の債権を保全する必要があるか否かにかかわらず、債務者に属する権利を代位行使することができる。
- イ.債権者は、債務者の一身に専属する権利であっても、これを代位行使することができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
代位できるのは『債権保全に必要』かつ『一身専属でない』権利です。
債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(被代位権利)を行使できる(債権者代位権。民法423条1項本文)。ただし、債務者の一身に専属する権利(離婚請求権等)及び差押えを禁じられた権利は対象とならない(同項ただし書)。また、原則として自己の債権の期限が到来していなければ行使できない(保存行為は例外。同条2項)。責任財産を保全するための制度であり、要件と対象に限界がある。
問7土地工作物責任
土地の工作物の責任に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、まずその工作物の占有者が損害賠償責任を負う。
- イ.工作物の占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をした場合でも、所有者が損害賠償責任を負うことはない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
工作物事故は、占有者→所有者の順で責任を負います。
土地の工作物(建物・塀・看板等)の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害が生じたときは、まずその工作物の占有者が損害賠償責任を負う(民法717条1項本文)。ただし、占有者が損害発生防止に必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない(同項ただし書)。所有者の責任は、注意を尽くしても免れない無過失責任である点が特徴である。占有者→所有者という二段の責任構造を押さえる。
問8共同不法行為
共同不法行為に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。
- イ.共同行為者のうちいずれの者が損害を加えたかを知ることができないときも、各自が連帯して損害賠償責任を負う。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
みんなで起こした不法行為は、各自が全額の責任を負います。
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う(民法719条1項前段)。被害者は各加害者に対し損害全額を請求できる。また、共同行為者のうちいずれの者が損害を加えたかを知ることができないときも同様に連帯責任を負う(同項後段。加害者不明の場合の被害者救済)。さらに教唆者・幇助者も共同行為者とみなされる(同条2項)。被害者保護のため広く連帯責任を認める規定である。
問9事務管理
事務管理に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.義務なく他人のために事務の管理を始めた者(管理者)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって事務管理をしなければならない。
- イ.事務管理とは、法律上の義務に基づいて他人の事務を処理する場合をいう。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
頼まれていないのに他人のために行う管理が『事務管理』です。
事務管理とは、義務なく他人のために事務の管理を始めることをいう(民法697条1項)。管理者は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって事務管理をしなければならず、本人の意思を知り又は推知できるときはその意思に従う(同条2項)。委任のような法的義務に基づく処理ではなく、他人の利益のために自発的に始める点が特徴である。管理者は費用償還請求権を有するが、原則として報酬請求権はない。
問10正当防衛・緊急避難(不法行為)
不法行為における正当防衛・緊急避難に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利等を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、常に損害賠償責任を負う。
- イ.他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合(緊急避難)には、正当防衛に関する規定は準用されない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
やむを得ない防衛・避難行為には、賠償責任の免除があります。
不法行為法における違法性阻却事由として、正当防衛と緊急避難がある。他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利・法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない(正当防衛。民法720条1項。ただし元の不法行為者への請求は妨げない)。また、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合(緊急避難)にも、この規定が準用される(同条2項)。やむを得ない防衛・避難行為の責任が阻却される。
問11名誉毀損における原状回復
名誉毀損に対する救済に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。
- イ.名誉毀損の場合に裁判所が命ずることができるのは金銭による損害賠償のみであり、謝罪広告等の名誉を回復する処分を命ずることはできない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
名誉毀損では、お金だけでなく謝罪広告等も命じられます。
不法行為の効果は原則として金銭賠償だが、名誉毀損には特則がある。他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる(民法723条)。謝罪広告の掲載などがその例である。金銭だけでは回復しにくい名誉という人格的利益を、原状回復的な処分により保護する趣旨である。
問12不法行為による損害賠償請求権の消滅時効
不法行為による損害賠償請求権の消滅時効に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。
- イ.不法行為による損害賠償請求権は、不法行為の時から20年間行使しないときも、時効によって消滅する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
不法行為の損害賠償には『3年と20年』の二つの時効があります。
不法行為による損害賠償請求権は、(1) 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間(主観的起算点。民法724条1号)、(2) 不法行為の時から20年間(客観的起算点。同条2号)、行使しないときは時効によって消滅する。なお、人の生命又は身体を害する不法行為については、(1)の期間が3年から5年に延長される(同724条の2)。債務不履行(166条)とは起算点・期間が異なる点を押さえる。
問13不法行為の消滅時効(総合)
不法行為による損害賠償請求権の消滅時効に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.不法行為による損害賠償請求権は、被害者が損害及び加害者を知った時から10年間行使しないときに、時効によって消滅する。
- イ.不法行為による損害賠償請求権には、不法行為の時からの長期の時効はなく、損害及び加害者を知った時から起算する時効のみが適用される。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
「知った時から10年」「長期の時効はない」はどちらも誤りです。
不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は、損害及び加害者を知った時から3年(主観的起算点。民法724条1号)と、不法行為の時から20年(客観的起算点。同条2号)の二本立てである。人の生命・身体を害する不法行為では主観的起算点が5年に延長される(同724条の2)。『知った時から10年』や『長期の時効がない』は誤りで、3年・20年(生命身体は5年・20年)という数字を正確に押さえる。
問14不当利得の返還義務
不当利得の返還義務に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.法律上の原因なく他人の財産等によって利益を受け他人に損失を及ぼした者は、利益が現存しているか否かにかかわらず、受けた利益の全額を返還しなければならない。
- イ.不当利得返還義務は、契約に基づく債務であり、法律上の原因がある場合にのみ生じる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
不当利得は『法律上の原因なく』得た利益の返還です。
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(受益者)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う(民法703条。不当利得)。善意の受益者は現存利益の返還で足りるが、悪意の受益者は受けた利益に利息を付して返還し、なお損害があれば賠償責任も負う(同704条)。契約が無効・取消し・解除となった場合の清算等で問題となる。
問15詐害行為取消請求の受益者の主観
詐害行為取消請求に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを、裁判所に請求することができる。
- イ.受益者がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときであっても、債権者は詐害行為取消請求をすることができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
善意の受益者でも取り消せると誤りやすい
詐害行為取消権は債務者の責任財産を保全する制度です。もっとも、取引の安全のため、利益を受けた受益者が行為の時に債権者を害することを知らなかった(善意の)場合には取消しを請求できません。原則(取消可)と例外(善意受益者は取消不可)をセットで覚えることが重要です。
問16詐害行為取消請求の対象行為と被保全債権
詐害行為取消請求の要件に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.財産権を目的としない行為については、詐害行為取消請求の規定は適用されない。
- イ.債権者の債権が強制執行により実現することのできないものであっても、債権者は詐害行為取消請求をすることができる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
執行できない債権でも取り消せると誤りやすい
詐害行為取消権は責任財産の保全制度なので、対象も被保全債権も「財産的・執行可能」であることが前提です。身分行為などの財産権を目的としない行為は対象外であり、また強制執行で実現できない債権では取消請求ができません。制度の趣旨(執行による満足の確保)から要件を理解しましょう。