問1準拠法の選択(当事者自治の原則)
国際的な契約の準拠法に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.法律行為の成立及び効力は、当事者がその法律行為の当時に選択した地の法による。
- イ.国際的な取引契約であっても、当事者が契約の準拠法を選択することはできない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 通則法7条の当事者自治
法の適用に関する通則法第7条「法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による」e-Gov原文
- イ.誤り
- 通則法7条が当事者自治を認める
法の適用に関する通則法第7条「当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による」e-Gov原文
ひっかけ国際契約の準拠法は法律で一律に決まる、と思うとイを正しいと誤る。原則は当事者が選べる。
解説国際的な契約の準拠法は、原則として当事者が選択した地の法による(法の適用に関する通則法7条)。これを当事者自治の原則という。どの国の法を適用するかを当事者が契約で決められる。アは当事者自治どおりで正しく、イは選択できないとした点で誤り。
補足もっとも当事者自治には修正があり、消費者契約(11条)や労働契約(12条)では、弱い立場の当事者を守るため、選択した法のほかに常居所地法・最密接関係地法の強行規定が割り込む。
問2準拠法の選択がない場合(最密接関係地法)
準拠法の選択がない場合に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.当事者による準拠法の選択がないときは、法律行為の成立及び効力は、常に法廷地である日本の法による。
- イ.当事者による準拠法の選択がないときは、法律行為の成立及び効力は、その法律行為に最も密接な関係がある地の法による。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 通則法8条1項の最密接関係地法
法の適用に関する通則法第8条第1項「当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による」e-Gov原文
- イ.正しい
- 通則法8条1項
法の適用に関する通則法第8条第1項「当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による」e-Gov原文
ひっかけ準拠法を決めていなければ日本の裁判所では日本法、と考えるとアを正しいと誤る。最密接関係地法による。
解説当事者が準拠法を選択していないときは、法廷地法(日本法)に直行するのではなく、その法律行為に最も密接な関係がある地の法による(法の適用に関する通則法8条1項)。アは常に日本法とした点で誤り、イは最密接関係地法どおりで正しい。
補足最密接関係地は、特徴的な給付を一方のみが行う契約では、その給付を行う当事者の常居所地法(事業者なら事業所所在地法)が最密接関係地法と推定される(8条2項)。
問3不法行為の準拠法
渉外的な不法行為の準拠法に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、常に加害行為が行われた地の法による。
- イ.渉外的な不法行為には準拠法という概念がなく、日本の裁判所では常に日本法が適用される。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
- ア.誤り
- 通則法17条本文は結果発生地法
法の適用に関する通則法第17条「加害行為の結果が発生した地の法による」e-Gov原文
- イ.誤り
- 通則法17条が不法行為の準拠法を定める
法の適用に関する通則法第17条「不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、加害行為の結果が発生した地の法による」e-Gov原文
ひっかけ不法行為は起きた場所の法、あるいは日本の裁判なら日本法、という思い込みで両方とも誤る。原則は結果発生地法。
解説渉外的な不法行為によって生ずる債権の成立・効力は、原則として加害行為の結果が発生した地の法による(法の適用に関する通則法17条本文)。準拠法の概念がないわけでも、加害行為地に固定されるわけでもない。アは加害行為地に固定した点で誤り、イは準拠法概念を否定した点で誤り。
補足ただし結果の発生がその地で通常予見できないものであったときは、例外的に加害行為が行われた地の法による(17条ただし書)。結果発生地が原則、加害行為地が例外の関係になる。
問4消費者契約の準拠法の特例
渉外的な消費者契約の準拠法に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.消費者契約について選択された準拠法が消費者の常居所地法以外の法であっても、消費者がその常居所地法中の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を事業者に表示したときは、その強行規定も適用される。
- イ.消費者契約の成立及び効力について当事者による準拠法の選択がないときは、消費者の常居所地法による。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 通則法11条1項の消費者保護特則
法の適用に関する通則法第11条第1項「消費者がその常居所地法中の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を事業者に対し表示したときは」e-Gov原文
- イ.正しい
- 通則法11条2項
法の適用に関する通則法第11条第2項「第七条の規定による選択がないときは、第八条の規定にかかわらず、当該消費者契約の成立及び効力は、消費者の常居所地法による」e-Gov原文
ひっかけ選んだ準拠法がすべてを支配する、と考えるとアやイの消費者保護の割り込みを見落とす。
解説消費者契約には準拠法の特例がある。事業者に有利な法が選択されても、消費者が常居所地法中の強行規定の適用意思を表示すれば、その強行規定も適用される(法の適用に関する通則法11条1項)。選択がないときは最密接関係地法ではなく消費者の常居所地法による(同条2項)。アもイも特例どおりで正しい。
補足同様の保護は労働契約にもあり、選択された法が最密接関係地法以外でも、労働者が最密接関係地法中の強行規定の適用意思を表示すれば、その強行規定が適用される(12条)。
問5国際裁判管轄(被告の住所等)
国際裁判管轄に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.人に対する訴えについて、その被告の住所が日本国内にあるときは、日本の裁判所が管轄権を有する。
- イ.法人に対する訴えについては、その主たる事務所又は営業所が日本国内にあるときは、日本の裁判所が管轄権を有する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 民訴法3条の2第1項
民事訴訟法第3条の2第1項「その住所が日本国内にあるとき」e-Gov原文
- イ.正しい
- 民訴法3条の2第3項
民事訴訟法第3条の2第3項「その主たる事務所又は営業所が日本国内にあるとき」e-Gov原文
ひっかけ国際取引の裁判はどこの国でも起こせる、と考えると管轄の基準を見落とす。原則は被告の所在地国。
解説国際裁判管轄の基本は被告の所在地にある。人に対する訴えは被告の住所が日本国内にあるとき(民事訴訟法3条の2第1項)、法人に対する訴えは主たる事務所又は営業所が日本国内にあるとき(同条3項)に、日本の裁判所が管轄権を持つ。アもイも条文どおりで正しい。
補足被告の所在地以外にも、契約上の債務履行地(3条の3)や不法行為地などの特別の管轄原因があり、さらに事案により日本での審理が当事者間の衡平を欠くときは、訴えが却下されることもある(特別の事情による却下。3条の9)。
問6国際裁判管轄の合意
国際裁判管轄の合意に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.当事者は、合意により、いずれの国の裁判所に訴えを提起することができるかについて定めることができる。
- イ.国際裁判管轄に関する合意は、口頭による合意であっても効力を生じる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 民訴法3条の7第1項
民事訴訟法第3条の7第1項「いずれの国の裁判所に訴えを提起することができるかについて定めることができる」e-Gov原文
- イ.誤り
- 民訴法3条の7第2項の書面要件
民事訴訟法第3条の7第2項「書面でしなければ、その効力を生じない」e-Gov原文
ひっかけ口約束でも管轄を決められる、と考えるとイを正しいと誤る。管轄合意には書面が要る。
解説当事者は、合意によりどの国の裁判所に訴えを提起できるかを定めることができる(民事訴訟法3条の7第1項)が、その合意は一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ書面でしなければ効力を生じない(同条2項)。アは合意の自由どおりで正しく、イは口頭でも有効とした点で誤り。
補足合意を記録した電磁的記録によってされたときも書面によるものとみなされる(3条の7第3項)。メール等の電子データでの合意も書面要件を満たしうる。
問7外国判決の承認
外国裁判所の確定判決の効力に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.外国裁判所の確定判決は、要件を問わず、当然に日本においてその効力を有する。
- イ.外国判決が日本で効力を有するためには、その判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないことが必要である。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 民訴法118条の承認要件
民事訴訟法第118条「次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する」e-Gov原文
- イ.正しい
- 民訴法118条3号の公序要件
民事訴訟法第118条第3号「判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと」e-Gov原文
ひっかけ外国の判決でも確定すればそのまま日本で通用する、と考えるとアを正しいと誤る。承認には4つの要件がある。
解説外国裁判所の確定判決は、自動的に日本で効力を持つわけではなく、民事訴訟法118条の各号の要件(外国裁判所の裁判権、被告への送達又は応訴、公序良俗に反しないこと、相互の保証)をすべて満たす場合に限り効力を有する。アは無条件に効力を認めた点で誤り、イは公序要件どおりで正しい。
補足118条の要件を満たせば判決の効力は自動的に承認されるが、強制執行をするには別に日本の裁判所の執行判決を得る必要がある。承認と執行は別の段階になる。
問8仲裁合意と本案訴訟(妨訴抗弁)
仲裁合意に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.仲裁合意の対象となる民事上の紛争について訴えが提起されたときは、受訴裁判所は、被告の申立てにより、原則として訴えを却下しなければならない。
- イ.仲裁合意があっても、その対象となる紛争について訴えが提起されれば、裁判所は常に本案について審理しなければならない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 仲裁法14条1項の妨訴抗弁
仲裁法第14条第1項「受訴裁判所は、被告の申立てにより、訴えを却下しなければならない」e-Gov原文
ひっかけ仲裁の約束があっても裁判は受けてもらえる、と考えるとイを正しいと誤る。被告が求めれば訴えは却下される。
解説仲裁合意がある紛争について一方が裁判所に訴えを提起しても、相手方(被告)が申し立てれば、受訴裁判所は原則として訴えを却下しなければならない(仲裁法14条1項)。これを仲裁合意の妨訴抗弁という。アは妨訴抗弁どおりで正しく、イは常に本案審理が必要とした点で誤り。
補足ただし却下されないのは、仲裁合意が無効・取消し等で効力を有しないときや、被告が本案について弁論をした後に申し立てたときなどで(14条1項各号)、抗弁のタイミングも問われる。
問9仲裁判断の効力
仲裁判断の効力に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.仲裁判断は、当事者間の合意にすぎず、確定判決のような効力を持つものではない。
- イ.仲裁判断は、仲裁地が日本国内にあるかどうかを問わず、確定判決と同一の効力を有する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- イ.正しい
- 仲裁法45条1項
仲裁法第45条第1項「仲裁判断(仲裁地が日本国内にあるかどうかを問わない。以下この章において同じ。)は、確定判決と同一の効力を有する」e-Gov原文
ひっかけ仲裁はあくまで私的な話し合いの結果、と考えるとアを正しいと誤る。仲裁判断は確定判決と同じ効力を持つ。
解説仲裁判断は、仲裁地が日本国内にあるかどうかを問わず、確定判決と同一の効力を有する(仲裁法45条1項)。単なる当事者間の合意ではなく、裁判の確定判決に匹敵する効力が認められる。アは効力を否定した点で誤り、イは条文どおりで正しい。
補足ただし仲裁判断に基づいて強制執行するには、別に裁判所の執行決定を得る必要がある(46条)。確定判決と同一の効力があることと、執行のために決定が要ることは別の問題になる。
問10準拠法の選択がない場合の推定(特徴的給付・不動産)
準拠法の選択がない場合の最密接関係地法の推定に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.準拠法の選択がない契約で、特徴的な給付を当事者の一方のみが行うときは、その給付を行う当事者の常居所地法が最密接関係地法と推定される。
- イ.準拠法の選択がない場合でも、不動産を目的物とする法律行為については、その不動産の所在地法が最密接関係地法と推定される。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 通則法8条2項の特徴的給付の推定
法の適用に関する通則法第8条第2項「その給付を行う当事者の常居所地法」e-Gov原文
- イ.正しい
- 通則法8条3項の不動産の推定
法の適用に関する通則法第8条第3項「その不動産の所在地法を当該法律行為に最も密接な関係がある地の法と推定する」e-Gov原文
ひっかけ最密接関係地は裁判官が裁量で決める、と考えると条文上の推定規定を見落とす。給付や目的物の種類で推定が働く。
解説準拠法の選択がない場合の最密接関係地法は、推定規定で具体化される。特徴的な給付を一方のみが行う契約ではその給付を行う当事者の常居所地法(法の適用に関する通則法8条2項)、不動産を目的物とする法律行為ではその不動産の所在地法(同条3項)が、それぞれ最密接関係地法と推定される。アもイも推定規定どおりで正しい。
補足物権そのものの準拠法は別に定められており、動産・不動産に関する物権は、契約の準拠法とは切り離して、その目的物の所在地法による(13条)。