問1正当防衛と過剰防衛
刑法上の正当防衛に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
- イ.防衛の程度を超えた行為(過剰防衛)は、必ずその刑が免除される。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 正当防衛は違法性阻却
刑法第36条「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため」e-Gov原文
- イ.誤り
- 「必ず免除」は誤り(任意的減免)
刑法第36条「情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる」e-Gov原文
ひっかけ過剰防衛は『任意的』減免。中止犯の必要的減免と区別する。
解説正当防衛は、急迫不正の侵害に対し、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為で、違法性が阻却され罰しない(36条1項)。防衛の程度を超えた過剰防衛は、情状により刑を減軽又は免除できる(任意的減免、同2項)。中止犯(必要的減免)と任意・必要の別を対比する。
補足『急迫不正の侵害』が要件。過去の侵害や将来の侵害には正当防衛は成立しない。
問2緊急避難
刑法上の緊急避難に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.現在の危難を避けるためにやむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。
- イ.緊急避難の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 法益権衡が要件
刑法第37条「これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り」e-Gov原文
- イ.正しい
- 特別義務者には不適用
刑法第37条「業務上特別の義務がある者には、適用しない」e-Gov原文
ひっかけ緊急避難は『法益権衡』が必要。正当防衛(不正対正)と異なり正対正の関係。
解説緊急避難は、生命・身体・自由・財産に対する現在の危難を避けるためのやむを得ない行為で、生じた害が避けようとした害を超えない場合に限り罰しない(法益権衡、37条1項)。程度を超えた過剰避難は任意的に減免される。業務上特別の義務がある者(警察官等)には適用されない(同2項)。
補足正当防衛は『急迫不正の侵害』への反撃、緊急避難は『現在の危難』からの避難で、第三者に害が及ぶ点が異なる。
問3故意と違法性の意識
刑法上の故意に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.法律を知らなかったときは、そのことによって、罪を犯す意思がなかったものとされる。
- イ.罪を犯す意思がない行為は、原則として罰しないが、法律に特別の規定がある場合はこの限りでない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 故意がなかったとされるとするのは誤り
刑法第38条「罪を犯す意思がなかったとすることはできない」e-Gov原文
ひっかけ『法律を知らなかった』は故意を否定しない。事実の錯誤とは扱いが異なる。
解説刑法は故意犯処罰が原則で、罪を犯す意思(故意)のない行為は、過失犯処罰規定等の特別の規定がない限り罰しない(38条1項)。法律の不知(違法性の意識の欠如)は故意を阻却しないが、情状により刑を減軽できる(同3項)。事実の錯誤と法律の錯誤の区別が重要。
補足重い罪に当たる事実を知らなかった者は、その重い罪では処断できない(38条2項、事実の錯誤)。
問4責任年齢と事実の錯誤
刑法上の責任年齢及び事実の錯誤に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.16歳に満たない者の行為は、罰しない。
- イ.重い罪に当たるべき行為をしたが、行為の時にその重い罪に当たる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断される。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
- イ.誤り
- 重い罪で処断されるとするのは誤り
刑法第38条「その重い罪によって処断することはできない」e-Gov原文
ひっかけ刑事責任年齢は『14歳』。少年法の適用年齢(20歳未満)とは別。
解説14歳に満たない者の行為は責任能力がなく罰しない(41条)。行為時に重い罪に当たる事実を知らなかった者は、その重い罪で処断できない(38条2項、抽象的事実の錯誤)。責任年齢(刑事未成年)と少年法の適用年齢は別概念である点に注意。
補足心神喪失者の行為は罰せず、心神耗弱者の行為は刑を減軽する(39条)。
問5未遂犯と中止犯
刑法上の未遂に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者(未遂犯)は、その刑を減軽することができる。
- イ.自己の意思により犯罪を中止した場合(中止犯)であっても、その刑を減軽することができるにとどまり、免除されることはない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- イ.誤り
- 免除されないとするのは誤り
刑法第43条「自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する」e-Gov原文
ひっかけ未遂犯は『任意的減軽』、中止犯は『必要的減免』。扱いが異なる。
解説犯罪の実行に着手して結果を生じなかった未遂犯は、刑を減軽することができる(任意的減軽、43条本文)。これに対し、自己の意思により犯罪を中止した中止犯は、刑を必ず減軽又は免除する(必要的減免、同ただし書)。中止犯は未遂犯の一種だが、自発的中止により有利に扱われる。
補足中止犯には『自己の意思により』(任意性)と『中止した』(中止行為)が必要。
問6共同正犯と教唆犯
刑法上の共犯に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.2人以上共同して犯罪を実行した者であっても、現実に実行行為を分担した者だけが正犯となる。
- イ.人を教唆して犯罪を実行させた者(教唆犯)には、正犯の刑を科する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 実行分担者だけとするのは誤り
刑法第60条「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」e-Gov原文
- イ.正しい
- 教唆は正犯と同じ法定刑
刑法第61条「人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する」e-Gov原文
ひっかけ共同正犯は『一部実行全部責任』。共謀共同正犯も判例上認められる。
解説共同正犯は、2人以上が共同して犯罪を実行した場合に、各人がすべて正犯として全部の責任を負う(60条、一部実行全部責任)。教唆犯は、人をそそのかして犯罪を実行させた者で、正犯の刑を科される(61条)。共同正犯・教唆犯・幇助犯の区別と処断が頻出。
補足教唆犯・幇助犯が成立するには、正犯が実行に着手していることが必要(共犯従属性)。
問7幇助犯
刑法上の幇助犯(従犯)に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.正犯を幇助した者(従犯)には、正犯と同じ刑を科する。
- イ.従犯を教唆した者には、正犯の刑を科する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
ひっかけ幇助犯(従犯)は『減軽』、教唆犯は『正犯の刑』。共犯で処断が異なる。
解説正犯を幇助した者は従犯となり(62条1項)、その刑は正犯の刑を減軽したものとなる(63条)。教唆犯が『正犯の刑』を科されるのと異なる。従犯を教唆した者には従犯の刑を科する(62条2項)。共犯の中で処断の軽重を整理する(教唆=正犯の刑、幇助=減軽)。
補足幇助は、正犯の実行を物理的・精神的に容易にする行為をいう。
問8間接教唆と共同正犯
刑法上の間接教唆及び共同正犯に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.教唆者を教唆した者(間接教唆)についても、教唆犯と同様に正犯の刑を科する。
- イ.2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 間接教唆も処罰される
刑法第61条「教唆者を教唆した者についても、前項と同様とする」e-Gov原文
ひっかけ間接教唆も処罰される。教唆の教唆まで広がる点に注意。
解説教唆者を教唆した間接教唆も、教唆犯と同様に正犯の刑を科される(61条2項)。共同正犯は共同実行者をすべて正犯とする(60条)。共犯には、共同正犯・教唆犯・幇助犯(従犯)があり、それぞれ成立要件と処断が異なる。
補足幇助者を教唆した者は従犯の刑、従犯を幇助した場合の扱いなど、組み合わせを整理する。
問9窃盗罪と強盗罪の構成要件
刑法上の窃盗罪及び強盗罪に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪となる。
- イ.暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪となる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 占有者の意思に反する財物の占有移転
刑法第235条「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし」e-Gov原文
- イ.正しい
- 反抗を抑圧する暴行・脅迫が手段
刑法第236条「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし」e-Gov原文
ひっかけ窃盗は『窃取』、強盗は『暴行・脅迫+強取』。手段で区別。
解説窃盗罪(235条)は他人の財物を窃取する罪で、強盗罪(236条)は反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫を手段として財物を強取する罪。両者は手段(暴行・脅迫の有無)で区別される。財産犯の基本類型として重要。
補足暴行・脅迫が財物奪取の手段でなければ、暴行罪等と窃盗罪の併合となりうる。
問10詐欺罪における財物と財産上の利益
刑法上の詐欺罪に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.人を欺いて財物を交付させた者は、詐欺の罪となる。
- イ.人を欺いて財産上不法の利益を得る行為(いわゆる利益詐欺)は、詐欺罪として処罰されない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 欺罔により財物を交付させる
刑法第246条「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する」e-Gov原文
- イ.誤り
- 財産上の利益を得る詐欺も処罰される
刑法第246条「財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする」e-Gov原文
ひっかけ詐欺は『財物(1項)』も『財産上の利益(2項)』も処罰。
解説詐欺罪は、財物を交付させる1項詐欺(246条1項)と、財産上不法の利益を得る2項詐欺(同2項)からなる。欺罔行為→相手方の錯誤→錯誤に基づく交付(処分行為)という因果関係が必要。窃盗・強盗と同様、財物に対する罪と利益に対する罪の両方を処罰する。
補足電子計算機使用詐欺罪(246条の2)は、人を欺かずに情報処理を不正に行う類型。
問11横領罪と遺失物等横領罪
刑法上の横領罪及び遺失物等横領罪に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.自己の占有する他人の物を横領する行為と、占有を離れた他人の物を横領する行為は、いずれも同一の罪として同一の法定刑で処罰される。
- イ.自己の占有する他人の物を横領した者は、横領の罪となる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 占有を離れた物の横領は別罪で軽い
刑法第254条「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は」e-Gov原文
- イ.正しい
- 委託された他人の物の領得
刑法第252条「自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の拘禁刑に処する」e-Gov原文
ひっかけ横領(委託物・5年)と遺失物等横領(占有離脱物・1年)は別罪。
解説横領罪(252条)は、委託信任関係に基づき自己が占有する他人の物を領得する罪(5年以下の拘禁刑)。遺失物等横領罪(254条)は、委託関係なく占有を離れた他人の物(落とし物等)を領得する罪で、法定刑が軽い(1年以下の拘禁刑等)。占有が委託に基づくか否かで区別される。
補足業務上横領罪(253条)は、業務上占有する物の横領で、より重く処罰される。
問12背任罪の成立要件
刑法上の背任罪に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.背任罪は、他人のためにその事務を処理する者が、専ら本人の利益を図る目的でその任務に背く行為をした場合に成立する。
- イ.背任罪が成立するためには、任務に背く行為があれば足り、本人に財産上の損害を加えたことは必要でない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
- ア.誤り
- 本人の利益を図る目的では背任にならない
刑法第247条「自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし」e-Gov原文
ひっかけ背任は『図利加害目的』+『任務違背』+『財産上の損害』が要件。
解説背任罪(247条)は、他人のために事務を処理する者が、①図利加害目的(自己・第三者の利益を図り、又は本人に損害を加える目的)で、②その任務に背く行為をし、③本人に財産上の損害を加えたときに成立する。本人の利益を図る目的しかない場合や損害がない場合は成立しない。
補足会社役員等の特別背任罪(会社法960条)は、より重く処罰される。
問13住居侵入罪と不退去罪
刑法上の住居侵入等の罪に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入した者は、住居侵入等の罪となる。
- イ.要求を受けたにもかかわらず、人の住居等から退去しなかった者も、処罰される。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 正当な理由のない侵入が処罰される
刑法第130条「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し」e-Gov原文
- イ.正しい
- 退去要求を無視する不作為も処罰
刑法第130条「要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は」e-Gov原文
ひっかけ130条は『侵入(作為)』と『不退去(不作為)』の両方を処罰。
解説住居侵入等の罪(130条)は、①正当な理由なく住居・邸宅・建造物・艦船に侵入する住居侵入罪(前段)と、②退去の要求を受けたのに退去しない不退去罪(後段)からなる。不退去罪は不作為による犯罪の典型例。住居等の事実上の平穏・管理権を保護する。
補足侵入が認められれば、その後退去しなくても不退去罪は別個には成立しない(住居侵入罪に吸収)。
問14公文書偽造罪と行使の目的
刑法上の公文書偽造罪に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.行使の目的で、公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書を偽造した者は、公文書偽造の罪となる。
- イ.公文書偽造罪は、行使の目的がない場合であっても成立する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 行使の目的をもって公文書を偽造する罪
刑法第155条「行使の目的で、次の各号に掲げるいずれかの行為をした者は」e-Gov原文
- イ.誤り
- 行使の目的がなければ成立しない
刑法第155条「行使の目的で、次の各号に掲げるいずれかの行為をした者は、一年以上十年以下の拘禁刑に処する」e-Gov原文
ひっかけ文書偽造罪は『行使の目的』が必要な目的犯。
解説公文書偽造罪(155条)は、行使の目的で公務所・公務員の作成すべき文書を偽造する罪(有印は1年以上10年以下の拘禁刑)。文書偽造罪は『行使の目的』を要する目的犯である。文書に対する公共の信用を保護する。私文書偽造罪(159条)も同様に行使の目的を要する。
補足偽造文書を実際に使うと、別途偽造公文書行使罪(158条)が成立する。
問15強盗罪と詐欺罪における財産上の利益
刑法上の強盗罪及び詐欺罪における財産上の利益に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.強盗罪は、他人の財物を強取した場合にのみ成立し、暴行・脅迫を用いて財産上不法の利益を得る行為は、強盗罪としては処罰されない。
- イ.人を欺いて財産上不法の利益を得た者も、財物を交付させた場合と同様に詐欺の罪として処罰される。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 利益強盗も強盗罪として処罰される
刑法第236条「財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする」e-Gov原文
- イ.正しい
- 利益詐欺も詐欺罪として処罰される
刑法第246条「財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする」e-Gov原文
ひっかけ強盗・詐欺・恐喝はいずれも『2項(財産上の利益)』も処罰。
解説強盗罪・詐欺罪・恐喝罪はいずれも、財物を対象とする1項の罪と、財産上不法の利益を対象とする2項の罪(利益強盗・利益詐欺・利益恐喝)を定める。財物の移転だけでなく、債務免除や役務提供等の利益の移転も処罰の対象となる。
補足窃盗罪には2項(利益窃盗)の規定がなく、利益窃盗は不可罰とされる。
問16横領罪の客体と遺失物等横領罪の法定刑
刑法上の横領罪の客体及び遺失物等横領罪の法定刑に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.横領罪の客体は他人の物に限られ、自己の物については、いかなる場合であっても横領罪が成立する余地はない。
- イ.遺失物等横領罪は、占有を離れた他人の物を横領した場合に成立し、その法定刑は窃盗罪よりも重い。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
- ア.誤り
- 公務所保管命令があれば自己の物でも横領罪
刑法第252条「自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする」e-Gov原文
- イ.誤り
- 占有侵害がない分、窃盗より法定刑が軽い
刑法第254条「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する」e-Gov原文
ひっかけ自己の物でも公務所保管命令で横領罪。遺失物等横領は窃盗より軽い。
解説横領罪の客体は原則として自己の占有する他人の物だが、公務所から保管を命ぜられた自己の物も含まれる(252条2項)。遺失物等横領罪(254条)は、占有侵害を伴わないため法定刑が軽く(1年以下)、占有侵害のある窃盗罪(10年以下)より軽く処罰される。
補足他人の財物への『占有侵害』の有無が、窃盗罪と遺失物等横領罪の法定刑の差の理由。
問17現住建造物等放火罪と非現住建造物等放火罪
刑法上の放火の罪に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、現住建造物等放火罪が成立する。
- イ.放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、非現住建造物等放火罪が成立する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 人の住居・現在する建造物への放火は最も重い
刑法第108条「放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者」e-Gov原文
- イ.正しい
- 無人の建造物への放火は現住建造物より軽い
刑法第109条「現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者」e-Gov原文
ひっかけ放火は客体で区別『現住(108条)・非現住(109条)・建造物等以外(110条)』。
解説放火罪は客体により区別され、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物等への放火は現住建造物等放火罪(108条、最も重い)、人の住居でなく現在もしない建造物等への放火は非現住建造物等放火罪(109条)、建造物等以外への放火は110条による。公共危険罪であり、社会全体の安全を保護法益とする。
補足焼損とは、火が媒介物を離れ目的物が独立して燃焼を継続する状態に達したことをいう(独立燃焼説、判例)。
問18自己所有非現住建造物放火と私文書偽造罪
刑法上の放火及び文書偽造の罪に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物で自己の所有に係るものに放火した場合において、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。
- イ.行使の目的で、他人の印章を使用して権利、義務又は事実証明に関する文書を偽造した者は、公文書偽造罪が成立する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 自己物への放火は公共の危険が要件
刑法第109条「公共の危険を生じなかったときは、罰しない」e-Gov原文
- イ.誤り
- 私人の文書の偽造は私文書偽造罪
刑法第159条「他人の印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書等を偽造し」e-Gov原文
ひっかけ自己所有非現住放火は『公共の危険が要件』、私人の文書は『私文書偽造罪』。
解説自己の所有に係る非現住建造物等への放火は、公共の危険を生じなければ処罰されない(109条2項。抽象的危険犯である108条・109条1項と異なり具体的危険犯)。文書偽造罪は客体により区別され、公務所・公務員の文書の偽造は公文書偽造罪(155条)、私人の権利・義務・事実証明に関する文書の偽造は私文書偽造罪(159条)である。
補足他人名義を冒用して文書を作成するのが偽造(有形偽造)で、作成名義人と作成者の人格の同一性を偽る点に本質がある。
問19収賄罪と贈賄罪
刑法上の賄賂の罪に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、贈賄罪が成立する。
- イ.賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者には、贈賄罪が成立する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 賄賂を受け取る側が収賄罪
刑法第197条「公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたとき」e-Gov原文
- イ.正しい
- 賄賂を渡す側が贈賄罪
刑法第198条「賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者」e-Gov原文
ひっかけ受け取る公務員は『収賄罪』、渡す者は『贈賄罪』。
解説賄賂の罪は、受け取る公務員側の収賄罪(197条。職務に関し賄賂を収受・要求・約束。請託を受けると受託収賄として重くなる)と、渡す側の贈賄罪(198条。賄賂を供与・申込み・約束)からなる。職務に関連して不正な利益を授受することを処罰し、職務の公正と社会の信頼を保護する。
補足請託を受けて賄賂を収受等したときは受託収賄罪となり、刑が加重される(197条1項後段)。
問20名誉毀損罪と威力業務妨害罪
刑法上の名誉及び業務に対する罪に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、摘示した事実が真実である場合には、名誉毀損罪は成立しない。
- イ.威力を用いて人の業務を妨害した者には、業務妨害罪は成立せず、名誉毀損罪のみが成立する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
- イ.誤り
- 威力業務妨害も独立の犯罪
刑法第234条「威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による」e-Gov原文
ひっかけ名誉毀損は『真偽にかかわらず成立』、威力での妨害は『威力業務妨害罪』。
解説名誉毀損罪は、公然と事実を摘示して人の名誉を毀損すれば、摘示事実の真偽にかかわらず成立する(230条1項。ただし公共の利害に関し公益目的で真実性が証明されれば罰しない=230条の2)。業務妨害には、虚偽の風説・偽計による信用毀損及び業務妨害(233条)と威力による威力業務妨害(234条)がある。
補足公共の利害に関する事実で公益目的の場合、真実であることの証明があれば名誉毀損は処罰されない(230条の2)。
問21偽証罪と恐喝罪
刑法上の偽証及び恐喝の罪に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、偽証罪が成立する。
- イ.人を恐喝して財物を交付させた者には、強盗罪が成立する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 宣誓した証人の虚偽陳述を処罰する
刑法第169条「法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたとき」e-Gov原文
ひっかけ宣誓した証人の虚偽陳述は『偽証罪』、恐喝による財物取得は『恐喝罪』。
解説偽証罪は、法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をすることで成立する(169条。記憶に反する陳述をいう=主観説、判例)。恐喝罪は、人を恐喝して畏怖させ財物を交付させ又は財産上の利益を得る罪で(249条)、反抗を抑圧する程度に至らない点で強盗罪と区別される。
補足恐喝と強盗は、暴行・脅迫が相手方の反抗を抑圧する程度に至るか否かで区別される。
問22信用毀損及び業務妨害罪と死者の名誉毀損
刑法上の業務妨害及び名誉の罪に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者には、威力業務妨害罪が成立する。
- イ.死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 偽計によるものと威力によるものは別の条文
刑法第233条「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者」e-Gov原文
- イ.正しい
- 死者については虚偽の事実の摘示のみ処罰
刑法第230条「死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない」e-Gov原文
ひっかけ虚偽の風説・偽計は『233条』、威力は『234条』。死者の名誉毀損は『虚偽の事実の摘示』のみ。
解説信用毀損及び業務妨害(233条)は、虚偽の風説の流布又は偽計によるもので、威力を用いる威力業務妨害(234条)とは手段が異なる。名誉毀損罪は生存する者の名誉が原則だが、死者の名誉については、虚偽の事実を摘示した場合に限り処罰される(230条2項)。手段や客体による罪の区別が問われる。
補足業務妨害罪の『業務』には、公務のうち権力的・強制的でないものも含まれうる(判例)。
問23殺人罪と自殺関与・同意殺人罪
刑法上の殺人の罪に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.人を殺した者には、殺人罪が成立する。
- イ.人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者には、自殺関与罪又は同意殺人罪が成立する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- イ.正しい
- 被害者の意思が関与する場合は刑が軽い
刑法第202条「人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者」e-Gov原文
ひっかけ単純な殺害は『殺人罪』、自殺関与・嘱託承諾殺は『より軽い罪』。
解説他人の生命を侵害すれば殺人罪が成立する(199条)。これに対し、自殺を教唆・幇助した場合や、被害者の嘱託・承諾を得て殺した場合は、被害者の意思が関与するため、自殺関与罪・同意殺人罪としてより軽く処罰される(202条)。被害者の同意の有無・程度が刑の軽重に関わる。
補足自殺関与罪・同意殺人罪の未遂も処罰される(203条)。
問24傷害罪と傷害致死罪
刑法上の傷害の罪に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.人の身体を傷害した者には、傷害罪が成立する。
- イ.身体を傷害し、よって人を死亡させた者には、殺人罪が成立する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
ひっかけ傷害から死なら『傷害致死罪』(殺意があれば殺人罪)。
解説人の身体を傷害(生理的機能を害)すれば傷害罪が成立する(204条)。傷害の結果、人を死亡させた場合は、死の結果について故意(殺意)がなくても傷害致死罪が成立する(205条、結果的加重犯)。殺意があれば殺人罪となる点で区別される。
補足暴行を加えたが傷害に至らなかったときは、暴行罪となる(208条)。
問25暴行罪と遺棄罪
刑法上の暴行及び遺棄の罪に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.暴行を加えた者が人を傷害するに至ったときは、暴行罪が成立する。
- イ.老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄した者には、遺棄罪が成立する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 傷害に至れば傷害罪になる
刑法第208条「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」e-Gov原文
- イ.正しい
- 要扶助者の遺棄を処罰する
刑法第217条「老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄した者」e-Gov原文
ひっかけ暴行罪は『傷害に至らなかったとき』、要扶助者の遺棄は『遺棄罪』。
解説暴行罪は、暴行を加えたが傷害の結果が生じなかったときに成立する(208条)。傷害の結果が生じれば傷害罪(204条)となる。遺棄罪は、老年・幼年・身体障害・疾病のため扶助を必要とする者を遺棄する罪で(217条)、保護責任のある者による場合はより重い保護責任者遺棄罪(218条)となる。
補足保護責任のある者が要扶助者を遺棄し又は不保護にしたときは、保護責任者遺棄罪となる(218条)。
問26保護責任者遺棄罪と逮捕及び監禁罪
刑法上の遺棄及び逮捕監禁の罪に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者は、これらの者を遺棄した場合に限り保護責任者遺棄罪が成立し、その生存に必要な保護をしなかった場合には成立しない。
- イ.不法に人を逮捕した者は、引き続き監禁するに至らなかった場合には、逮捕監禁罪は成立しない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
- ア.誤り
- 生存に必要な保護をしない不作為も処罰
刑法第218条「これらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったとき」e-Gov原文
ひっかけ保護責任者遺棄は『不保護でも成立』、逮捕監禁は『逮捕だけでも成立』。
解説保護責任者遺棄等罪は、保護責任のある者が要扶助者を遺棄する作為のほか、生存に必要な保護をしない不保護(不作為)によっても成立する(218条、不真正不作為犯)。逮捕及び監禁罪は、不法に人を逮捕し又は監禁すれば成立し、逮捕のみで監禁に至らなくても逮捕の罪として成立する(220条)。
補足逮捕・監禁により人を死傷させたときは、逮捕等致死傷罪となる(221条)。
問27脅迫罪(本人及び親族に対する害悪の告知)
刑法上の脅迫の罪に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者には、脅迫罪が成立する。
- イ.本人ではなく、その親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫しても、脅迫罪は成立しない。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 害悪の告知で人を畏怖させる行為
刑法第222条「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者」e-Gov原文
- イ.誤り
- 親族への害悪告知も脅迫罪
刑法第222条「親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者」e-Gov原文
ひっかけ脅迫罪は本人だけでなく『親族への加害告知』でも成立。
解説脅迫罪は、生命・身体・自由・名誉・財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫することで成立する(222条1項)。告知される害悪の対象は、脅迫された本人だけでなく、その親族でもよい(同2項)。なお脅迫の手段で義務のないことを行わせ又は権利行使を妨害すると強要罪(223条)となる。
補足害悪の告知は、一般人を畏怖させる程度のものであれば足り、現実に畏怖したか否かは問わない(判例)。
問28強要罪とその未遂
刑法上の強要の罪に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のあることを行わせた者には、強要罪が成立する。
- イ.強要の罪の未遂は、罰する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 義務のあることをさせても強要罪でない
刑法第223条「人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者」e-Gov原文
ひっかけ強要罪は『義務のないこと』を強制する罪、未遂も罰する。
解説強要罪は、生命・身体等への加害を告知して脅迫し又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害する罪である(223条1項。親族への加害告知でも成立。同2項)。義務のあることを行わせても本罪は成立しない。未遂も処罰される(同3項)。
補足脅迫罪は害悪の告知で足りるが、強要罪は現実に義務なきことを行わせる等の結果を要する。
問29正当行為と心神喪失・心神耗弱
刑法上の違法性阻却及び責任能力に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.法令又は正当な業務による行為は、罰しない。
- イ.心神喪失者の行為は罰せず、心神耗弱者の行為はその刑を減軽する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:1(アー正、イー正)
- ア.正しい
- 35条が正当行為の不可罰を定める
刑法第35条「法令又は正当な業務による行為は、罰しない」e-Gov原文
ひっかけ正当業務行為は不可罰。心神喪失は不可罰、心神耗弱は『刑の減軽』。
解説違法性阻却事由には、正当行為(35条=法令行為・正当業務行為)、正当防衛(36条)、緊急避難(37条)がある。責任能力については、心神喪失者の行為は罰せず(責任無能力・39条1項)、心神耗弱者の行為はその刑を減軽する(限定責任能力・同条2項)。
補足14歳に満たない者の行為も罰しない(41条=刑事未成年)。
問30自首
刑法上の自首に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
- イ.自首が認められると、必ずその刑が減軽される。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 42条1項が自首による減軽を定める
刑法第42条「捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる」e-Gov原文
ひっかけ自首は『発覚前』が要件。減軽は『できる』(任意的)。
解説罪を犯した者が、捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる(42条1項)。これは任意的減軽であり、減軽するか否かは裁判所の裁量による。捜査機関に犯罪事実や犯人が発覚した後の出頭は、自首に当たらない。
補足親告罪について、告訴権者に犯罪事実を告げてその措置に委ねたときも、自首と同様に扱われる(42条2項=首服)。
問31観念的競合と牽連犯
刑法上の罪数処理に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合(観念的競合)は、それぞれの罪の刑を合算して処断する。
- イ.犯罪の手段又は結果である行為が他の罪名に触れるとき(牽連犯)は、その最も重い刑により処断する。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 54条1項が観念的競合を最も重い刑で処断するとする
- イ.正しい
- 54条1項後段が牽連犯を最も重い刑で処断するとする
刑法第54条「犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する」e-Gov原文
ひっかけ観念的競合・牽連犯は『最も重い刑』で処断(科刑上一罪)。
解説一個の行為が二個以上の罪名に触れる観念的競合(例:一発の弾丸で二人を負傷させる)と、犯罪の手段又は結果である行為が他の罪名に触れる牽連犯(例:住居侵入と窃盗)は、いずれもその最も重い刑により処断される(54条1項=科刑上一罪)。併合罪(45条以下)が刑を加重するのと異なる。
補足併合罪は、最も重い罪の刑の長期を1.5倍にするなど加重される(47条)。
問32事後強盗罪と強盗致死傷罪
刑法上の強盗の罪に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.窃盗が、逮捕を免れるために暴行又は脅迫をしたときは、暴行罪又は脅迫罪として論じられる。
- イ.強盗が人を負傷させたときは、強盗罪と傷害罪が成立し、両罪が併合罪となる。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:4(アー誤、イー誤)
- ア.誤り
- 238条が事後強盗を強盗として論ずる
刑法第238条「逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる」e-Gov原文
- イ.誤り
- 240条が強盗致死傷罪を定める
刑法第240条「強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の拘禁刑に処し」e-Gov原文
ひっかけ窃盗犯の暴行脅迫は『事後強盗』。強盗の致傷は『強盗致傷罪』一罪。
解説窃盗犯が、財物の取り返しを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために暴行・脅迫をすると、事後強盗罪として強盗に準じて扱われる(238条)。また、強盗が人を負傷又は死亡させたときは、強盗致死傷罪が成立し(240条)、強盗罪と傷害罪等の併合罪ではなく一個の重い罪となる。
補足事後強盗罪の主体は窃盗犯であり、身分犯と解されている。
問33親族間の犯罪に関する特例(親族相盗例)
刑法上の親族間の犯罪に関する特例(親族相盗例)に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.配偶者、直系血族又は同居の親族との間で窃盗罪を犯した者は、その刑を免除する。
- イ.親族相盗例(刑の免除)は、親族でない共犯者にも適用される。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
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正解:2(アー正、イー誤)
- ア.正しい
- 244条1項が一定の近親者間の窃盗の刑を免除する
刑法第244条「配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する」e-Gov原文
ひっかけ親族相盗は『配偶者・直系血族・同居親族』で刑免除。親族でない共犯は対象外。
解説配偶者、直系血族又は同居の親族との間で窃盗罪等を犯した者は、その刑を免除される(244条1項=親族相盗例)。これら以外の親族との間の窃盗罪は親告罪となる(同条2項)。ただし、これらの特例は親族でない共犯には適用されない(同条3項)。詐欺罪・横領罪等にも準用される(251条・255条)。
補足強盗罪には親族相盗例の適用はない(244条は窃盗・不動産侵奪に限る)。
問34公務執行妨害罪と証拠隠滅罪
刑法上の公務執行妨害罪及び証拠隠滅罪に関する次のア・イの記述について、その正誤の組み合わせとして最も適切なものを1つ選びなさい。
- ア.公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行を加えても、現実に職務の執行が妨害されなければ、公務執行妨害罪は成立しない。
- イ.他人の刑事事件に関する証拠を隠滅した者は、証拠隠滅罪として処罰される。
- アー正、イー正
- アー正、イー誤
- アー誤、イー正
- アー誤、イー誤
解答・解説を見る
正解:3(アー誤、イー正)
- ア.誤り
- 95条1項が暴行脅迫を構成要件とする
刑法第95条「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者」e-Gov原文
ひっかけ公務執行妨害は『暴行脅迫』で成立(現実の妨害不要)。証拠隠滅は『他人の』事件が対象。
解説公務執行妨害罪は、職務を執行する公務員に対して暴行又は脅迫を加えれば成立し、現実に職務の執行が妨害されたことは要件でない(95条1項=抽象的危険犯)。証拠隠滅罪は、他人の刑事事件に関する証拠を隠滅・偽造・変造等した場合に成立する(104条。自己の刑事事件の証拠隠滅は原則として処罰されない)。
補足自己の刑事事件に関する証拠隠滅は、期待可能性がないため原則として処罰されない。